山にまつわる怖い話【27】全5話
くねくね
ずっと迷ってたが、話す決心がついた
去年の夏。友達A、B、Cと俺とで近くの山にサバゲーをしに行った。
ちなみに田舎だ。
俺とAは原付で、後の2人は自転車だったので俺とAが先に着いて2人を待っていた。
十数分して2人が着いて、俺達は徒歩で山の奥に入って行った。
前々から目をつけていた場所で、その時初めて行ったんだが実際サバゲーにはもってこいの場所だった。
2対2のチーム戦(俺、B対A、C)で最初は麓からすぐ近くで遊んでいたが、テンションがあがるにつれ奥へ奥へと入って行った。
1時間過ぎた頃には麓から相当離れた所に来ていたと思う。
俺とBが茂みに隠れ息を潜めていると、「おーい!○○(俺)ー!」と俺達を呼ぶAの声が聞こえた。
俺とBが茂みから出ていくとAが1人で俺達のほうへ走ってきた。
「どうした?」とBが聞くと、「Cがいない!」と顔を真っ青にしながら言った。
とりあえずAを落ち着かせ、事情を聞いた。
するとAとCは俺達を挟み撃ちにするべく二手に別れて行動を取ったらしい。Aが俺達のほうへ来てもCがいっこうに来ないので心配になって俺達を呼んだというわけ。
もしかしたらケガでもしたのかもということになり、俺達3人はCを探すことにした。
まずAとCが二手に別れた場所に行き、そこからCが向かった方向へ進んだ。
しばらく歩いていたらCはいた。地面に座り込んである一点を見つめてる。
俺が「おい!C大丈夫か?」と言っても返事はなく、ただただ一点を見つめるだけ。
その見つめる先というのはただの林で何もない。
とにかくケガをしてないことを確認し、Cを立たせようとして俺とBがCの腋に手をかけた瞬間、「あぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」とCが叫びとも笑い声ともとれる声をあげた。
俺達はその声にビビって一瞬退いたよ。
そしたら途端にCは奇声を発しながら体をくねらすようにして踊り?はじめた。
ビビり屋の俺はもうそれが怖くて(とにかく表情がやばい、目が死んでる)泣きそうになった。
Aが必死でなだめるがCはただ踊りながら奇声を発するだけ。
もともと力の強いCを無理やり引っ張ることもできず、俺達はおろおろしていた。
俺はさっきからCが凝視してる先が気になって、よく目を凝らして見てみた。
そしたら林の向こう、木と木の間になんていうか白い人間のような物体が見えた。
「ねえ!なんかいる!」と言ってAとBにも見るよう促した。
もっとよく見てみると、動いてるようだ。くねくねくねくね、まるで暴れるミミズみたいに。
もう俺は半泣きだった。さっき言った通り俺はビビりだ。
「おい、なんだあれ…」とBが言うと、Aが「見てくる!」と言い走って行ってしまった。
俺は一生懸命行くなと呼びかけたが遅かった。
Aは白い奴がいたその場にしゃがみこみ戻ってこなかった。
白い奴はいつの間にか消えていた。
AはCと同じように狂ったようにくねくね踊ったり奇声を発したりした。
現在AとCは精神病院にいる。
Bはあの話を絶対したがらない。
結局あの白い奴がなんだったのかはわからないし、あの山にも行ってない。
俺が体験した一番怖い出来事だ。
山の神様は美女
若い、まだ10代半ばの少年の猟師が、先輩の壮年の猟師と山に入ったが、先輩猟師とはぐれてしまった
日が落ちてから行動するのは死につながると常々教わっていたため、たき火をおこし、
弁当に持ってきた酒の筒と餅の包みを引っ張り出し、魔物よけに剣鉈を引き寄せて夜明かしに入った。
火が小さくなって、ふと目を覚ます。薪をくべたして、また眠ろうとしたところ、闇の向こうに、
緑色の炎がいくつも瞬いている。山犬か、山猫か。がくがくと若い猟師はとっさに剣鉈をつかむと、鞘を払った。
と、光の当たる範囲内に、不意に、若い女が姿を現した。獣の皮を纏った、手足の長い、長身の女で、
赤い髪と、抜けるように白い肌の、美しい娘だった。
「・・・鉈を捨てるか、捨てないか?」
猟師の少年は、先達の猟師は、絶対に鉈を手放すなと言っていたのに、何故か、鞘に収めて、横に置いた。
「餅と酒を渡すか、渡さないか?」
少年は、弁当の包みと酒の竹筒を、震える手で、相手のほうに押しやった。
そこで、娘は、獣のような歯を見せて、無言で笑った。
「・・・着物を脱ぐか、脱がないか?」
少年は、がたがたと震えながら、上着を脱いだ。娘は、それをみて、同じ言葉を繰り返した。
「着物を脱ぐか、脱がないか?」
ああ、もう、俺はこで死ぬんだ・・・先達の言いつけを守らなかったからだ・・・
少年は、涙を浮かべて震えながら、下履きを脱ぎ、下着まで脱いだ。
すると、女は、猟師の少年のそばまで来ると、いきなり、覆い被さった。首筋を噛みちぎられると思って
身を固くしたが、全く別のことをされる。性器を触られ、口を吸われる。自分を取り囲む緑色の眼のなか、
