『みさき』|洒落怖名作まとめ【長編】

『みさき』|洒落怖名作まとめ【怖い話・都市伝説 - 長編】 長編

村は村でまた大ごとよ。
夜明けに犬がえらい鳴きおる思うたらみんな泡吹いて死んどるし、井戸の蓋もずれて落ちとる。
ほいでももう見るん怖いけえ警察に電話して来てもろうたんだけど、警察の人は中に何もありませんよ、言うちゃって。
恐る恐る見たら川上さんおらんのんよ。

警察の人は冗談もたいがいにしてください言うて帰っちゃったけど、こっちももうどうしたらええんかわからんで、
川上さんはどこかへ消えてしもうたし、今ではほんまに死んどったんかどうかさえ確かめようがないんじゃけえ。
もうあれは夢じゃったとまで言うひとまでおってで。

それで何日かした後のこと、松野の武さんが見たいう話じゃけど、
こげえなでっかい火の玉が川上さんの家の窓から入っていった言うて、
その日の晩に誰もおらん家の中から真っ黒い煙が上がって、消防が来る頃にはとっくに川上さんの家は焼けてしもうとった。

もうこうなったらどがあもならんけえ、わしらができるこというたら、川上さんのためにお地蔵さんを立てて、拝むくらいよ。
これでおさまってください言うて手え合わして、ほうでも何でこがあなことになったんかも誰も分からんのんじゃけ、やりようがないんよ。
今でもたまに川上さんを見たいう人が現れるおるで、あの黒いのんがまだ歩いとるんじゃろういうて皆な怯えとる。
家に鍵かけて用心して、もう日暮れには誰も表に出んのんで。

あんたもよう気いつけんさいよ。
この話い聞いたらもう関わりがないとは言われんのんじゃけえね。
余計なことは絶対にしんさんなよ。
あんたもいつとられんとは限らんのじゃけえ、もうこがあな話には関わらんほうがええ。

◯談話2

人間にもええ人とわりい人がおられるように、魂にもええ魂とわりい魂がおるんで。
先生は常々言うとられた。柱にするんならわりいのを柱にせえて。
ほうは言うけどわしは納得できんで、先生、わりい魂じゃええがにならんのじゃないですかて尋ねてみたんじゃ。
ほしたら先生は言いんさった。柱になってしまえば魂にええもわりいもない。
それは単なる魂じゃけえ、おんなじものなんじゃ、いうて。

人間は時間がたつといろんなことを忘れていく生きものじゃが、それは魂になっても変わらん。
柱になった魂は、人間じゃったときのことをゆっくりと忘れていって、そのうち安らかな赤ん坊に戻るんじゃと。
ほうで、そっからさらに色んなものが抜けていって、いよいよなんものうなったときに、その魂は神さんになるんじゃ。

わしらの仕事いうんは、そういう神さんを人の手でこしらえる、業の深い仕事なんじゃけえ、
いつなんどき逆にとられるか分からんいう覚悟はしとかにゃあいけん。
もともと人じゃったもんをええように使うて、それでただで済む思うとったらえれえ目にあうんよ。

人の恨みつらみはそりゃあ深えんじゃけ。中途半端に掘り出したら、それこそえれえことよ。
話の通じんただの恨みの塊いうんは、いがんで目も耳もないんじゃ。
お経あげても聞こえんし、お札貼っても見えんのんじゃけえ、ほうなったらもうどがあもならんのんよ。
人の手には負えんのんじゃけ、本物の神さんがおられることを信じて一心に祈るしかないんじゃ。

運良くええがにいったら、村のひとつかふたつ消えて、それで収まるじゃろ。
あとは滅多に人の来んような山の奥でわだかまって、熊じゃの鹿じゃの食うて、そのまま仏さんになってくれる。
わしらにはどうもできんのんじゃけえ、そう思うとくしかないんじゃ。触らぬ神に祟りなし言うんはほんまよ。

談話3

妙子さん、そういえば最近夜中んなると家の外を歩きおる人がおるんじゃいうて、
お父さんに見てもらわにゃあいけん言うとっちゃったよ。

夜毎に歩き回る音がする言うておちおち眠れんで、駐在も見回りは十分するけどお宅だけ特別扱いで、
夜中中見おるわけにはいかんのじゃ言うたいうて怒っとって、あそこは親父さんが土木の仕事で腕っ節が強いし気性が激しいんよ。
近所でもそりゃあ、あげえなとこに泥棒に入ったら返り討ちじゃ、叩き殺されてしまう言うて笑いおったんで。

いうてもね、あがな田舎の家は広いばっかりで財産なんてろくにありゃあせんのんで。どこの家もそうじゃ。
じゃけえ別に心配するようなこともないけえ言うとっちゃってじゃけど、ほうじゃ言うても気持ち悪いもんは気持ち悪いし、
それにあそこは娘さんが高校生で可愛い盛りじゃけえ、風呂場でも覗かれたらそれこそことじゃいうて。

