【長編- 名作】スカッとする話
奥さんは元家政婦
もう10年以上前の話。
実家が車で1時間ほどの所にあって、母がひとりで住んでたんだけど
体調もあまり良くないらしいし、私は一人娘なので
夫の理解もあって同居することにした。
その為に実家を建て直すことになったんだけど、その時に起こった出来事。
私たち夫婦はそれまで共働きで、実家にはそう度々顔を出せなかった。(月2ぐらい)
なので実家では週に2回家政婦さんを雇っていた。
私と同じぐらいの年齢の主婦の方だけど、母とは割と気が合うようで
いい話相手にもなってくれたようだったから、多少躊躇はあったんだけど
そう言うわけでお断りすることになった。
一応今までよくして下さったお礼にと、紹介所への支払いと別枠で
退職金代わりのお礼を包んだりもした。
「またもしかしたらお願いすることもあるかも知れません、その時はよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
みたいなやりとりもあって、円満に終わったと思ってた。
それから2ヶ月ほど経って、取り壊しが始まってしばらく経った頃。
新居に戻るまでうちで同居していた母の携帯に
その元家政婦から電話があった。
最初は「まぁ久しぶりねー」とにこやかに応じた母が
すぐに顔をひきつらせながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と何か謝っていた。
なんだろうと思って聞いてみた。
元家政婦の旦那さんは工務店をやっている。
私たちとの同居話がある以前から「いつか建て直しをする時には夫に任せて」
と言うようなことを母は言われていた。
「うちで建てれば、そこらへんのHMの半額ぐらいで立派な家を建てられる」と。
家を建て直すに当たって業者を決める時に、母からその事を聞いていたので
頭になかったわけじゃない。
でも母から聞いていたその工務店のHPがあったので、
これまで手がけた事例画像を見させてもらったが
その工務店が建てた家の内装にはあるパターンがあって、それがどうも好みに合わなかった。
「ああ、確かにこれなら安く建てられるだろうな・・・」と素人が思うようなものだった。
一旦声を掛けてしまうと、お断りしづらいし
私たちが出資して私たちも老後を過ごすことになる家だから
やはり自分たち好みの家を建ててくれる業者を探したい。
それを母に言うと「あんたたちの思うように建てればよろしい」と言ってくれたのでそうした。
結局元家政婦には声を掛けなかった。
でも母に確認したら「お願いするよ」と応じたわけではなく
「この家を建て替えるのは私が死んだあとのことだろうねぇ」ぐらいしか言ってないらしい。
それなのに「久しぶりに近くを通ったら建て直しが始まっててビックリした。
何故うちに話が来なかったの。あれだけ尽くしたのに嘘つき」とまぁ、このように言われたそうだ。
それを聞いて、私から家政婦に電話した。
「色々お世話になったのにご期待に応えられず失礼しました。
身内のしがらみがありまして、某HMにお願いすることになりまして」
と、嘘も方便。負けるが勝ち。で、丁重に謝った。
普通なら「家が工務店だからよろしくね」だけで契約成立なんて思うわけがないし
謝る理由はないのだが、これからは母のそばには私たちが居るからなって言うアピールもあった。
家が完成して引っ越しを済ませ、あらかた片付けも終わった頃、
庭で飼ってる柴が激しく吠えた。
うちの柴は大人しいし、人様に吠えることは滅多にない。
もしかしたらちょっとアホなのかもってぐらい愛嬌がある犬なのに。
でもすぐ鳴き止んだのであまり気にしていなかったが
またしばらくした頃、突然吠えるんじゃなくてキャインキャイン!って鳴いた。
ビックリして庭に出たら落ち着きなく小屋のそばで私を見つめる柴。
そんなことがあまりに頻繁に起こるので
犬小屋回りを透明のアクリル板で囲って監視カメラを取り付けた。
犯人は元家政婦だった。
柴には怖い思いをさせて申し訳なかったが、石を投げる映像を証拠として残したかったので
一応3回分撮れるまで撮り続けた。
カメラを外す時「ぼく頑張った?ねぇぼく頑張った?」と言わんばかりに
尻尾をふりふりしてる柴の姿が愛しかった。ごめんよ柴。
後日、警察には一応被害届を出した。
母は「そこまでしなくても・・・」とは言ったけど、うちには子供もいるし
今後へのけん制の意味もあるから。
当然というか、警察はこの程度では動いてくれないw
でも届を出しているという事実は残しておきたかったってのもある。
そして夫と一緒に工務店を訪問。
これまでの流れとDVDを渡し、警察に被害届を出したことも話した。
旦那さんは全て寝耳に水のようだったのでビックリして気の毒なぐらい震えていた。
ちなみにどういう夫婦関係なのか、家政婦の仕事を妻がしてることも知らなかった。
なのに夫に仕事を回して貰えなかったからってここまでやるか?とも思うし、謎だらけ。
その後家政婦紹介所にも行った。
長い事母が世話になって有難いと思っていたが、ここまでされる筋合いはないと
ここでは苦情だけでDVDのことは言わなかった。(場合によっては出すつもりだったけど)
それから嫌がらせは無くなったけど、先日その工務店で家をリフォームした人と知り合ったので
軽く探りを入れてみたら、奥さんは元家政婦じゃなくなってた。
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