『なまけもの』『姉の霊』など 全5話|洒落にならない怖い話【短編・オカルト】

『なまけもの』『姉の霊』など 全5話|洒落にならない怖い話【短編・オカルト】 厳選

 

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洒落にならない怖い話 短編5話

 

 

なまけもの

 

あのさ、かなり昔の話になるんだけど、俺が田舎に来てた時の話でさ、
なんか近所の山の上に鉄塔があってさ、あの電線とかかかってるやつなんだけど

ただその電線に逆さまにさ、鉄棒で言う豚の丸焼きみたいな感じで動くものがいたんだよ。

のうのうと頭とか掻いてるから、昔の話で俺は子供で、なんでかナマケモノだと思ったわけで

家に居たのがじいちゃんだけで、ばあちゃんはもう死んでて、兄貴はどっか探検で、父さん仕事母さんは買い物でさ、じいちゃんしかいなかったのよ。

 

のんびりお茶飲んでたのを今でも覚えてるね、仏壇の前でさ

前にも言ったけどナマケモノだと思ってたから、じいちゃんを呼びに行ったんだけどもね、

ふつう電線にナマケモノはいない

のんびりお茶をすするじいちゃんを家の前まで連れてきて、ナマケモノだよって指差したんだよ

電線にナマケモノなんかいなかったけどね、当たり前の話なんだけどね、でもじいちゃん驚いちゃってね

柱、といってもただの柱じゃなくて、玄関入ってすぐの柱、あれがいわゆる大黒柱って後で聞いたんだけど

にも関わらずなんか壊し始めたの、しがみついて殴ったり蹴ったり、驚いたね

もう子供心にヤバいと感じた俺は家から逃げたしたのに、家から音がすんの

いつのまにかナマケモノがぶら下がってたんだけど、しかもすぐそこの電線、もうすぐそこ、また驚いた

またまた驚くことに、ナマケモノだと思ってたらなんか違ったのな

すぐにわかっちゃったんだけど、死んだっていうばあちゃんの顔したやつ、

毛むくじゃらだったよ指先までも、ただ顔だけ人間みたいで

気持ち悪くなってさ、子供ながらにアレはヤバいとわかったのかもしれないけども、逃げようとしたの

が、足がすくんで動かなくて、ばあちゃん笑ってて

ついでに笑い声あげてどっかいっちゃった、電線つたって、するする

かなり目立ってたけど、騒ぎになった覚えは無いからさ、なんでだろうね

なんとかなったと思ったら母さん帰ってきて、じいちゃんに気付いて気付いてご近所と取り抑えたらさ

いつの間にか普段通りに戻ったらしい、俺は実家に帰ってたから聞いた話でさ、お茶飲んでるってさ

だからじいちゃん死んだことも知らないんだけどさ、じいちゃん地震で家崩れて死んだらしいけど

けっきょく、俺じいちゃんばあちゃんの死体見た記憶が無いんだわ

 

もどり雪

 

1月の終わり、山守りのハルさんは、山の見回りを終えて山を下っていた。
左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。
ちょっとした吹雪のような、『もどり雪』だった。
と――雪煙の向こうに人影が見えた。
道端にある山土場に佇んで、谷の方を向いている。
ヒュゥゥゥ―と唸る風の音をついて、何事か話す声が聞こえてきた。
その人影が誰かと話をしているようだが、相手の姿が見えない。

 

近付くにつれ、影の正体が判明した。同じ在所の源さんだ。
「おぉい!そんな所で何やってるんだ?」
ハルさんが声を掛けると、源さんはゆっくりとこちらに向き直った。
ゴツゴツとした厳つい顔が、今は少し強ばっているように見える。
「……何だ、ハルさんか」
「何だとは何だ。それよりお前、誰かと喋っていたようだが」
「ああ、ちょっとな。翔太と話をしていたんだ…」
「何だって?」

ハルさんは、しばし呆気にとられた。
翔太と云うのは源さんの一人息子だが、先年の春、7才になる前に小児ガンでこの世を去っているのだ。

 

翔太が死んでからの源さんの様子には、一見何の変化もなかった。
元来、黙して語らずといった雰囲気の持ち主だったし、
寄り合いの席などでむっつりと押し黙っているのも、以前と変わりない。
悲嘆に暮れているような姿も、ついぞ見せたことがなかった。
翔太の葬式の時など、俯き加減で泣き続ける細君を尻目に、
居並ぶ参列者を、仇でも見るような目つきで睨みつけていた。

 

