【優しい話】『天国と地獄 – ほんのちょとした違い -』など短編10話【13】 – 心温まるちょっといい話 まとめ

【優しい話】『天国と地獄 - ほんのちょとした違い -』など短編10話【13】 - 心温まるちょっといい話 まとめ 優しい話

 

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優しい話 短編10話【13】

 

 

1

定年間近のヒステリー親父がいる。
小言がはじまるとヒートアップして
「で?どうしてこうなる?」相手が答えようとすると
「意味不明」「だからー!」「で?」「は?」「そういう意味じゃなくて!」
矢継ぎ早に言葉をおっかぶせ、
つかまると30分は終わらない。
部署の一角の一番目立つ打ち合わせコーナーで公開処刑。
私の席はそのコーナーの近くだから、まじでイライラする。

今日も若手が捕まってネチネチやられてたんだが、ひとつ気づいた。
いつもそのイビリタイムが終わる時、隣の課の毒男がいる。
コーヒー飲みにきたついでってかんじで、
さりげなく爺に話しかけて、フンフンとのんびり話しに加わって
爺の熱を冷ます。
決して爺を諭すわけでなく、若手をかばうわけでなく、話に加わるってかんじで自然。
でもきっと、意識してやってるんだと思う。

それならもっと早く来て撤収させて欲しいと思うが、きっとそれだとダメなんだろうな。
大人だなーと思った。

 

2

祖父の葬儀の帰りに、電車で痴漢みたいな目にあった。
隣の席に座っていた人が、はじめは軽く寄りかかってきてたのが、なんかだんだん深くなって、
肩に頭をこすりつけてくるし、体ごとこっちに倒してくるしで、明確な痴漢ではなかったけど
気持ち悪かった。逃げても差を詰めてくるし、反対の隣にも人がいたから、あまり逃げられないし。
でも痴漢じゃないかもしれないし…でも車両移ろうかな…なんでこんな目に…と思って泣きかけてたら、
斜め前に立っていたサラリーマン風のおじさんが、その人の膝を叩いて起こした。
その後は大丈夫だった。というか、その人が次の駅で降りていった。

おじさんが降りる駅と私が降りる駅が一緒で、降りるときに「さっきはありがとうございました」と言ったら、
「当たり前のことしただけだよ」と笑って降りていった。
ありがとう、おじさん。

 

3

コンビニでバイトしてるんだが、ここ数日ABも客としてきていた
(前から来てたのかもしれないが、110の件で顔を覚えた)
で、今日も飲み物だけ買ってくのかなと思ったら

A「兄貴(どうやら兄弟らしい)、これも」
B「あん?なんでアロンアルファ?」
A「あのばーさんちの犬小屋直そうかと」
B「なんでやねん。ばーさんに頼まれたの?」
A「いや。ちょっと見たらガタついて隙間できてたからさ。もうすぐ秋だし犬寒いんじゃないかと」
B「ああ、ばーさん一人暮らしだって言ってたもんな。でもなぁ・・・」
A「やっぱ余計なお世話って言われっかな?」
B「差し入れくれたお礼だって言えばやらせてくれんだろ。
そうじゃなくてこれ(アロンアルファ)だけじゃ無理だってこと。」
A「やっぱきついかね。これで○○(専門用語?)しようかなと思ったんだが」

んで、あれもいるこれもいると話始めたので

俺「ちょっと遠いけど、○○通りを下って2キロほどにDOITがありますよ。」
A「あ、ありがとうございます。すみませんレジ止めちゃって」
俺「いえいえ、俺も犬飼ってるんで。ぜひ直してあげてください。喜びますよ」

てことで店を出て行った。
と思ったら4時間後くらいにまた来て

A「さっきはどうも。ばーさん喜んでました。
で、お兄さんの話したらお礼3人分くれたのでよかったらどうぞw」

てわけで馬鹿でかい夏みかん2つとジャーキー(犬用)もらって今帰宅。
犬と一緒に食べてるわけだが、夏ミカンなんて何年ぶりだろう・・・
つーか、ABが良い人過ぎてちょっと気持ち悪いと思った俺はどうしようもない屑なのかもしれない。

