山にまつわる怖い話【43】全5話
神さん
7、8年前かなぁ。京都人の俺はバイクで南の方へあてのないツーリングに出かけた。
国道とか走るのは嫌いなんで山ん中の道とかを地図見ながら走ってたら、
山地の更に山奥にぽつんとあるお寺を地図に見つけた。「行ってみよう」
行ってみたら普通に整備はされてるけど誰もいなくて看板には「山伏の修行場」
みたいな事が書いてあって、馬鹿な俺は「面白そー。行ってみよー。」
てな感じで行きだした。ジーパン、Tシャツ、スニーカー。持ち物無しで。
歩き始めるとすぐに道端にお花が供えてあって、馬鹿は「神さんかな?」と思い一礼。
その後中年夫婦が結構な装備で歩いているのを小走りにぶち抜く。
んで鎖なんかを使いながら急な岩場なんかをなんも考えず楽しく谷に降りていく。
(そのコースは山の頂上→谷底→山の頂上ってかんじ)
んで谷に降りたら滝と川があって、顔を川で洗ったらいきなりなぜか
耳のピアスが落ちる。んでそれを必死に川の中で探しているとさっきの中年夫婦
が正規ルートを歩いていて抜かれたのが遠くに見えた。
「うわ、抜かれた」(馬鹿だね 笑) と焦って下を見ると
不思議な事にいきなり目の前に出てきた。キャッチ(耳の裏の留め金)も同じ場所に。
ありえない。キャッチも同じ場所になんて。しかも石だらけの川底で。
まぁでも馬鹿は深く考えず「おお、ラッキー。神さんありがとー」
一応川と山の神さんに感謝で礼をする。
そして急いで夫婦を追いかける、また花がある。会釈だけする。
しばらくすると後姿が見えた。「よし、負けへんでー」
と、とたんに体がオカシイ。力が入らない。むっちゃ元気なのに。
岩をよじ登り、坂道を四つんばいで上がっても追いつけるはずなのに
無理。でも絶対視界から消えない。一定距離を保ってしまう。
そしてデカイ岩があってその上にたどり着く。スゴイ絶景。
でも落ちたら死ぬ。そこで急に眩暈が。クラクラ~。
そしたらなんか後ろに引っ張られた。助けてくれたみたいに。
不思議な気持ちになりながらも無事寺に到着。二時間くらいかかったかな?
そしたらそこに中年夫婦がいて話かけたら。こんな感じでした。要約。
「自分、すごいなぁ。その格好。危ないで。」「そうですねぇ、通りがかって
なんとなく入ってみたんですけど僕、馬鹿ですよねぇ」
「せやなぁ。お花ぎょうさん供えてあったやろ?皆亡くなってるんやでぇ」
「・・・神さんやと思うてました」「ワハハ、手ぇ合わしといたかぁ?」
「ええ」「それで自分は無事に帰ってこれたんとちゃうか?
亡くなった人を勘違いでも神さんとしてお祈りしたんやし」
「そんなもんですかねぇ・・・」「ワハハ、とにかく無事でよかった」
まぁ一定距離だったのは僕の疲れや、夫婦が気使ってくれてたのかもしれませんが、
ピアスと背中を引っ張られたのはやはり不思議でした。
んでそこで数年後、孫とお爺ちゃんが登山?し、お爺ちゃんが滑落。
そして孫が助けに呼びに戻る途中、滑落して死亡。
お爺ちゃんは無事家族の探索願いで助かる。
という話が確かあったような・・・心からご冥福をお祈りいたします。
遺体が動いている
詳細は忘れた、10年以上前にラジオで聞いた話。
2人で雪山登山していたが遭難し、途中で1人が死んでしまった。
なんとか途中の山小屋まで遺体を運び、助けを待つことにした。
仲間とはいえ遺体の側では寝れないので
遺体から離れた場所で眠りについた。
何時間眠っただろう、ただならぬ気配で目が覚めると
離れた位置に置いておいたはずの仲間の遺体が
自分のすぐ隣にいる。
気味が悪くなってまた遺体から離れた場所で眠った。
また目が覚めると仲間の遺体がすぐ隣にいる。
遺体が歩いて来るはずはない。
もしかして生きているのだろうか、と思い確認してみるが息はしていない。
疲れているんだろうと思い、また遺体から離れて眠るが
目が覚めるとまた隣にいる。
遺体が動いている。
自分が眠っている間に何が起きているのだろう。
それを確かめるために、持ってきていたビデオカメラを回したまま眠りについた。
目が覚めるとやっぱり隣に遺体がいる。
恐る恐るビデオを確認した。
そこに写っていたものは、起き上がり自分の寝床まで仲間の遺体を引っ張ってくる
自分の姿だった。
遭難、仲間の死という極限状態の中での人間の心理的な恐い話かな。
この話聞いたことある人いますか?もしかして既出?
