『ファミコン買えなかった』など短編5話【33】 – 感動する話・泣ける話まとめ

『ファミコン買えなかった』など短編5話【33】 - 感動する話・泣ける話まとめ 感動

 

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感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【33】

 

 

炊き込みご飯

俺は小学生の頃に母の作った炊き込みご飯が大好物だった。
特にそれを口に出して言った事は無かったけど母は判っていて
誕生日や何かの記念日には我が家の夕食は必ず炊き込みご飯だった。
高校生位になるとさすがに「又かよっ!」と思う様になっていたのだが
家を離れるようになっても、たまに実家に帰ると待っていたのは母の
「炊き込みご飯作ったよ。沢山食べなさい」の言葉だった・・・

会社に電話が来て慌てて向かった病室には既に近くの親戚が集まっていた。
モルヒネを打たれ意識の無い母の手を握り締めると母の口が動いた。
何かを俺に言いたそうだった。母の口元に耳を近づけると
「炊きこ・・・たよ。たくさ・・・・さい」と消え入りそうな声で言っていた。
それが最後の言葉だった。

「ママの作ったスパゲッティー大好き!」
口の周りを赤くしてスパゲッティーを食べる娘と
それを幸せそうな目で見つめる妻を見る度に母の炊き込みご飯が食べたくなる。

 

 

ファミコン買えなかった

俺んち母子家庭で貧乏だったから、ファミコン買えなかったよ。。。
すっげーうらやましかったな、持ってる奴が。
俺が小6のときにクラスの給食費が無くなった時なんて、「ファミコン持ってない奴が怪しい」なんて、真っ先に疑われたっけ。

貧乏の家になんか生まれてこなきゃよかった!
って悪態ついたときの母の悲しそうな目、今でも忘れないなぁ、、。
どーしても欲しくって、中学の時に新聞配達して金貯めた。
これでようやく遊べると思ったんだけど、ニチイのゲーム売り場の前まで来て買うのやめた。

そのかわりに小3の妹にアシックスのジャージを買ってやった。
いままで俺のお下がりを折って着ていたから。
母にはハンドクリーム買ってやった。
いっつも手が荒れてたから。

去年俺は結婚したんだけど、結婚式前日に母に大事そうに錆びたハンドクリームの缶を見せられた。
泣いたね、、初めて言ったよ
「産んでくれてありがとう」って。

 

兄ちゃんはヒーローだった

腹が減ったと泣けば弁当や菓子パンを食わせてくれた
電気がつかない真っ暗な夜、ずっと歌を歌って励ましてくれた
寒くてこごえていれば、ありったけの毛布や服をかぶせてくれた
何人もの男が怒号をあげて部屋に入ってきたときは、押し入れに隠してかばってくれた

兄ちゃんは俺の神様で、ヒーローだった
いつだって体を張って俺を守ってくれてた
だから2人きりでもいつだって安心できた
だから全然気付かなかった
ごめんなさい
ごめんなさい

俺に食わすために毎日万引きしてたんだってな
父ちゃんと母ちゃんがお金送ってくれたとか全部うそだったんだな
2人とも借金でどうしようもなくなったあげく俺たちを置き去りにして消えちゃって
でも借金取りの追跡が怖くて
「すぐに帰ってくるから、いないことは誰にも言うな」なんて言い残したもんだから
兄ちゃん誰にも助けを求められなかったんだってな
泣きわめく俺を抱えてどんなに怖かったか不安だったか
だけど見捨てもせず、怒りもせず最後まで面倒見てくれたんだな

結局兄ちゃんが万引きで捕まって、家に警察が来て
呼び出された親戚は兄ちゃんを怒ったけど
たとえほめられた方法じゃなくても
親との約束を守って俺を守った兄ちゃんはかっこよかったって今でも思ってる
それから1週間くらい後だったかな
兄ちゃんが父方、俺が母方の親戚に引き取られた日が
兄ちゃんを見た最後だった
今どこにいるんだよ
元気でやってるのか
会いたいよ、会ってありがとうって言いたいよ
大好きだって言いたいよ
普通の兄弟みたいに遊んだり喧嘩したりしたいよ
あのころは大変だったな、なんてかっこつけて語る兄貴の武勇伝聞いて笑いたいよ
いつか会えるよな、絶対

 

 

今までありがとう。

この前、一人娘が嫁に行った。

目に入れても痛くないと断言できる一人娘が嫁に行った。
結婚式で「お父さん、今までありがとう。大好きです」といわれた。
相手側の親もいたし、嫁の旦那もいた。
何より笑顔で送ってやりたいと思ってた。
だから俺は泣かなかった。
涙と鼻水を流して笑った。我ながら情けないと思った。

しわくちゃの顔で俺を見て泣いた娘。
立とうとして転んで泣いた娘。
背中よりもでっかいランドセル背負ってカメラの画面いっぱいに笑顔を見せた娘。
手が隠れるぐらいの制服に身を包んだ娘。
お父さんのと一緒に洗わないでと嫁に怒鳴った娘。
嫁がこの世を離れたとき、病室の窓ガラスがビリビリ言うくらい泣いた娘。
三回に一回美味しい料理を作ってくれた娘。(今は三回が三回とも美味しい。断言する。)
頬を染めて、でも緊張しながら男(現旦那)をつれてきた娘。
大好きです。といって、笑い泣きしてる娘。

嫁ににて笑顔の似合う娘が嫁に行ったよ。
娘のウェディングドレス綺麗だったよ。
若い頃の嫁にそっくりだったよ。
俺も娘も元気にやってるから心配するなよ。

 

 

神様に手紙を書くために

4歳になる娘が、字を教えてほしいといってきたので、どうせすぐ飽きるだろうと思いつつも、毎晩教えていた。

ある日、娘の通っている保育園の先生から電話があった。

「○○ちゃんから、神様に手紙を届けてほしいって言われたんです」
こっそりと中を読んでみたら、

「いいこにするので、ぱぱをかえしてください。おねがいします」

と書いてあったそうだ。

旦那は去年、交通事故で他界した。
字を覚えたかったのは、神様に手紙を書くためだったんだ・・・
受話器を持ったまま、私も先生も泣いてしまった。

「もう少ししたら、パパ戻って来るんだよ~」
最近、娘が明るい声を出す意味がこれでやっとつながった。

娘の心と、写真にしか残っていない旦那を思って涙が止まらない。

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