切ない話 Vol.24
言わせたくなかった
さっき大学落ちた事を母に報告しますた。
「落ちちゃった!でもまぁ、俺これから仕事頑張るから!俺稼ぐからさ!」悔しさを隠して、立ち去ろうとした。
「本当に、、、、、、ごめんね。あたしのせいで。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
言われると思わなかった。言わせたくなかった。18年間それだけは言わせたくなかった。
親父が居なくたって、借金があったって。暇が無くったって。
自分を呪った。新聞配達だって家事だってなんだってやった。バイトだって3年ほとんど毎日やった。
3つ掛け持ちしてやった。生活費を稼ぐために働いた。兄弟の事を思って働いた。
一度過労で倒れた。ふと愚痴をこぼした。「俺もパソぐらい買える家庭に生まれたかった」「・・・・・」
次の日机の上にパソと手紙が置いてあった。「ごめん」手紙にはその文字だけが書いてあった。
泣いた。「恥ずかしくない人間になろう」そのとき、もう2度と言わせないと誓った。
親孝行ということで
今日はカーチャンの誕生日
事前に打ち合わせしてネーチャンはケーキ、
オレは花を買うことにしてた
花屋に行って「母の誕生日に予算3千~4千円でお願いします」って旨を伝えて暫くすると
花なんか興味ないオレにも伝わるほど、本当に綺麗な花束が出来上がっていく
そんなオレの視線に気付いたのか、店長さん
「3千円で造ってます」とにっこり
ウソだろ?その花さっきそこで値札見たら1本400円だったぞ?それなんかは500円だ?
すかさず店長
「親孝行ということでサービスしときました」+眩しい笑顔
「それと…ハイ、メッセージカードとペン。お母さん喜びますよ」
有無を言わさず渡されてしまった
へったくそな字で書いたさ「タンジョウビオメデトウ」ってな
今夜カーチャン喜んでくれるといいな・・・
んで持って帰って気付いたんだけど、オレ「誕正日おめでとう」って書いちゃってる・・・
スゴイよ!ジョンイルだよ!将軍様生まれちゃったよ!
花束だけ渡します・・・
最後の宿題
俺の友達の話しだけど。
俺の友達は、古風に言えばヤンキーだった。
高校もろくに行かず、友達と遊び回っていたそうだ。
先生達は皆サジを投げていたそうだが、友達の担任の教師だけは、そうじゃなかった。
かなりの豪傑だったらしく、何事にも熱心に取り組む先生だったらしい。
幾度となく留学の危機に瀕した友達を叱咤激励してくれたそうだ。
友達はその分、反抗もしたみたいだけど。
先生のおかげか、そいつの頑張りかは知らんけど、友達は高校を卒業してとある土木会社に就職。
そして、去年の10月頃、やつは不思議な夢を見たらしい。
高校の教室、辺りはぼんやりとしていて、何人かの生徒の姿が見える。
教壇には、ニカッと笑った先生の姿があった。
その先生は突然、黒板に「自習」という字を書くと
「明日から休みになるが、宿題がある!」と叫んだ。
友達が「えーっ!」と声を上げると、先生は笑って
「俺からの最後の宿題だ。幸せになれ」と言ったという。
目が覚めた後、何となく変な感覚があったと友達は言っていた。
そして、その日のお昼頃、そいつは突然、先生の死を知らされたそうだ。
原因は俺は知らないけど、急死だったらしい。
この間、飲みの席で「俺の先公の命日だったんだ」なんて話しから、その話しを聞かせてくれた。
いつも強気で口調の荒いそいつが、声を殺して泣いているのを見て、
先生の最後の宿題を、こいつはちゃんと続けているんだなぁ、って思った。
親父の飯
小1の秋に母親が男作って家を出ていき、俺は親父の飯で育てられた。
当時は親父の下手くそな料理が嫌でたまらず、また母親が突然いなくなった
寂しさもあいまって俺は飯のたびに癇癪おこして大泣きしたりわめいたり、
ひどい時には焦げた卵焼きを親父に向けて投げつけたりなんてこともあった。
翌年、小2の春にあった遠足の弁当もやっぱり親父の手作り。
俺は嫌でたまらず、一口も食べずに友達にちょっとずつわけてもらったおかずと
持っていったお菓子のみで腹を満たした。弁当の中身は道に捨ててしまった。
家に帰って空の弁当箱を親父に渡すと、親父は俺が全部食べたんだと思い
涙目になりながら俺の頭をぐりぐりと撫で、「全部食ったか、えらいな!ありがとうなあ!」
と本当に嬉しそうな声と顔で言った。俺は本当のことなんてもちろん言えなかった。
でもその後の家庭訪問の時に、担任の先生が俺が遠足で弁当を捨てていたことを親父に言ったわけ。
親父は相当なショックを受けてて、でも先生が帰った後も俺に対して怒鳴ったりはせずにただ項垂れていた。
さすがに罪悪感を覚えた俺は気まずさもあってその夜、早々に布団にもぐりこんだ。
でもなかなか眠れず、やっぱり親父に謝ろうと思い親父のところに戻ろうとした。
流しのところの電気がついてたので皿でも洗ってんのかなと思って覗いたら、
親父が読みすぎたせいかボロボロになった料理の本と遠足の時に持ってった弁当箱を見ながら泣いていた。
で、俺はその時ようやく、自分がとんでもないことをしたんだってことを自覚した。
でも初めて見る泣いてる親父の姿にびびってしまい、謝ろうにもなかなか踏み出せない。
結局俺はまた布団に戻って、そんで心の中で親父に何回も謝りながら泣いた。
翌朝、弁当のことや今までのことを謝った俺の頭を親父はまたぐりぐりと撫でてくれて、
俺はそれ以来親父の作った飯を残すことは無くなった。
親父は去年死んだ。病院で息を引き取る間際、悲しいのと寂しいのとで頭が混乱しつつ涙と鼻水流しながら
「色々ありがとな、飯もありがとな、卵焼きありがとな、ほうれん草のアレとかすげえ美味かった」とか何とか言った俺に対し、
親父はもう声も出せない状態だったものの微かに笑いつつ頷いてくれた。
弁当のこととか色々、思い出すたび切なくて申し訳なくて泣きたくなる。
ドナルド…大好きだ
結婚する前の嫁とシーに行った時の話
俺はおっさんながら、ドナルドが大好きで、嫁もそれを知ってた
平日だった為、客も少なくガラガラだった。
誰もいないゲート前の地球儀の前、2人で写真を撮っていたら、いつの間にかドナルドが近づいてきた
2人を撮ってあげようか?みたいなジェスチャーで冗談を言ってくれた。2人ともびっくりした
嫁は喜び抱きつきに行き、俺はカメラを構えた。嫁が俺においでおいでと言っていたが照れて抱きつきに行かなかった。
俺が嫁とドナルドの2ショットわ一枚撮った所で、ドナルドが近づいて来て俺の手を握り、持っていたカメラをキャストに渡して撮って撮ってとキャストにアピってくれた。
握ってくれた手は優しいながら力強く、写真を撮った後に抱きしめてくれて頭を撫でてくれた。
おっさんなのに泣きそうになった。
ドナルド…大好きだ
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