『復讐して』『パチンコ屋』など短編・中編2話収録|洒落怖名作まとめ

『復讐して』『パチンコ屋』など短編・中編2話収録|洒落怖名作まとめ 短編
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復讐して

 

数年前まで名古屋に住んでいたのですが、名古屋の歌舞伎町と呼ばれる歓楽街があります。
昼間と夜では全く違う顔を持つそこですが、その丁度中間時、夕方に友人と歩いていた時のこと(買い物かなんかしててたまたまその辺を歩いていた)。

正面から来るカップルが異様にベッタリくっついて歩いていたのでかなり目をひき、ジロジロと見てしまいました。
男の方はスーツを着た一見普通な感じ、女の人の方も、多少若作りな印象ですが最近のオネエ系みたいな格好で、その男に、女が横から首に手を回してがっしり抱きついて歩いていたのです。

「うわあ、あんなにくっついてたら歩きづらいだろうに」

と思い隣にいる友人に報告しようと思ったら、その女と目が合いました。

あまりにジロジロ見てた為に不機嫌な感じで、キッと睨まれました。

気まずくなって私は、それ以上見ることも友人に話すこともやめました。

その日の夜、夢にその女が現れたのです。
私の部屋のテーブルを挟んで私と女は向かい合って座っており、女は私に、抱きついていた男の怨み辛みをグダグダと訴えてきます。
その男の為に体を売ったりしてまでお金を作ったのに裏切られたとか、子供を何人も堕ろしたとか云々。

嫌ーな夢を見たなあと思って目覚めたのですが、それから毎晩夢に出てくるようになりました。
私の代わりにあの男に復讐して欲しいとかなんとか。

その夢を見た時は、女はもうこの世にいないだろうと思ったのですが、直感的に生霊ではないかと思いました。
そしてそれは何度目かに夢に女が現れた時に確信になりました。
復讐なら自分でやれと言うと、自分は施設に入院していて出られないとかなんとか言うのです。
もう、面倒くさいやら迷惑やら気持ち悪いやらでうんざりしてしまいました。
しかも、起きた時やたらと頭が痛いのです。

そんな折、いつもの様に一人で買い物に出かけると、道に迷ってしまいました。
私はもともと方向音痴で、しかも田舎者なので名古屋の街中にはよく迷うのでそこまで慌てずに、コンビニで道を聞いたりしながら軌道修正に取り掛かりました。

すると、あの男に出会ってしまったのです。
その男は、開店準備をしているクラブ(キャバクラ?)のお店の業者さんと色々打ち合わせをしている感じで忙しく店から出入りしていました。そういう店の経営者の様です。

驚いたというか、それまでの経緯もあって立ち止まって見入ってしまいました。
その時、その店の隣にある店との間に乱雑に積まれたゴミの中に、例の女がいることに気づき、慌てて来た道を戻りました。
あの男の所へ誘導されてしまったのだろうか、知らない間にあの女に体を乗っ取られてしまうのではないだろうかと物凄い恐怖に襲われました。

その日も女は夢に出てきました。

何故ようやくアイツに出会えたのに、とか色々言ってくるので、

「うるさいなあ! 他を当たってくれる! 迷惑!」
とか言って女を張り倒しました。

それが効いたのでしょうか? それ以来女が夢に現れることはなくなりました。

しかしそれにしてもあの女は何故私なんかのとこにきたのでしょう?
そして今もあの男にくっついて移動してるんでしょうか?

 

 

パチンコ屋

 

俺が3年程前まで働いていたパチンコ屋の話。
場所は神奈川県某所、国道沿いに立つボッタ店。

客からチョコチョコ噂は聞いていた。
便所が勝手に流れたとか夜中にパチンコ台が動き出したとか。
まぁパチンコ屋に付きものの他愛もない話。

特に気にしていた訳でも無かった。あの日までは。

その日は新台入れ替えでスタッフ全員が遅くまで仕事をしていた。
ようやく入れ替え作業が終わり、1階の休憩所(二階建てで一階が休憩所と社員の寮になっている)でスタッフ達と談笑していた時の事だ。

休憩所の店長室からの直通電話が鳴った。

当時リーダーと言う立場の俺が電話を取ると、店長が不思議そうにこう言った。

「駐車場の鍵しめたよね?」

駐車場の鍵は出入り口と共に閉店時に閉めるので、開いている訳は無い。俺自身確認もしていた。

「はぁ。確認しましたが」 そう答えると店長はますます不思議そうな声になった。

「なんか軽自動車が走り回ってるんだよ…」

有り得ない事だった。

と言うのも防犯カメラで見える駐車場は休憩所からも見える位置にある。俺はイタズラかと思い、

「あぁ多分、マリオカートの練習してるんすよ」とくだらない返答。
直後、店長がウワッと驚きの声をあげた。

「人…乗ってない」

しつこいなと思いながらも店長なので合わせてあげる事にした。
「○○ちゃん(バイトの女の子)ちょっと駐車場の幽霊を退治してきて」

「ヤダー」

「くだらねー」

なんて笑ってると店長がポツリと、
「マジで鍵確認してきて…」

それだけ言うと電話を切ってしまった。何だかその言葉が余りにも冗談ぽく無かったので、見に行こうと思い上着を着ていると、突然さっきまで笑っていたバイトの女の子が悲鳴をあげた。

「キャー!!」

何事かと思い女の子に近づき体を支えると、女の子は窓の外を指差して震えている。

軽自動車だ。

窓の外、さっきまで無かったはずの軽自動車が音もなくそこにある。
窓の外にピッタリとくっつけて無人の軽自動車が止まっているのだ。

一同パニック状態。
休憩所から逃げ出そうとする奴を止めて、俺は「とりあえず固まろう」なんて意味不明な発言をしている。

軽自動車から目を離せずにどれくらい時間がたったか。とても長く感じた。
実際の時間は分からないが体感的に1時間もたった頃、無人のはずだった軽自動車の助手席ドアがゆっくり開いたのだ。

車は何者かが乗り降りしてるように僅かに揺れ、バタンと閉まる。
一同はますますパニック。悲鳴を上げて泣いている女の子が数人。

すると突然休憩所のドアが開いた。流石に俺もこれにはビビり声を上げてしまう。

するとそこに眠そうに立っていたのはその日非番の古参社員。どうやら、女の子の悲鳴に起こされたらしく様子を見に来たらしい。

とりあえずしどろもどろに状況を説明。
すると彼は少し頷いて「大丈夫」と一言。
彼に促されて後ろを振り向くと軽自動車は消えていた。彼は少し笑って、

「昔は良くあったんだよ。最近は見なくなったけどね」と平然として言う。

「害は無いから」

そう言うと自分の部屋に帰ってしまった。

一同が呆然としていると直通電話が再び鳴った。店長だ。

「今日は帰った方が良いよ」

説明する間も無く切られてしまった。
長居もしたく無かったのでそそくさと荷物をまとめその日は帰る事に。
後日、メンバーは続々と辞める事になるのは言うまでも無い。

後日談だが、店の駐車場でガス自殺をした夫婦が居たとか。この話が本当かどうかは確かめられなかった。

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