ちょっと切ない話『君がいるから』【短編】全5話 Vol. 18|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『君がいるから』【短編】全5話 Vol. 18|切ない話・泣ける話まとめ
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切ない話 Vol.18

 

 

温泉巡りしようよ

 

地元から遠く離れた所で就職して、過酷な仕事と職場のイジメで鬱になった。
通院治療しながら、家族のお荷物と思われるのが嫌で、家には内緒にしてメールで「元気にしてるよ」って送ってた。
そしたらある日、イジメが酷くてもうどうにも死にたくてたまらなくなった。病院に行ったら、先生が親に電話を掛けた。
何て言われるだろう。怒られるだろうか。そう思いながら、受話器を取った。
電話口で母ちゃん、「ずっと気付かなくて、ごめんね」って言った。
俺は、電話を手にしたまま声を上げて泣いた。

次の日には、母ちゃんが実家からやってきた。
「しばらく仕事休んで、母さんと温泉巡りしようよ。ずっと行きたかったんだ」
ふとすると死ぬことばかり考えてしまうくらい酷い状態だったが、母ちゃんがあちこち連れ回してくれて、嫌なことから全部遠ざけてくれた。

一度だけ、真顔で言われた。
「母さん、あんたが死んだら困るな…」
そんな悲しい顔、もう見たくないよ。
ずっと笑っててよ。

親孝行したいよ。
ありがとう、って何度言っても言い足りないよ。

 

 

輸血

 

腹違いの兄貴が居る。
俺小学5年、兄貴大学生の時に子連れ同士の再婚。
一回り近く年が離れていたせいか、何だか打ち解けられないまま。
大学入試の時、入学金の事親に言えないでいたら、兄貴が知らない内に払っていた。
俺「気を遣わないでよ。いざとなれば働けば…」
兄貴「馬鹿野郎。俺はお前の兄ちゃんだ。」後でちょっと泣いた。
姪っ子が大怪我した時、限界まで輸血した。
兄貴「もういい止めろ。死んでしまう」
俺「うるさい。俺は○子の叔父さんだ」義姉共々泣かした。お返しだ。ザマミロ。

姪っ子の結婚式の時、「私にはお父さんとお母さんと、叔父さんの血が流れています」
って言われて図らずも号泣。兄貴夫婦以上に号泣。大恥かいた。
○子綺麗だったなあ…。

 

 

お前は余計な事考えるな!

 

私の母親は、私の友達に「うちの子に関わらないで」とか平気で言うような人だった。
そのせいでたくさんの友達をなくしてた私は、そのうち友達と距離を置くようになった。
ある日、友達から電話で「なんで最近距離おくの」と言われた。
そいつは一番仲が良かったから母親から何度も嫌がらせを受けていた。
「もう嫌な思いさせたくないから」とだけ言うと、友達は黙ってしまった。
また一人大事な人が減ると思うと苦しかったが、図々しく「嫌いにならないでね。ずっと友達でいてね」なんて言えなかった。
無言の時間が長く続くと、受話器から鼻の啜る音が聞こえてきた。
どうしたの、と聞くと友達は息を荒くして
「うちはお前と一緒にいて、嫌な思いなんかしたことない!」と怒鳴ってきた。
「うちが必要としてんだから、お前は余計な事考えるな!」と震える声で怒鳴るのだ。
「大丈夫だから!」と。
涙がでた。
今までそんな事言ってくれる人なんていなかった。
私のために泣いてくれる人なんていなかった。
私は泣きながら「うん」とだけ言った。

それからどれだけ母親に嫌がらせを受けてもそいつは友達でいてくれる。

ありがとう。

恥ずかしいけど、いつか言ってみようと思う

 

 

君がいるから

 

御歳84になるおじいちゃんが言いました。
「僕はね、昔、まあ今もだけど。運動も勉学もロクにできなかった」
「友達もいないし。顔も悪い。いつもひとりぼっち」
「だから、死のうと思ったことがある」
「でも、死んでしまったら僕の葬式代がかかるだろう」
「役立たずの僕のためにそんな無駄なお金を使ってほしくなかったんだ」
「そこで僕は考えた。これ以上迷惑をかけないように今は死なないでおこう」
「生きて生きて、僕が死んで迷惑になる人たち皆死んでから、死のう。と」
「どこかの海か崖にでも身を投げて・・・ね」
「でもね、気付いたんだ。僕には両親がいる。兄弟がいる」
「兄弟はやがて結婚して子供を持った」
「僕も運良く結婚できて子供をもてた」
「僕が生きている以上、つながりが消えることはないんだ・・・ってね」
「そして、僕は僕の大事な妻のため、子供の為に今まで生きてきた」
「その、僕の大事な子供の子供が、君です」
「ありがとう、君がいるから僕は生きています」

病院で自傷による出血多量の手当てのため入院していた、僕に向かって。

 

 

親のすねかじりもせず

 

先月用事があって普段乗らない電車に乗ったら
沿線で花火大会があったらしく
浴衣の女性がいっぱいいて思いがけず目の保養。

そこへ乗ってきた「愛読書は小悪魔アゲハです」なふたり。
金髪にギャルメイクで
「おまえそれ千円ショップで揃えたろ」な
安っぽい趣味の悪い浴衣を下品に着こなしておりました。

早速携帯が大音量で鳴る。
携帯いじりまくりだろうどうせと思ってたけど、
「いやだ、切るの忘れてた。恥ずかしい」と囁いて
千円ギャルは即効で電源を落とした。

乗客がだんだん増えてきて、
ギャルズの右隣のひとり分しかないスペースに、
オシャレでステキなカップルの女性が座った。
カップルの男性の方は離れた席に座った。

しばらくしてギャルズの左隣が一つ空いたとき、
ギャルズは何も語らずお互い目だけで合図し、
すっと左に詰めてカップルの女性の隣を空けてあげていた。

カップルは何も言わず会釈もせず並んで座った。

そうか、千円ショップ浴衣なのは
この子達が円光も万引きもカツアゲも親のすねかじりもせず
自分のお小遣いやバイト代だけで浴衣揃えようとしたからなんだ、
そう思った私はものすごく恥ずかしくなりましたとさ。

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