【長編- 名作】スカッとする話
私の期待に応えて欲しい
近所に住む従姉妹とは姉妹同然に育った。
その従姉妹が婚約した。
お相手は真面目そうな年上の会社員A。
会社の先輩だって。
おめでとう!とみんな喜んでいたんだけど、程なくAが強烈なエネだった事が判明。
結婚後は実家のある九州で親と同居、祖父と小姑小舅も一緒。
Aローンで三世帯住宅を新築するから大丈夫。
従姉妹は家事全般担当。空いた時間はパート。
近所でA親戚がやってる酒屋に話がついてるから大丈夫。
嫁としてのあれこれはA母に聞いて。
実家は甘えちゃうから余り帰らぬよう。
子供は出来るだけ早く、たくさん。
A実家で産めば良い、親戚に産婆がいる。
赤ちゃんのお世話は高齢毒小姑がするから大丈夫。
とにかくA母に従うこと、教えを請うこと、一日も早くA家に馴染むよう今までの甘えた気持ちは捨てて。
様々な決定は僕と父がする。安心して。
君は僕だけじゃなく、A家の嫁になるんだよ。
最初は辛いと思う、でも頑張って。
文句は言わないでまずは10年耐えると僕と約束して。
愛してるよ、素晴らしい家庭を作ろう。
そう言われたそうっす。
従姉妹は東京生まれ東京育ち、仕事は念願の職。
それはAも知ってる(上司だったから)。
いきなり仕事をやめてA実家に入れとは?
初耳ですが?と従姉妹が尋ねると、Aは
「君が夢に向かって真面目に働く姿を見て、この人なら僕の実家でもやれると思った」
A母は
「さすが我が息子、いい娘をスカウトしてきた。私はスパルタよ、ついてこれるかしら?」
と言ったそう。
その時点で結納は終わってた。
泣く従姉妹に従姉妹父が「任せろ」と。
従姉妹父は、従姉妹にA家族に「了承致しました」と三つ指ついて言え、その後も言う通り従え。と指示。
連休と有給をフルに使い、従姉妹はA実家にお試し奴隷をしに行った。
その間、従姉妹父はAを呼び、娘を君にやるのだから君も私の期待に応えて欲しい、男同士伝えたい事がある、時間とってくれと言う。
従姉妹という奴隷を得て上機嫌のAは了承。
それから、高校野球の監督である従姉妹父の特訓が始まった。
朝な夕なAをしごいた。
朝は部員が迎えに行き、終わるのは八時。
そのあとは従姉妹家で食べろ食べろ祭り。
このくらいの体力は必要だ!男なら!さあ牛丼もう一杯!
ってやったらAがA実家に泣きついた。
A実家は文句を言ってきたが、
従姉妹父は「娘はあなたがたの希望に従って、今までの仕事も実家も捨ててそちらに嫁ぐ。
息子さんにも是非男を見せて欲しい!高校生がやっている程度のトレーニングは出来なければ困る。男じゃない。」
そう突っ張ねた。
そう言われると後に引けない九州男児で、Aはもうちょっと頑張ったがギブアップ。
従姉妹父は許さず、「じゃあじっくり時間をかけて体幹を作ろう。男なら当然だ。結婚はそのあとだ、なあに、半年で見違えるようになる」
で、Aは婚約破棄を申し入れた。
従姉妹に落ち度はなく一方的だということで、結納金は勿論慰謝料も頂き、会社では
土壇場で婚約破棄した酷い男として知れ渡り。
婚約者の父が野球に誘ったら即、音を上げた根性無しとも言われ結局Aは実家に帰った。
A実家は真面目に奴隷を演じた従姉妹を気に入っており、Aを凄く責めたそう。
AからもA実家からも復縁メールがたくさん来るけど
「私は尽くすに相応しい家の嫁になりたいです。Aさんは弱過ぎて尽くす気になれません」
従姉妹父は
「娘は女性として嫁として素晴らしいのにA君は男として夫として貧弱すぎ」
と、狂ったメールを返しているそうだw
従姉妹父は普段は絶対に男女差別しない公正な人。
勤める高校は時々甲子園に出場してます。
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