娘は、獣のような激しさで、繰り返し、繰り返し、猟師の少年を抱いた。
気がつくと、少年は全裸で眠っていた。たき火は消えていたが、東の空は明るんでいた。夢でも見たのかと
思ったが、身体に草の汁のような物が沢山ついていて、花の香りがした。餅と竹筒と鉈が無くなっていて、
代わりに、山菜や果物や高価な茸、それに山女が、フキの葉にたっぷりと盛られて、近くに置いてあった。
ほどなく先輩の猟師と合流出来た少年は、一部始終を報告すると、
「お前、山の神様か、そのお使いに気に入られたんだな。」
「このごろ山に入る男も減ったし、若いのはほとんどいなくなっちまったからなぁ。」
「ま、果報なことだ。ケモノ(化物)に襲われたんじゃなくてよかったなあ」
そこで、不意に真面目な顔になって、
「山の神様は嫉妬深い。これから山の中では、女の話はするなよ」
「夏には素裸で水浴びをしろ」「立ち小便の時は、必ず山頂に身体を向けてな」
猟の成果は驚くほどで、「ご相伴だ」と先輩はご機嫌だったそうだ。
めでたし?
山の神様は醜女と言いますが、美女もいるのでしょうか・・・または、お使いだったのでしょうか?
ショタ趣味の神様もいるんですね。
オゲと呼ばれる人達
高校の頃の話。
俺の実家はスッゲー山奥で、麓の高校まで通うには片道17㌔以上の山道をチャリで下って行かなきゃならない。
当然、帰りは17キロ以上の道のりをチャリで上っていかないといけない訳で。
高一の時の学園祭で、用意がすっかり長引き、下校したのが7時前だった。
普段は家が遠い事もあり、最低でも4時には下校していた俺だが、
この時は高校生活初めての学園祭ということもあり、時間を忘れていた。
「こりゃあ、家に帰ったら10時過ぎだな。」と思った俺はとりあえず家に
「遅くなるから多分ツレの家に泊まる。先に寝ててくれ。」
と電話を入れて友達の家に行って飲む事にした。
次の日が日曜だったので泊まっていっても問題ないだろうと思って
友達連中と一緒に飲んでいたのだが、
あまりに騒ぎすぎたのか、相手の親に飲んでいたのがバレ、
全員追い出されてしまった。(向こうの親は俺の家が17キロ以上も離れた山の上の家の子だと知らない)
俺の実家が山の上の寺だと知っているヤツが「お前んち遠いんだから、俺んとこに泊まってけよ。」
と言ってくれたのだが、その時の俺は酒の善いもあったのだろうが、何故か「いいよ。月も出てるからチャリ押して帰るよ。」
と言って帰ってしまった。
当然、酔っ払った俺に17㌔以上もの山道を登っていけるはずなど無く、
途中で気持ち悪くなって吐いてしまった。
吐いた所で、山道の三分の一は登ってしまっていたので助けなど期待できない。
そもそも、参拝者の少ないこの時期はオヤジが檀家さん家に行くときと母がスーパーに買出しに行くとき以外は車なんて一台も通らない。
こんな夜中じゃあ、それすらないだろう。
そう思った俺は、夜明けまでに家に帰ることを諦め、酔いが醒めるまで山で休む事にした。
流石に道の上に直接寝てたら風邪を引いてしまうので、山の傾斜に杉葉を集めてその上に寝転がって月を見ながら何時間か休んでいた。
ツレの家を追い出されたのが10時過ぎだったので、
酔いが醒め出した頃は3時か4時にはなっていただろう。
少し歩くと昔、棚田だったらしい平地があるのを知っていたので、そこにむかうことにした。
棚田跡に行くと、ガサガサと音がきこえた。
俺の家の山は流石に禁猟区なんで、猪や鹿がよく逃げ込んでくる。
俺もそれかと思ってビビって隠れていたら(鹿はともかく、猪は結構恐い。)どうやら人間らしい。
しかも、髪の長い若い女だった。
普通なら君が悪くなってそそくさと立ち去っただろうが、酒も残っていたのだろう、
俺はこっそりと女に近づき、「おい、なにしてるんだ?」と声をかけてしまった。
女はニコッと笑うと俺に、もたれかかってきた。いい匂いがした。
その時の俺はおかしくなっていたのか、女を無理やりに抱いてしまった。女は嫌がりもせず、俺を受け止めてくれた。
夜明けまで何回もやったと思う。
事が終わった後で、女に腕枕をしてやり、話し掛けたが女は微笑むだけで特に答えたりしなかった。
俺自身もまだ酔いが残っていたのだろう、その事は時に気にせずに又眠ってしまった。
朝になって、もう一度眼が醒めた時には女はいなかった。
俺自身は溜まり過ぎておかしな夢でも見たんだろうと思って、腹も減っていたのでさっさと家に帰った。
家に帰ったらもう6時前で家族は朝飯を食い終わっていた。
母親が、もういちどご飯作り直すから、とりあえず風呂に入れと言って来たので
素直にしたがってシャワーを浴びることにした。
風呂から出て、何気なく、脱いだ学生服を見ると俺のものとは思えない長さの髪の毛がついていた。
ウチの家で女といえば、母親と婆ちゃんだけだが、婆ちゃんは白髪で髪も短いし、母さんは肩までの長さの髪に軽いパーマを当てている。
明らかにウチの人間の髪じゃない。
昨日の女は夢じゃなかったのか?