 

4

私、ウエディングプランナーをしてて沢山の幸せのお手伝いをさせてもらったけど
忘れられない結婚式があります。
新婦は私より大分年下の10代で可愛らしい子、新郎は彼女より20歳ほど年上の優しい方でした。
年の差カップルは珍しくないけどこれが一筋縄では行かなかったのよね…。

新婦はお父様に育てられて、そのお父さんが「結婚は勝手にしろ。でも式には出ない」。
でも2人は「みんなに祝ってほしい」と。

ええ、頑張りましたよ。新婦のご実家に2人と一緒に何度も行きました。
頭も何回下げたかわかんない。
「お前は関係ない」と言われました。その通りです。でも私は2人の結婚式を2人が望むものに、
最高の1日にしたかった。それが私の仕事。

意見や愚痴がどっちも私に集まってきて正直キツかった。
面倒くさいと思ったこともある。でもある日「お前一人と話したい」と電話がかかってきたんです。
すごい怖かったよ。何を言われるんだろう?と。
でさ、約束した日に指定されたところに行ったらさ、お父さんいつもは顔も話し方も怖いんだけど、
その日はすごく大人しく小さな声で、娘さんが生まれた日の話、小学校の運動会で張り切ったら
「お父さん恥ずかしい」と言われた話、中学の頃は話し掛けてもろくに答えてくれなかったのに
娘さんが修学旅行から帰ってきた日に仕事から帰ったらテーブルにお土産の携帯ストラップが
置いてあって本当に嬉しくて今でも付けてること、
「結婚したい人がいる。」と初めて言われた日のこと…。
色々話してくれました。
「娘が本当に可愛い。娘が選んだ男に間違いはないと思ってる。でも気持ちの整理がつかない」
って。泣いたね、あれは。

最後にお父さん、恥ずかしそうに
「結婚式ってどんな服を着ればいいんだ?もう何年も服を買ってないからわからないんだ」って。
夜、娘さんに電話してその日のことを話したら娘も新郎も号泣。私も号泣w
数日後、娘と私とお父さんとで服を見に行ったよ。

で、結婚式は無事に開かれて大成功!かと思ったんだけど、
ブーケトスで娘がブーケを投げない。
??? なにこっち向いてきょろきょろしてるの?と思ってたら娘、すたすたと歩いてきて
私に手渡しでブーケをくれたの。まわりの人たちは拍手。
どうやらお2人とお父さんは結婚式に至るまでのことや私のことを参列者に話してたみたい。

もう・・・本当にあれは嬉しかった。涙が止まらなかった。
今でもあの時の体の震えと彼女の笑顔が忘れられない。
正直、出過ぎた真似なんじゃないか?とか自分のやってることは正しいのか?とか
考えてしまうこともあったんだけど、
たくさんの人が「いい結婚式だった」と言ってくれたから良いや。もうそれだけでいい。

今年、2人から「赤ちゃん生まれました」の年賀状が届いたよ。
赤ちゃんを抱いたデレデレのお父様の写真付きで。

 

5

今日の出来事。
郵便局で小包を出すために並んでたんだが、窓口が一つしか開いてなくて
結構混んでた。
あと一人で私の番となったときにもう一つの窓口を職員が空けた。
職員に促されて私がそちらに行くより先に、私の後ろに並んでた
若い女がすっとその窓口に。
まあ、急いでなかったんでちょっとムカついたものの、まあいいか、
と思ったんだが、全く知らないおじさんがなんでかキレた。
その女のところにスタスタといったかと思うと私を指差しつつ
「ちょっと待て!あんたより先にあの子のほうが並んでたやろ!」
と女を注意。
職員にも私を指差しつつ
「あんたもや!あの子のが先に並んでたの知ってたやろ!
なんでコイツを先にした!」
と怒る。怒る。
真っ青になって私に謝る女&職員一同。
注目されて真っ赤になりながらおじさんにお礼を言って小包を出しました。
注意してくれたは嬉しかったけど、指差しは恥ずかしいよ…。

