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『山間部にオフロードバイクツーリング』|洒落怖名作まとめ【長編】

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『山間部にオフロードバイクツーリング』|洒落怖名作まとめ【長編】 長編
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山間部にオフロードバイクツーリング

 

これは俺が2年前実際に体験したこと。
大学時代の友人A・Tと3人でG県の山間部に1泊2日でオフロードバイクツーリングに
出かけたんだ。俺はまだ独身だが、他の2人は結婚して子供もいる。家庭もちで
バイクに乗り続けるというのは家族がよっぽどでないとかなかなか難しく、
今までに何度も誘っていたのだがなかなかスケジュールが合わず、気づいたらお互いもう
40に手が届こうという年齢に。
たまにメールをすれば「3人でまた走りたいな」なんてバイクの話題は出ていたが、
このままでは「またいつか…」みたいな社交辞令で終わりそうだったので、
今回は俺が強引に2人のスケジュールを合わせてやっと実現した旅だった。

久しぶりに気心の知れた仲間とのツーリングという事もあって気分は最高だった。
最近3人目の娘が生まれたAはこの日のために新調したウェアで自慢げに自分の
よき父ぶりを話していたり、3人の中でも一番腕のいいエースライダーだったTは
手入れを欠かさない自慢の愛車に久しぶりに火を入れる事ができご満悦な表情。
俺はというと3人の中では一番バイク経験が浅く、いつも2人に強引に誘われて
走っている時も2人に付いて行くだけで必死という感じだったが、今では俺が一番
バイクに乗る時間が取れるというのは皮肉と言えば皮肉だった。

お互い仕事を抱えた身だし、本格的に山へ入る事も久しぶりな事。
そのため最初は「久しぶりのバイクだから」とか、「最近腰が痛いから無理はできないよ」なんて
やけに年寄りじみた事を言い合っていた俺たちだったが、最後のコンビニを出発して
段々と山に分け入り未舗装道路を小一時間ほど走破した頃にはバイクの勘も少しずつ戻り、
3人でモトクロスレースに参戦していた時の興奮や思い出に包まれ知らず知らず
アクセルを開ける手にも力が入っていった。

その時走っていたG県とN県の県境を走る林道は日頃の仕事や些細なストレスを完全に
忘れさせるだけの迫力と魅力があり、初秋の晴天にも恵まれた俺たちは、
時間を忘れて枝分かれする何本もの大小の林道を夢中で散策していた。
しかし楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、まもなく日没の気配。
20歳代の頻繁にツーリングに出かけていた頃だったら慌てないように
早めにテントの設営地点を探して日が傾いた時にはテントサイドで
酒を飲みながら夕食作りに取り掛かっている頃だが、今回はやっと互いの仕事や
家庭の事情を調整したツーリング…
そんな事情もあってか他の2人も時間が惜しく、なかなかスロットルを戻す気にはなれなかった。

地図で確かめてはいないのでハッキリとした場所はわからないが、標高や周りの山並みから想像するに
わずかにN県に入ったあたりと思われる場所に差し掛かった時には、西の空は
残照を残すのみとなり辺りは暗くなり始めていた。
こうなると路肩の視界も急速に曖昧になる。折り合い悪く路面も
ガレ始めた(路面が土ではなく拳大の石で覆われた路面の事)ため、
ライディングテクニックが未熟な俺は軽い恐怖を感じていた。
しかし強引に2人を誘った立場もあり、さすがに俺から泣き言を言い出すのも
憚れたが実はこのとき他の2人も切り上げるタイミングを見計らっていたらしく、
程なく先頭を走っていたエースライダーのTがクラクションを3回鳴らして
停止の合図を出したときは正直ホッとしたのを覚えている。

懐中電灯で地図を確認するとメインルートと山頂に向かって延びるピストン林道
(道が途中で無くなっており入ったら戻らなければならない林道)
の入り口と思われる分岐場所だった。ここで場所が曖昧なのは辺りの地形が薄暗くてわかり辛くなっていたのと、
ピストン林道らしい細い筋があるのだが地図には載っておらず、似たような地形だと多分ここだろうという位にしか
判らなかったからだ。メインルートは谷間に向かう下り道でまだまだこの先ガレ場が続きそうな雰囲気、
一方のピストン林道はゆるやかに山頂に向かう登り路だが土と小石の締まった路面に変わっており
地図には載っていないが滝の様なサラサラという水音も幽かにしていた。

下りのガレ場はフロントタイアを取られたら即転倒につながるため神経を使うし、路肩が曖昧になっている
ガードレール無しの下りをタラタラ走るよりは少し登っても締まった路面を安全に走り、
開けた場所があればすぐテントを設営する方が安全だろうというのが3人の共通意見だった。
またよく見るとこの分岐点には小さな石柱が建っており地図には載っていないが昔は人の往来があった路かもしれない、
たまに山中にある夏の降雨がある時だけできる小さな沢があるかもしれない。そうこう考えている間にも辺りはどんどん
夕闇に包まれておりもはや地図は役には立たない。
薄暗くなった山の中でバイクのヘッドライトだけを頼りに俺たちは登りのピストン林道に入っていった。

この時俺は少し違和感みたいなものを感じていた。視界がやたら霞む感じがするからだ。
古いゴーグルを使っていると表面に細かい傷が付いて、ナイトランの時によく霞む事はあるが、
今感じているのはそれとは少し異質な感じがしていた。
妙に周りの景色が判りづらい感じと言ったらいいのだろうか。
暗くなっていたので当たり前だと思われるかもしれないが本当に真っ暗だとヘッドライトに映し出される景色は
スポットライトの様に陰影が強調されてむしろクッキリと見える事が多いのだがここは違った。
また止まって確認していないのでなんとも言えないが辺りに生えている木々の植性も
微妙に違っている様だった。

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