ちょっと切ない話『お前は好きな道を歩め』【短編】全5話 Vol. 5|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『お前は好きな道を歩め』【短編】全5話 Vol. |切ない話・泣ける話まとめ
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切ない話 Vol.5

 

 

ヘソクリ持ってきたんよ

 

GW,
大学進学のため、上京して一人暮らしをしている俺のアパートに母が来た。
相変わらず口うるさく、イロイロ言うのが、ウザくて、いる間中、小さい口げんか状態だった。

いよいよ帰る日、駅のホームで見送ることになって・・・

電車のドアが閉まろうとしてる時、「あんたにイロイロ買ってやろうとヘソクリ持ってきたんよ。でも使わんかった。 お母さん、電車に乗ったらもうお金使うことないし、これ、持っていきな。」

と、財布をポンと投げてくれた。
俺が、返答を考えている間にドアが閉まり、ゆっくりと電車が動き始めた。
笑顔で手を振る母・・・

財布には万札より千円札の方が多い計9万円

 

 

お前は好きな道を歩め

 

三人兄弟の末っ子だったオレ。オレが消防だった時に兄貴が高3だった。
車好きの兄貴は自動車会社に就職したくて大学に行きたかったみたいけど、
頭は決してよく無かったので私立の大学にしかいける大学がなった。兄貴は親父に大学に行きたいと言ったが、
親父は『家には金が無い。残りの兄弟もいるし、我慢してくれ。すまん。』と言った。
影でその話を聞いていた俺は、それまで自分の家が貧乏だと思ってはなかったので驚いた。
話を承知した兄貴は、肩を揺らして泣いていた。親父も自分が不甲斐無いのか泣いていた。
その後、兄貴は高卒で就職した。数年後、同様に二番目の兄貴も高卒で就職した。
そして、俺が高3になった時、俺も大学に行きたいと思っていた。
自分でもいうのはなんだが、学校での成績はかなりいいほうだった。
しかし、親兄弟には迷惑はかけれないと進学は諦めていた。迷惑をかけないように、
『オレも高校卒業したら就職するから。』って家族にいつも言っていた。
そんな時、2人の兄貴が『お前は安心して好きな道を歩め。大学に行きたいなら、はっきり言え。オレがどうにかしてやる。
お前は頭もいいし、オレの出来なかった夢を叶えてくれ。』と言ってくれた。嬉しかった。大声で泣いた。

数年後、オレは無事に大学を卒業、兄貴の夢でありオレの夢であった自動車会社に就職することができた。
兄貴は喜んでくれてはいたが、さぞ悔しかっただろうと思う。申し訳ないことをしたと思っている。
面と向かって言うのは照れるので、ここで言わせてもらいたい。
兄貴、ありがとう。いつか、最高の車を造るからな。

 

 

節約も楽しいよー

 

嫁の日記を盗み読みしたら
いつも昼飯は、納豆ご飯やお茶漬けしか食べてないって分った。
友達とファミレスに行くのも月に一度と決めてるらしい。
俺に美味しい料理を食べさせたいからみたいな意味のことが
書いてあった。昼飯けずって夕飯にまわすって。
しかも、すげー明るく書いてあんの。
「今日は○ちゃん(俺)の好きな牡蠣を買うのだ~」とかさ。
俺の文句とかも書いてあるけど、文句書いてるくせに最後は俺を庇ったこと書いてるし。

マジで泣いた。もっと俺に甲斐性があれば昼から寿司でもなんでも食わせてやるんだけどな。
給料少ないのに専業で居てくれって言ったの俺だし。
金のことで責められたこと一度もないし(タバコ減らせとは言われるが)
節約も楽しいよーとか言ってたし。

盗み読みは良くないことだが、結婚してよかったってつくづく思った。
こんなに俺につくしてくれたのって親以外で初めてだし。
何もしてやれんから、浮気だけはしないと誓うよ。ま、浮気しようにももてないからできない俺だがな。

 

 

もう一度食べたいよ

 

近所に婆ちゃん一人でやってる食料品店があって、なんか雰囲気が好きで結構通ってたら
いきなり店に品物が無くなった。
婆ちゃんが「驚いた?商売の保証人やってた弟が病気になったからこの店たたむのよー。」
一週間かそこらでチラシ無き在庫セールも終わり、婆ちゃんは店の前で椅子を出して
ボーっとしてた。
そんなある日仕事帰りに寄るとなんかニコニコして掃除しながら「奇特な人がいてね、今度どこそこで
店やるからそこで惣菜作らせてもらえるの。お店の2階が住めるようになっててね、お風呂もトイレも
ついててそこに住めるのよ。」

思わず「おばちゃん良かったねー。」って一緒に喜んだんだけどさ、商売人なら移転した店の場所くらい
教えるわな…

その近辺に行って本気で店を探そうと思ったんだけど、友人に止められた。その方が良いのは
分かっていても、あの巻き寿司がもう一度食べたいよ。

 

 

革の財布

 

俺、今年の5月の誕生日に友達に貰った。
バイト先、店閉めるのが俺で、最後俺しか居なかったんだけど
急に店に入ってきて、paul smithの革の財布。
友達二人で金出して買ってくれたんだって。なきそうになった。ちょっと泣いた。

貰った云々よりも、俺がpaul smith好きってのを分かってくれて
財布が欲しかったってのを分かってくれてて、っていうか、自分に関心を向けてくれて
お金まで出してくれる友達が出来たことが嬉しかった。生きててよかったって思った。

消耗品ってのは分かってるから、ずっとは使えないと思うけど
大事に取っておこうと思う。その友達も大好きだし、ずっと大事にしていこうと思う。

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