 

6

天国と地獄~ほんのちょとした違い~

ある男が神様に会った
日頃から気になっていたことを男は尋ねた
「神様、本当に天国はあるのですか?
地獄なんて存在するのですか?」

神様は微笑んだ
「こちらについて来るがよい。地獄を見せよう」

最初に入った部屋が「地獄」だった
人間たちが料理の入った大きな鍋を囲んで座っていた
それはそれはおいしそうな料理だった
でも、全員がひどくおなかをすかせていた
なにやら生きる希望もすっかり失っているように見える

みな、スプーンを鍋に入れては料理を口に運ぼうとするのだが
スプーンの柄が長すぎて、料理は口に届かない
空腹で、目の前にはおいしそうな料理
しかし空腹を満たすことはできない
その苦しみたるや
まさに筆舌に尽くしたがたいもの

ひとびとの苦しみようはひどいものだった
男は暗然たる気持ちで部屋を出た

「さて、今度は天国をみるがよい」
次の部屋が「天国」だった

だが、部屋の様子は「地獄」となにも変わらない
人間たちが料理の入った大きな鍋を囲んで座っていた
柄の長いスプーンもあった
違うのはそこにいる人間たちが満ち足りていること
お腹も充分に満たされ
人々の顔は幸せに輝き・・・

男は神様に尋(き)いた
おなじ鍋 同じスプーン
なのに  なぜここにいる人たちはこんなに幸せで
さっきの人たちはあんなに惨めなのでしょう?
与えられた環境や 条件はまったくおなじだというのに・・・

神様は微笑んだ
「とても簡単なことだ」
ここにいる者たちは
互いに食べさせあうことを  学んだのだ
それだけの違いなのだ

 

7

ある日のバイトで、疎遠だった先輩と偶然同じ仕事になった。
仕事慣れしている先輩に少しでも追い付こうと俺なりに必死だった。
ある社員さんが、自分たちの担当の仕事を手伝ってくれたのでお礼にジュースをおごってくれると先輩に言う。
俺は少し離れてそのやり取りを見ていた。
その後先輩に「さっきお礼言ったか?」と尋ねられて、先輩の手の中を見ると、そこには200円分の硬貨があった。
俺は先輩と比べて動作は遅いし、仕事の段取りもよくわからない。
そんな俺が自分も貰えるという前提で社員さんに「ありがとうございます」と言ったら、図々しくて失礼に当たるような気がしたんで、俺の分は無いと考えていたんだ。
先輩に「俺だけにあげるなんて事出来るわけないだろ?お前が要らないって言ってもちゃんと二人分くれたんだから後でお礼言っとけよ」
と言われた俺はその後、さっきと同じ場所にいた社員さんにうやうやしくお礼を言った。
社員さんは笑顔で返事してくれて、俺はちょっとだけ元気になった気がした。

 

8

いい人やさしい人の話かどうかわからないけれど・・ふと思い出がよみがえったので。

幼稚園の頃、同級生に足の不自由な子が居た。
その子がいつもヒョコヒョコ歩くのを幼稚園のみんなが笑ってた。
私もその子のことを「変な歩き方するなー。」って子どもながら思っていたけれど、
小心だったからか特に口に出すこともなく、組も違うのでただスルーしてただけだった。