そんな源さんの立ち振る舞いを見て、ハルさんの心中に去来したのは、
意地を張ってるんだろうなぁ…という思いだった。
たぶんそうすることで、悲しみを無理矢理押さえ込んでいたのだろう。
あれから9ヶ月余り。今日までずっと、源さんは意地を張り続けている…

「…歩いてたらさ、土場に差し掛かったあたりで、誰かに呼ばれたような気がして。
で、そっちを向くと、すぐそこに翔太が立っていたんだ」

 

ハルさんは、無言で源さんの独白に耳を傾けた。
いつの間にか風は止んでいて、周囲の山は時が止まったかのように静まり返っている。

「翔太のヤツ、『お母さんをいじめちゃだめだよ』なぁんて言うんだ。
そりゃあ俺も、翔太のことではアレを随分叱ったからな。
『いつまで泣いているんだ、泣いてどうなるものでもないだろう』なんてな」

そのことは、妻を通じてハルさんの耳にも届いていた。
田舎の井戸端ネットワークは全く侮れない。

「悪いとは思ったけど止められなかったんだ。そうやって気力を奮い立たせてたんだな。
いや、逃げていたのかもしれない。
で、気が付いたら会話が無くなってた」

源さんは顔を空に向けて語り続けた。いつになく口数が多い。

「あいつはそれが心配だったんだとさ。久しぶりに会った我が子に説教されるとはなぁ。
まったく、腹が立つやら情けないやら……なんだかなぁ………けどよ…」

そこで一旦口籠もり、そのまま空を振り仰いだまま立つ尽くす。

「…けどよハルさん。何でかなぁ…涙が止まらねえんだよ」

 

上を向いた目からジュワッと涙が溢れ出し、頬を伝ってこぼれ落ちたかと思うと、
源さんはそのまま、「オォォォォォ…!」と声を張り上げて泣き出した。
我慢に我慢を重ね、意地を張り通してきた源さんの号泣は容易には止まらず、
後から後からこぼれ落ちる大粒の涙が、雪面にポタタタタ…と穴を穿つ。
そのすぐ向こう、真っ新な雪の上にポツリと一組だけ、小さな子供の足跡があった。

 

やがて、再び勢いを増した風が激しく雪を舞い散らすと、足跡はあっという間にかき消されてしまった。
しかし、それは源さんの心の内に消えることなく焼き付いたのだろう。
山を下りた源さんの厳つい顔は、近頃になく晴れやかだった。

もどり雪が、ほんの少しだけ時を戻してくれたのかもしれない。




 

白いのっぺらぼう

 

高校時代から現在(27歳)まで毎日といっていいほど使っている道だから、
その日も特になにも考えず車で通勤。このときは何事もなかった。

 

問題は帰り道。その日は急な仕事で少し帰りが遅くなった(23時頃)
街灯もロクになく、時間も時間なので車もほとんど走ってない、
もちろん歩行者なんて一人もいない…と思ってたら
一人の背の高い人が横断歩道の手前で立ち止まっていた。

 

こんな時間にこんな暗い道を散歩か~物好きやな~なんて考えながら
俺は車内で信号が青になるのを待っていた。…が、よく考えるとおかしい。
俺が自動車用の信号に引っ掛かって止まっているんだから歩行者信号は青のはず、何故渡らないんだ?
暗いので目を凝らしてその人を見ると、全身真っ白。
白い服を着ているとかそういうことじゃなく、ただひたすら白い。

 

次の瞬間俺はゾッとした。こいつ両腕がねぇ!
しかも身長が高いという次元ぞゃない、細長すぎる。
後から思い出すと顔まで真っ白で、のっぺらぼう状態だった気がする。
不気味で仕方ない、信号が青になった瞬間俺はアクセルをベタ踏みして急発進。
あんなものを見たのは初めてだったので一刻も早くその場を離れたかった。

 

サイドミラーに映る白い奴がどんどん小さくなっていく、
ベタな怪談話のように追っかけてくる気配もない、俺はホッとしたが体の震えが止まらない。
温かい飲み物でも買おうとバイパス沿いにあるセブンイレブンに車を停めた。
車から降りるとすぐ近くのバス停にあいつがいた。

 

こちらを見ているのかどうかはさっぱりわからないが、
コンビニの光のせいで先程より鮮明に奴の姿が見えた。
やっぱり両腕がない、そして上半身だけ左右にゆらゆら揺れている。
ヤバイ、直感的にそう思った俺は降りたばかりの車に飛び乗り家まで直帰した。
自宅に逃げるように駆け込むと居間に母が座っていた。母が振り向き俺に言った。

 

