【長編- 名作】スカッとする話
小児喘息と虚弱体質でガリガリだったからよくイジメられた
俺、小中学生の頃、小児喘息と虚弱体質でガリガリだったから、喧嘩も弱くイジメられたんだよね。
アダ名は「ホラーマン」。
高校生になって、喘息はおさまってきたんだけど、胃弱でやっぱり痩せたまんま。
高校ではイジメはなかったんだけど、地味キャラだった。
頭も出来もそれなりだったから、大学の二部にとりあえず進学した。
昼間のバイトは色々探したんだけど、事務仕事は未経験者不可ばかりだったので、
倉庫会社の軽作業ってのをとりあえずやることにした。
ところがこのバイト、全然、軽作業じゃない。すげーハード。
俺は非力で足手まといだったから、周囲も全然話しかけてこない。
毎日、毎日、トラックから荷降ろししてパレットに積むことだけを繰り返した。
給料は日払いだから、いつ辞めてもいいやって気持ちでやっていたら、
非力は非力なりに要領がわかってきて、1ヶ月続いた。
この倉庫のバイトは、1ヶ月20日以上働くと日給3日分の精勤手当をくれる。
担当の社員さんも驚き「私さん、精勤? ホントに? 凄いねえ」と言ってくれ、
バイト仲間も「どうせ3日か1週間で辞めると思ってたけど、やるじゃん」と言ってくれた。
そこから、バイト仲間とも仲良くなり、社員さんにもよくしてもらえ、どんどんバイトが面白くなってきた。
仲良くなったバイト仲間にAさんという人がいた。
Aさんは週に2-3回程度しか入らないのだが、学生プロレスをやっていて筋肉隆々。
よく人を笑わせたり、面倒見の良い性格で、新人バイトの教育係もやっていた。
このAさんが「私クンは随分と細いけど、身体弱いのか?」と聞いてきた。
「俺、小さい頃は喘息で、高校生からは胃弱なんですよ。へへへ」と答えると、
「ふーん、筋肉つけたいか?」
「ええ、そりゃあ。でも、体質で……」
「だいじょうぶ! 筋肉のことなら俺に任せろ!」
筋肉増量用のプロテインなら旨いの色々あるんだ、とサンプル持ってきてくれたり、
倉庫のバイトも筋トレだと思って、背筋と腹筋を使いながらやるんだとか、
昼休みには、体幹とハムストリングスを鍛える四股の踏み方を教えてくれたり、
倉庫の太い柱を利用して、背筋をつかう「てっぽう」のやり方を教えてくれた。
Aさんの指導のおかげもあって、俺は順調に増量。
夏にはほぼ平均体重、秋には平均体重+10%になった。
この頃になると、もう足手まといの非力クンでもなんでもなく、胃腸の調子も絶好調。
大学の勉強にも集中力がつくし、生活の色々なことにやる気が出てきた。
お正月に中学の同窓会をやるという連絡が来た。
同級生たちには会いたいとも思わなかったのだが、
恩師もご招待してるというので、ご挨拶がてら顔を出すことにした。
会場はファミレスのパーティールームみたいなところ。
中学の頃、俺をイジメてた連中も、最初はホラーマンだと思わなかったようで、
「え? 誰? え? ホラーマン? マジ? へ、へぇー…」
ここで、俺をイジメてた連中をぶっとばしたりしたら、かっこいいんだろうけど……
残念ながら、それはない。
ちょっと筋肉がついただけで、喧嘩が強くなったわけでもなんでもないからね。
イジメてた連中も、よく見ればヒョロガリだったしね。
とりあえず、時間が来て店を出て、駅まで歩いてた時に、恩師が盛大に転んだ。
ただ、変な転び方をしたみたいで、酷い捻挫をしていて、全く歩けない。
どうする? 救急車呼ぶか? みたいな話になったけど、徒歩15分ぐらいのところに救急病院がある、と。
で、俺、頑張った。
「俺が背負って行きますよ」と先生を背負って小走りした。
うん。これだけ。
でもさ、誰かに聞いて欲しくてさ。
お粗末。
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