その後ある日、近所の自然公園に家族で出かけたときにその子の家族と鉢合わせた。
普段から私は特別その子と親しくしていたわけでもなく、会ってしまった時もなんだか気まずくて
その場から離れて一人で勝手に遊んでた。
後で、親の元に戻ると「あの子が○○(私の名前)はいつも優しくしてくれる。ありがとう。」って言ってたよ。と言われた。
「えっ?どうして?私、優しくなんか・・。いつもあの子と一緒にいないし・・」と思っていたのだけれど、親が言うには
「みんなは私のことを笑うけれど○○は笑わない。」というようなことを言っていたらしい。
その時にすごく自分のことが恥ずかしくなった。
自分はからかいもしなかったけれど、特別優しくした覚えもないのに・・。
あの子がとても大人に感じた。
その後、特別仲良くなったわけでもなく、彼女がどうしているのかも分からないけれど
私の記憶の中でその時の事が鮮明に残ってる。
それ以来、人をからかうのはとても恥ずかしいことだと心に刻みこまれている。

 

9

折角の休みなんで、昨日友人とツーリングに行ってきた。
その友人なんだが、まず乗ってるバイクがケレンの効いた外見で国内では余り出回ってない車種、
乗ってる本人も派手なカラーリングのプロテクターのついたツナギ。
ヒーローというコンセプトでコーディネートしたらしいが、俺が見ても変身しそうな勢いだ。

そんなもんだから、観光地で子供から大人気。写真をせがまれるのも少なくない。
そのうちの一人との会話。
子供「おじさんは仮面らいだーですか?」
友人「うん、実はおじさん仮面ライダーなんだ。仮面ライダージェントルって言います」
子供「本当!?変身できる!?」
友人「出来るけど、怪人がいないと変身したらダメな決まりなんだ、ごめんね」
子供「そっかー・・・ディケイドと会ったことありますか?」
友人「彼は関東担当であまり顔を合わせないけど、先月会いましたよ」
子供「おじさんはテレビに出ないの?」
友人「まだおじさんの番は回ってこないね。そのうち来るかもしれないから、その時はぜひ観てね」
子供「うん!絶対観る!」

親御さんからは有難う有難うとこちらが恐縮するくらいお礼言われた。
俺は後ろでニヤニヤしっぱなしだった。

 

10

朝、いつも乗っているバスに乗り、最後部座席に座って
景色を眺めていると視線の先に読書をしている眼鏡のお兄さんが居た。
ずっと顔を下に向けたまま動かないので、
集中しているなあと思いながら、また外を眺めていた。

いくつか停留所を過ぎて、座れない人が出始め、
立っている人が5~6人くらいになった。
そんな中、次の停留所のアナウンスが流れた。
すると、読書をしていたお兄さんが突然顔を上げて、
バスの中を後ろから前までサッと眺めた。
私は「本に集中しすぎて、乗り過ごしちゃったのかな?」と
思いながら観察していると、また読書に戻り、
「なんだ違ったか」と思いつつも、
することもないのでお兄さんをなんとなしに眺めていた。

次の停留所がいよいよ近づいてきて、再びアナウンスが流れた時に、
またお兄さんは突然顔を上げて窓の外をサッと眺めて、
本をパタンととじてバッグにしまった。
「降りるのかな」とボーッと眺めているとバスが停まった。

お兄さんは席から立ちあがり、今ままで座っていた席の側に立ち、
そのまま窓側に向いてつり革に掴まった。
「降りないの??」と不思議に思っていると、
お兄さんが立ったのと同時くらいに停留所から一人のお婆さんが乗ってきた。

当然空いている席はそこしかないので、お婆さんはそこに座り、
お兄さんが席を空けたことを知ってか知らずか
「こんにちは」と座ったまま会釈した。
お兄さんもにっこり笑って「こんにちは」と軽く会釈して、
バッグから本を取り出してまた読み始めた。

お兄さんは、本に集中しながらもバスの混雑具合を感じていて、
その確認をして、さらにお婆さんが乗ってくることを見て、
席を空けたのだ。そして、お婆さんはなんの気遣いをすることもなく、
空いている席に座ったわけ。

かっこええ・・・!
何事もなかったかのようにクールに本を
読みつづける姿がなおさら私を興奮させた。
惚れたぜ・・・。

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