天狗倒し
子供の頃、一家揃って迦葉山(かしょうざん)に出かけたことがある。
ルートは忘れたが、山あいの道を登っていたときのことだ。
突然、大木が倒れるようなすさまじい音に、家族全員が立ちすくんだ。
近い!
たぶん、この向こうだ。
ということで山道を駆け上がったのだが、
どこを見回してもそれらしい光景が見あたらない。
山の中とはいっても、木立は視界を障るほどには密生していない。
あの音の大きさからして、そんなに遠くのできごととは思えないのだが…。
とうとうわからずじまいで帰途についた。
「天狗倒し」という現象があることを知ったのは
それから何年も経ってからのことである。
山小屋
NHKBSで放送された、異界百名山という番組を見たか?
山でおこった不思議な体験を話を体験者自身が語るという番組なんだけど、
実は似たような話を山好きな友人から聞いたことがあったんだ
NHKの体験者はかいつまんでいうと
その人は山道を補修する仕事をしている人で、
ある日仲間数人と山小屋で一泊することになった
山小屋の扉は重かったがやっと開けて中で寝ていると
夜も更けてからどすんどすんと地面をたたく音と鈴の音が外から聞こえてきたそうだ
その音はどんどん山小屋に近づいてくる
やがて山小屋の扉の前までその音が来たかと思うとすっと扉が開けられ、山小屋の中を
どすんどすんと地面をたたきながら歩き回るのがわかった
怖くて怖くて皆でお経を唱えながら目を閉じてじっとしていたそうだが、
しばらくしてそれは山小屋をでていったとか
NHKに出ていた体験者は後から考えればあれは誰かが守ってくれていたんだろうなと美談のように語っていたが・・・
自分が山好きの友人から聞いた話はそこから先があったんだ
友人の話はこうだ
一人で山に登り、夜テントを張り寝ていると、どすっ、どすっと地面をつく音が聞こえてきた
人っ子一人いない夜の山、深い闇と静寂の中その音はどんどんテントに近づいてくる
高い山の中にいると不思議な体験はよくするそうで、すぐにああ人間じゃないなとわかった友人は
そのままテントの中でじっとしていたそうだ
どすっ、どすっ、どすっ・・・
音は友人のすぐそばまで来た
地面をつく棒がみえた
次は顔を突かれる!ととっさに友人は身構えたが
棒は友人の顔も体も逸れてそのまま遠ざかっていった
雪崩に巻き込まれ遭難した人を探すときは、一列に並んで雪を棒を突き刺しながら進んでいくんだってな
あれってもしかして・・・と友人は思ったそうだ
一匹の蜘蛛
子供のころ読んだ昔話
ある猟師が山に入った。
猪を待って身を潜めていると、目の前に一匹の蜘蛛がいた。
そこへ蛙がやってきて蜘蛛を食べた。
蛙は跳ねていった。
そこへ蛇がやってきて蛙を呑んだ。
蛇は這っていった。
すると、どこからか大きな猪がやってきて蛇を喰った。
猟師はしめたと思い、猪に鉄砲の狙いを定めた。
しかし、ここでふと考えた。
「蜘蛛は蛙に喰われ、蛙は蛇に喰われ、蛇は猪に喰われた。
その猪を撃ったら、俺はどうなるんだろう。」
気味が悪くなった猟師は鉄砲を下ろした。
そのとき、山中に響きわたるような大きな声がした。
「撃たなくてよかったな!」
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