【長編- 名作】スカッとする話
DQNのカツアゲ
あれはちょうど10年前のことなんですが、当時高校三年生だった私は他校の四人組のDQNにカツアゲにあいました。
以下、連中をA、B,C,Dと呼称を振り分けます。
私は稽古が厳しいことで有名な空手道場に6年通っていたのですが、ケンカをしたことはありませんでした。
だから、DQNに囲まれたときもすっかりビビってしまい
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は空手やってるんだぞ。強いんだぞ」
と叫んだら、声が裏返ってしまいました。
そしたら、DQNどもは大爆笑しました。
A「そうか、そうか、空手やってんだ。すごいね?」
明らかに信じてない口調で言います。
A「ローキックってあんだろ? あんなんでホントに人が倒れるわけ?」
私「モロに入れば」
A「じゃあ、さ、オレにローキックしてみろよ。それでオレが倒れたら、許してやるよ」
他の三人もニヤニヤしながら、馬鹿にしたようにこっちを見ています。
私「じゃあ、蹴るから、前の足のほうに体重かけてください」
A「こうか?」
私「そうです。じゃ、蹴ります」
そこで、私は思いっきりローキックを放ちました。
Aは「はおうわ!」みたいな声を出して、そこに倒れました。
そこで、私は思いっきりローキックを放ちました。
Aは「はおうわ!」みたいな声を出して、そこに倒れました。
すると、Bが「テメェ、何しやがった」と叫びました。
いや、何しやがったって、ローキックですよ? Aがしろって言ったからしたんですよ?あなたも聞いてたでしょ?
と、言おうと思ったら、Bが殴りかかってきました。
それが、ものすごいオーバーアクションで振りかぶってきて、まるで野球のピッチングのようでした。
殴られるの嫌だったので、Bの腹に前蹴りを入れました。
ダメージを与える蹴りというよりは、相手を吹き飛ばして、距離をとるための蹴りです。
ところが、その蹴りでBがガックリと膝をつき、食べたものを吐き出しました。
Bの打たれ弱さにビックリしましたが、どうやらCとDは私以上に驚いたようです。
二人ともかなりビビってるらしく、呆然とした表情で立ち尽くしています。
「僕、もう帰ってもいいかな」というと、Cが「あ、ああ」と完全にビビった様子で言うので、その場を立ち去りました。
その後、しばらくは仕返しされるのを恐れて、いつもとは違う道を通るようにしていました。
なのに、その四人組にまた出会ってしまったのです。
A「アンタ、さがしたぜ」
私「復讐にきたのか?」
もう、私はビビってはいませんでした。
A「違うよ。アンタ、空手やってるってのは本当だったんだな。オレらケンカ強いほうでさ、あんなことになったことねぇんだよ」
え、あれで、ケンカ強いほうなの?DQNってどんだけ体力ないんだ、と思いましたが黙ってました。
「アンタ、どこの道場通ってんの? オレらもそこに通いたいんだけどさ」
最初はその話を信じなかったのですが、彼らはマジだったらしく、道場の場所を教えると、本当に入門してきたのです。
彼らは全員、私よりひとつ年下だったこともあり、それから、私のことを先輩と呼ぶようになりました。
そして、それから、10年たちますが、まだ彼ら全員と交流があります。
B,C,Dは空手をやめてしまいましたが、私とAはまだ道場に通っています。
Aはときどき言います。
「あのとき先輩に出会ってなかったら、きっとオレら今はヤクザになってるか、刑務所の中にいましたよ」
A、B,C,Dの全員が今はまともな職について、結婚もしています。
私だけ、まだ結婚していません。彼女もいません。
ちなみに、この四人に3回ほど女の子を紹介してもらったのですが、元DQNの紹介してくれる女の子というのはやっぱり、どこかDQNぽくて、自分には合いませんでした。
おわりです。
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