山にまつわる怖い話【62】全5話
生き物の気配が感じられない場所
親戚に山を所有してる方が居まして、
その方、生前は趣味で山の手入れなどしてました。
その山に遊びに行った時の話で、もう15年くらい前の事です。
趣味の一環らしく、キノコの栽培などもしていて、
秋にキノコ狩りに家族で行かせていただいたんです。
でもやんちゃなガキだった私はキノコ狩りなどすぐ飽きてしまい、
近くの林の中で探検したりして、勝手に遊びだしました。
そのうち、少し鬱蒼とした見渡しの悪い場所に小さな沼を見つけました。
沼といっても本当に小さく、泥沼のような感じです。
ああいう場所は虫などたくさん居ると思うのですが、
虫どころか…何故か生き物の気配が感じられない場所でした。
無性に怖くなり、回れ右して親の所へ戻ろうとしたんです。
なのに、足が進まない。足元を見ると、何故か片足が沼にはまっている。
もちろん、最初から沼には入ってません。近くまで寄って見てただけです。
もがけばもがくほど、足は深くはまってしまって、膝くらいまで沈みました。
そのうち、何故かはまっていない方の足まで重くなってくる。
気付けば大丈夫だったはずの足まで沼にはまっていました。
どうしようも無くなって、泣き出しそうになった時、
心配して探しに来てくれたオカンに救助されました。
あれだけ抜けなかった足が、簡単にスポンと抜けて…
(大人の力と子供の力の違いと言えばそれまでですがw)
その後すぐに帰宅し、妙に疲れて車中では爆睡してました。
特に後遺症などは無いですが、怖くてしばらく山には行けなくなりました。
思いっきり泥にはまっていた割に、両足ともそんなに汚れてなかったのが不思議。
何だか沼がじわじわと捕まえに来たような…不気味な体験だったです。
お香
測量士に聞いた話。
肉眼でポールの位置を確認した後、照準を合わせて測量器を覗く。
最初、真っ暗で何も見えなかったのが、一瞬後に視野が開けた。
が、視野全体が微妙に歪んでいて、何度ピントを合わせてもクリアに見えない。
不審に思ってレンズを調べると、べったりと脂のようなものがこびり付いていた。
こちらの様子を伺っていたポール持ちの男は、不審なものは何も見ていないと言う。
ただ、周囲にはなぜか「お香」のような匂いが漂っていた。
気味が悪くなった二人は、早々に仕事を切り上げて山を降りたそうだ。
且つての猟犬
昔、愛知県豊根村の猪古里にある猟師がいた。
永年飼い馴らした一匹の猟犬を連れていたが、次第に彼を襲う気配を見せるようになった。
今までに何匹もの獲物を捕えた功労ある愛犬だったが、気味が悪くて仕方がなかった。
日毎に犬の態度はおかしくなり、殺すことも継ならずに過ごして来たが、ある日、思い切って山の中に連れ込み、隙を見て一発で仕留めてしまった。
そして彼は家に戻り、その場所には再び足を向けなかった。
それから丁度三年が過ぎた日のこと、且つての猟犬を思い出してどうなったか気になり出し、かの場所へ赴いた。
犬は、枯れ草の間に三年前のあの日と同じ姿で前足を立てて座っていた。
骸はカサカサに干からびて骨ばかりになっていた。
それを見た猟師は恐ろしさも感じたが、犬の執念の方が次第に憎らしく思えてきた。
「もう、これで歯向かいも出来めえ」と罵るりながらひと蹴りすると、骸は他愛もなくカサカサと崩れ落ちてしまった。
その時どんな弾みだったのか、その枯れ骨の一つが猟師の足に刺さった。
その傷は次第に痛みを増し、どうしても治らない。
そして遂には分けの分からない言葉を口走り、数日後に息を引き取ったという。
お犬様伝説の地
2001年の秋、ある山中での体験です
どんな目的でそこへ行ったのかは記憶にありません。(今思うと茸を探していたのかも知れません)
車道脇に車を止め友人の滝沢君と2人で山頂の方向へ向かう林道(獣道かも知れません)を小1時間歩き、見晴らしの良い場所で煙草を吸い始めました。
時刻は正午を10分ほど過ぎたところです。
何気なく谷を挟んだ反対側の尾根から30メートルほど下を犬が歩いているのが見えました。
私自身、犬の種類についてはよく知りませんが、どちらかと言うと和犬だったと思います。
やがて木に隠れて犬は見えなくなり、2人は煙草を消して立ち上がりました。
15分くらい歩いた後、肌寒くなってきたので車に戻ることにしました。
車まであと10分くらいの場所で滝沢君が変なことを言ったのです。
「あの犬やけに大きくなかったか?」
「向こうの山まで500m以上あったよな」
「あんなに大きく見えたってことは、3m以上の大きさだろ」
・・・・・・お犬様伝説の地 での不思議な出来事です。
無音の集落
仕事の関係で横浜からS県S市にある社宅に引っ越してきた。
こっちに来て3ヶ月、ようやく周囲の環境にも慣れ、休日もまともに取れるようになった。
そんな土曜日の朝、身体を鍛えるのが趣味な俺は、ランニングコースにまだ足を踏み入れてない
F山の方へ行ってみようと決め家を出た。
緩やかとはいえ延々と続く昇り道、思っていたよりキツイ。それでも殆ど休憩をとらず2時間以上走り続けた。
すると、前方に集落が見えてきた。小川をはさんで30軒近い家が立ち並んでいる。
自販で飲み物でもと思い、集落の中に入ろうとしたとき、妙な悪寒に苛まれた。
土曜日の真昼間なのに人っ子一人見えず、車も通らない。
無音の状態が続く。かすかに水の流れる音は聞こえるが・・・
・・・今まで喧騒の街に暮らしていたんだ。田舎なら何も珍しくないだろう。
でも梅雨の合間の晴れ間なのに、どの家も窓を閉めきっている。
そして、ここは土地が安いのに、何故こんな辺鄙な場所に住んでいるんだ?という疑念が沸いてきた。
妙な圧迫感・・・それは僅かながら恐怖感に変わっていった。
俺は今きた道をダッシュ気味に走りだした。
月曜日、地元出身の同僚に馬鹿にされるのを覚悟の上で話した。
だが、意外にも彼は表情を一変、真剣な顔で話はじめた。
「あそこは行かない方がいいですよ。うーん、詳しいことは言えないんですけどね・・・」
上司にも訊いてみた。
「ああ、〇〇か?あんた霊感でもあるのかい。あそこは正月でも餅は突かないんだよ。
何故って?餅が真っ赤になるからね」
それだけ話すと、これ以上は訊くなと言わんばかりに机の書類に目を落とした。
何故、いきなり餅つきの話?真っ赤??・・・あそこで何があったんだ???
後日、同僚の車に同乗していたとき
「今、通った空き地(集落から3キロ位離れた場所)、あそこにオートキャンプ場ができるみたいなんですよ。
地元じゃ売買はおろか、足を踏み入れることさえ嫌がるのに・・・」
コメント