不思議に思った俺は朝飯を食った後、もう一度さっきの棚田跡に行ってみた。
そこには女は当然いなかったが、よく探してみると、学生服についていたのと同じ長さの髪の毛が何本か杉葉の上に散らばっていた。
もう、10年近くも前の話になるが、あの女は一体なんだったんだろう?
オヤジや爺ちゃんに聞けばわかるかもしれないが、内容が内容だけに恥ずかしく、聞けないままだ。
俺には弟がいるし、俺は院に進んでしまったので、実家は弟が継ぐと思う。
やっぱり山の神さまか何かだったのだろうか?
俺の家は真言宗なんだが。
サンカ(山窩)の女性とか…って今、いるのかな?
俺の地元には俺がガキの頃まで(幼稚園に入る前頃)
「オゲ」とよばれる人たちがいたよ。
最近でも居るとは思うんだけど、あんまり見かけない。
俺んちは結構有名な山寺でお遍路さんが巡礼に来る様な寺なんだけど、
オゲって人たちは道に迷ったお遍路さんを助けたり、
疲れたお遍路さんの荷物を持ってあげたり
檀家さん家に行ってお経を読んで、代わりに食べ物をもらったり、
ウチの寺にやってきて寺の掃除をしてくれたり、
木工細工や竹細工を持ってきて
米や干物と交換してもらうといった人たちが結構居た。
ウチの地方じゃあ身なりの汚い人のことを「オゲような人」といったり
お人よしな奴に親しみをこめて軽く蔑む場合に「お前はオゲか」とかいっていた。
このオゲって連中はウチの山や神社の山なんかに住んでた人たちで山伏みたいな人たちだった。
普通の仕事や学校には行っていないようだったし、親もそんなふうに教えてくれた。
乞食や山伏のような変わった人たちだと覚えている。
ガキの頃の俺は山道の掃除にきていたオゲのオッサン達に気に入られていて
坊ちゃん、坊ちゃんと言われて可愛がられていたらしい。
3,4歳の頃の事なんで詳しくは覚えてないが、母に聞くと「あんたより年上のオゲの子供達もいて、よく遊んで貰ってたよ。」
とのことらしいが、俺にはサッパリだ。昭和50年代の話だ。
俺が抱いた山の女の格好は髪はサラサラしたストレートヘアで背中まであった。
顔は目鼻立ちがはっきりしていて色黒だった。
服装は秋だったはずなのに薄着で、綿の長袖シャツ?と普通のジーンズだった。靴は脱いでいたと思う。はだしだった。
棚田跡で体育坐りでゴロゴロしていた。下着は普通の下着をつけていた。
俺が声をかけたら逃げるかとも思ったが立ち上がって俺に凭れ掛かかってきたんだ。
とにかく、凄いいい匂いがして(鼻の奥の、脳まで響くような甘い匂いだった)
異常に興奮したのを覚えている。今でもその匂いだけははっきりと覚えているよ。
あの女はオゲだったのか、なんだったのかよくわからないが、とにかく不思議な初体験ではあったな。
オゲの人達が最後にウチにきたのは俺が中学校の頃だったな。
俺が小学校にあがる頃にはたまにしか来なくなり、高学年になった頃には
殆ど見なくなっていた。
ウチの寺がお遍路さんを増やそうと観光バスでも来られるように
山道の一部をアスファルトで舗装しはじめた頃か?