それであそこの親父さんが夜中に見張りに立っちゃって、見つけて交番に突き出しちゃるんじゃ言うて、それから二日三日は何もなかったんよ。
ほしたらよ、四日目の夜中に庭の玉砂利を踏む音がして、親父さんは不審者じゃ思うて後ろからそろりそろりと近づいて、
ざっざざっざ歩きおる人影を物陰から改めて、ぱっと懐中電灯あてちゃったんよ。そしたら誰じゃった思う。

それが妙子さんなんよ。
親父さんもびっくりしちゃってお前どしたんじゃ言うたら、妙子さん空ろな目えをしちゃって、
みたまがなんじゃらいうて、あの神主さんの呪文みたいなんがあろう、なんじゃらかしこみもうすもうすいうて、
妙子さんそんな呪文知っとってじゃないんで、それで親父さんもこりゃあただごとじゃあない思うて、
妙子さんをむりやり家に入れて鍵い掛けて寝かせて、それで朝んなったら妙子さんはけろっとしとってで、
夜のことなんて何も覚えとりゃせんのんで。

逆に親父さんに向かって、あんたあ昨日は出よったかいうて聞いてくるありさまで、
あんたが寝ぼけとったんじゃいうて、みんな笑うとってで。

妙子さんあんたぼけるにはまだ早ええんじゃないですかいうたら、もう歳なんじゃいうことよねいうて本人も笑うとってで。
いまでもたまに夜にふらふら歩きおるようで、夜中になったらぎしぎしと廊下を歩く音じゃとか庭の土を踏む音じゃとか、
最近は親父さんの布団の周りをぐるぐる回るいうて往生しとってじゃけど、
もう家のもんも特に害はないけえ、ほっとるそうな。気味の悪い、おかしな話よね。

◯付記

うすおもちそいくこいきかがまとのちついじゃらあをちか
なちかべれかにらまとみかなちけてまいくとふかみえみた
めうあまてもいきあまちあらあねかとのきるのすにすのな
けまちめいまくほと

うかすおももいもきさきもきさきねあもりほにたちまころ
みこきさこむかめかえてあのせがさそをのもなすがすきに
びばらなるげちもぬずえまがおいろののいまきそつかそを
とかものろこきこいくえてつそいろのねうそなみそこいし
ろいれあきのともとものなしなさみるためたつなぎこわざ
うらねあとにちもにまかみくおわまそのくぬためたておを
とげあたてちともいあらほねみじゃひぬかがをのろもろむ
くさよろこきまがえてみそきくけがるさゆけたりあつなこ
だみあいあしぼぬかがにとにいこぞにぬつひあまいうかね
うよとこめだみとともたらかやらくいつおねいえちしにあ
まてみさかおをろこくらなころ

いじゃくどにすおひえるおじゅむじゅおじゅおおなむねな
ぎけちあまちそあにききそあにもとときもにほあのおおと
きもにほあんなけちあまちするえまだにのろこきみこいけ
ちあまてらといみすくちいくたうこりほもつざわなきのろ
こきもにたちまころめちらいらたたごちむとにらとこいあ
がつえらげきりわすかすおめてかおとくすおもみもきさし
こきさこてあまてらとおろこきむそごおちじゅけめちしな
かえむくさえだむらちいねむじほなむいすんえみさりそお
とくらたべられかないきそなちろゆおもおつらともとこな
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うすおみもきさきもきさこてはまてみさすくちねまとのち
へまとのいなかよくしむかかとだけいいはまてみさめがひ
なざういほもうかのとくはがちにちものとかめちともろこ
がみきさだちこあんいなみなもねいそいみことおちかかつ
いぬたみなねきじゃたこいむげみくたちころいほにたちま
こおうかすおみもきさきもきさきねあもおおにたちまこお
おのろもろみたちまこおおなぬすぶいまこおうされたまい
こきさかおむかめかくさみのづまこねろく

うかいいなぼときにごおなこのせふるほわらかとぬぢめち
さのいつためむぢさまちめちこめうししなちあつきむえっ
ともわらかとなかばらおとこにいあまよののもぬぞろいぼ
よあすごちほあおえまそえむぢそわすごちほあいらづかま
いにぬくたかねつともわらかとぬぢものきさみうかわまと
ねていさおとくまてくだすいのときもにはやひぎなまちす
きらかおへまおきふれたまえつともわらかとぬちますこつ
うはまちさはらいいたちまけむすさみらむぢまきならはま
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あてちともいそよのとくるためたちさかるよたるやるえぶ
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けおなことにつておにつととにておにととにけおにきみあ
こなすこちならせりほののますげすけりほにたへりほにと
ろあまらまつなこのともおんねぢいらにうがとののもぬど
ろやちさげまおりさいまこねぼののむあまちるためあくち
にくちえてもいけけちまこのそどといかるもおおときめむ
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おおえちるたみさそいのときもにまけむしせみそきかやへ
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ちこいなまよこよをのめあのそなにじゃにせてあひろちな
たくちおえちぎののりうちえちるためたてあたといまくた
だをろみむただをきむたたをおえちともをときもにもりま
きごりまくつめむすさみらむじまきならはまああかつそお
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ほをとみめちきののたりそとみめちきののとあえちるたみ
ごおいまこおいむさよおえちともをときもにもりまきごり
まくめむすさみらむじまきならはまあか

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