あんたどぎゃんした?鼻血垂れ流しとーがね。
鼻血が出たのなんて産まれて初めてだった、これがあいつのせいなのか、
恐怖のあまり鼻血が出たのか、それともただの偶然かはわからない。
しかしいずれにしてもあの道は二度と使わない。
よく考えるとあいつを最初に見た交差点の少し奥には階段があって、
その先には草がおいしげし手入れなど全くされていない神社がある。
あいつはあの神社関係の何かだったのかもしれない。

 

文章に起こすと全く怖くないね、
でも実際体験してとんでもなく怖かったので書き込ませて貰いました。

 

姉の霊

 

それは私がまだ中学生の時でした。
当時美術部だった私は、写生会に行った時に顧問の
若い女の先生と話をしていたのです。
その頃は霊が見えなかった私は、他人の心霊体験に興味津々で、そのときもいつもと変わらぬ感覚で 私は先生に聞いたのです。

 

「先生は心霊体験したことないん?」と。
すると先生はいわゆる“みえる人”らしく、
少し考えてから、私に話をしてくれました。

 

もう6年前からですが、先生の家に一人の幽霊がいるのです。
初めてその霊に会った時は、さほど気にしなかったそうです。
普段から見えるので、「あ、いるな」程度。
中学生くらいの女の子で、ワンピースをはいていて、
廊下の奥の方でうつむいて立っていました。

 

同じ日に、座敷で座っているのと、
階段の踊り場のところで座ってじっと下を見ているのを目撃しました。
先生もさすがに何度も見るので多少怖くなり、
母親に容姿などを話してみたそうです。
すると、母は以外な顔をしてこう言いました。
「それ、この家を建てたときの設計士さんの娘さんだ。
設計中に事故で亡くなって、亡くなるちょうどちょっと前に
建ててる段階のこの家をみにきたから」

 

それから、少女の霊を時々先生は見るそうです。
その設計士さんに言おうと思ったらしいのですが、
なかなか連絡が取れないんだそうです。

 

私はその話を聞いて心臓が止まりそうになりました。
怖かったわけでもないんです。
ただ、直感で思いました。
その少女は6年前交通事故で亡くなった姉だと。
その連絡が取れない設計士は5年前に自殺した父だと。
私は何より姉が成仏していないことがショックでした。
早く迎えに行ってあげなければいけないと思いました。

 

先生に事情を説明して、私は翌日すぐに先生の家に行きました。
母親はついて行こうとしたのですが、どうしても
断れない仕事があり、私にすべてを託して見送りました。
家に着くと、先生が迎えてくれました。
先生がよく姉の霊をみるという座敷に通されました。
日があまり当たらなくて、薄暗い部屋でした。
こんな寂しいところに姉は一人でずっといたのかと思うと、
気付かなかった自分にとても腹が立ちました。

 

先生は私を一人にしてくれました。
私は必死に姉に語りかけました。
「長い間一人ぼっちにしてごめんね。
気がつかなくてごめんね。
もう迎えに来たよ。一人ぼっちじゃないよ。
さあ、私と帰ろう。家へ帰ろう」
途中から私は泣いていました。
姉は私をどう思っているのだろうか。
優しかった姉に何とひどい仕打ちをしてしまったのかと。

 

しばらく泣いていると、誰かが私の肩を優しくたたきました。
振り返ると、全く知らない恐ろしい顔をした少女が立っていました。
少女はニンマリ笑ってつぶやきました。
「つれてってくれるの?」

未だ少女が私の後ろにいることより、
本当の姉が成仏したかどうかが心配です。




犬と呪い

 

落ちの無い思い出話。
昭和45年、小学5年の頃、ある呪いの方法が少年誌に書いてあった。
犬を首輪でつないで、その口が届かぬところに餌をおき、そのままにしておく。
犬は空腹感のあまり餌を食らおうとするが、届かずもがき苦しむ。
まさに飢えて狂い死のうとしたとき、日本刀でその首を切り落とすと、
切断された犬の首は、飛んで餌に食らいつく。
その首を奉じ、呪いを願うと成就するという話だった。

 

同級生の川越は、善悪の区別があまりつかない男だったので、
興味本位で、野良犬をつかまえてそれを実行してしまった。
川越は自慢そうにその話を私にしたが、犬を飼っていて大好きだった私は、
激怒し、そのことを担任の先生や給食のおばさんや他の同級生に言いふらした。
川越は先生に怒られた。
それから間も無く突然川越が死んだ。盲腸をこじらせたという話だった。

 

しばらくして、ある日の下校途中、道端で犬が車に轢かれていた。
首がつぶれて、首の断面が見えていた。
その首の断面から川越がこちらを見ていた。

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