この頃から自衛隊の人がよく来るようになったな。
俺が女に会った道は舗装されていないほうの道で曲がりくねって傾斜もキツイので
基本的に寺の関係者しか使えない道だ。私道ってやつだな。
こちの道を降りないと市内に出られないので、俺は毎日この道を使って登下校してたわけだ。
高校三年間殆ど休まずに、毎日通ったが、結局あの山の女には二度と会えなかったな。
ひょーひょー
ある人に話を伺えたのでここに記す。
山の仕事が忙しいときに時々山の宿舎で同僚数名と過ごす事がよくあった。
昼間の激務のため、みな夕食後ぐっくりと眠るのが常であった。
でも時々 夜中に妙な音で目が醒めることがあった。
「ひょーひょー」と叫びながら何者かが歩いていっている。こんな山奥でのことである。
しかも夜間である。
だれがなんのために叫びながら歩いていくのか不思議に思ったその人は何度かめに声の方に宿舎を出て歩いていった。
すると、山中を白装束を頭からすっぽりかぶった集団がうねうねと歩いている。手にはランタンをもち 中のうちの一人が「ひょーひょー」と叫んでいる。
そのうち、彼が覗いているのに気がついたのか。一斉に彼の方を見た。そしてそのうちの数名が彼をおってきたのだ。
彼は急いで宿舎に逃げ込んだ。
翌朝、おきて宿舎を出てみると、宿舎の入り口に獣の足跡と毛がたくさんのこっていたという。
山の影
山って神聖な場所と思われがちですが、私はそうは思いません。
ちょっと前まで、私はよく学生時代の友人と山に登ったりしていました。
ある日、自分のナップザックにお葬式用の塩が入っているのを見つけます。
私は1つのナップザックを仕事・休日問わず使っているので、
きっとどこかで紛れ込んだのでしょう。
ちょっと考えてから、神聖な山に登るんだから身体を清めようと、
私は封を切って自分の身体にかけました。
友人たちは山で清められるんだから、塩なんかいいじゃんと笑っていました。
私が友人について歩いていると、だんだんと友人の呼吸が荒く激しくなります。
「おや?まだそんなに激しい道じゃないのにな?」と思いながらも、
少しおかしいので「だいじょぶ?」と声をかけてみました。
友人は振り返り、血走った目と無駄に大きな声で
「うー、良い風だぁ!」と答えます。目は焦点が合っていません。
ビックリして他の友人に異変を知らせようとすると、
その友人も同じような異変を起こしています。
しかし、誰一人としてお互いの体調の変化を口にしません。
冷静になって周りを見ると、他の登山客も、私以外のみんなが同じです。
「きっと、自分に体力がついてきただけだ」と思い直し、
再び私は山を登り始めました。しばらくはこの事を忘れることができたのです。
いくらか歩いた後、休憩ということになりました。
私たちは木陰で腰を下ろそうとしましたが、再び異変に遭遇します。
涼を取ろうと向かった木陰が……木陰が逃げて行くのです。
逃げた影は細かくちぎれ、わらわらと友人たちの方へたかりはじめました。
まるで、友人の影を食い散らかすように、地面を50cmくらいの影が舞うのです。
追い越してゆく人の影にも、ブンブンと音が聞こえるくらい纏わりついて。
ゾッとして友人に知らせようとしたとき、全ての影がピタリと動きを止めました。
私は心臓を鷲掴みにされたようにビクッとし、硬直してしまいました。
影たちは再びゆっくりと、今度は全部が私を目指して近づいてきます。
人に助けを求めようとしたのですが、友人も登山客も、
焦点の合っていない目で私の方を向いて息を荒げているだけでした。
よく見ると影は、人の影に見えなくもありません。
それが集まりに集まって、私の周り1mぐらいを空けて密集しています。
影の通りに人がいるとすれば、周りをぐるりと囲まれている状態です。
危険を感じ逃げようとすると、影たちは道を開けるのですが、
直ぐに私を遠巻きに包囲します。気のせいか、圧迫感をも感じ始めます。
私はふと、「ある村で異邦人が村のタブーを口にして、村人に追われる」
という映画を思い出しました。
友人は「○○、どうしたー?」と言ってくれます。血走った焦点の合わない目で。
皆さん、私を罵って下さい。
私はそのとき耐え切れず、我が身可愛さに友人を捨てて走って下山しました。
友人が「おい、どうしたー!?」と追ってくることにすら恐怖して。
後日、当然のことながら一緒に山を登った友人に詰問されました。
私は、信じてもらえなくてもいいからと、ありのままを話しました。
友人は、その日に異常な疲れを感じたこともあり、信じてくれました。
と同時に、私はここ一番で友達を見殺しにするチキンと認識されました。
交友も途絶え、今、友人と呼べるのは仕事仲間だけです。
私はそれを素直に受け止めなければいけないと思っています。
あの山の、影の正体はわかりません。
知りたくもありません。
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