【優しい話】『紳士の夜明け』など短編10話【17】 – 心温まるちょっといい話 まとめ

【優しい話】『紳士の夜明け』など短編10話【17】 - 心温まるちょっといい話 まとめ 優しい話

 

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優しい話 短編10話【17】

 

 

1

自分自身の話で申し訳ない、ふと大昔の話を思い出したもので

もうかれこれ20年以上前の話
音声で時間を知らせてくれると言う(当時としては)面白機能時計が発売された
新し物好きだった私(当時はガキンチョ)は「お、これなら目が見えなくなっちゃった婆ちゃんにも使えるじゃんオモシロー」
とか軽い気持ちで、当時我が家に滞在していた婆ちゃんにプレゼントした

そしたら、婆ちゃんに、もうビックリするくらいの勢いで感謝された
随分経ってから婆ちゃんと同居してた叔母さんと会った時にもその事で随分感謝されてしまった
さっきたまたまお袋(婆ちゃんの娘)と電話した際、そいやこんな話思い出したよ~、お袋は覚えてないかも~
なんて軽く振ったら「あれはホントお婆ちゃん感謝してたよ。私には全く思いつかないプレゼントだった」等と
賞賛めいた事を言われてしまった

別に、自分が良い事したって誇りたいわけじゃないんだけど
ちょっとした心配りで、何十年後にほっこりした気分になったり出来る事もあるんだなぁ、と思った次第

 

2

小学2年のとき、校外学習で迷子になり(ちなみに自分は今でも重度の方向音痴)
人見知りが激しかったため道も聞けず困っていたら、おばあさんが声をかけてくれて、学校までつれてってくれた
学校でいじめられてたこともあり人に優しくされるなんて久しぶりだったから、すごく嬉しくて今でも感謝してる

 

3

高校の頃の話だけど、朝の満員電車の中で、
俺は長い座席の真ん中あたりに座って本を読んでいた。
始発駅から乗るので、大抵座れるのだ。
途中から電車が混みはじめたが、地方のことで、
もちろん東京の朝のラッシュにはほど遠い。
それでも、新聞広げて読むようなスペースはない。

俺の右側、二三人離れたところに座っていたOLさんが、
目の前のお爺さんに席を譲ろうと声をかけた。
するとお爺さん、笑顔でOLさんを制して、
「女性を立たせて私が座るわけにはいきませんよ」
と言ったのだ。
お爺さん、格好良かった。臭い台詞かもしれないけど。
俺はどちらかと言うと格好悪かった。

それまで目の前に高齢者が来ても
声をかけて席を譲る勇気が出なかったのだが、
(黙って立ったことは何度かあった)
あのお爺さんに近付きたいと思っている。
少なくとも、浅ましく空席を狙う、なんてことは絶対できない。

 

4

高校生の時の話。
毎朝電車に乗ってる子で気になる子がいた。
時々帰りの電車でも一緒になるが、自分の方が早く降り、いつも「次の駅なのかな、その次かな?」と何げに思っていた。
いつも本を読んでいて、とても可愛らしい子だった。

ある時、帰りの電車で足の悪そうなおじいさんがいて、座っていた彼女が席を譲ろうとしてた。
しかし、このおじいさんが意外に頑固者でなかなか言うことを聞かなかった。
彼女が「私次の駅なんです。ほんとにどうぞ」と言ったのでようやくおじいさんは座った。
だがおかしい。いつも俺が先に下りるんだから、そんなはずはないと思って俺も一緒に降りた。

そうすると案の定彼女は電車をやりすごし、次の電車を15分も待っていた。
俺は一瞬で恋に落ちて、話かけた。
「大変だったね。」って声をかけると、「おじいさん本当に足が痛そうだったから」って笑って答えた。
結局付き合うとかそんなことはなかったけど、世の中捨てたもんじゃないなと思った。
彼女はなかなかの美人で彼女はおそらく誰からもこれから優しくされるだろう。
ただ、普通は見過ごしてしまいそうな人への優しさを見てしまうと余計に神々しく思えた。

これだけは言える。
彼女を妻に出来る人は幸せものであり、きっと彼女自身も幸せな生活を送っていると信じる。

 

5

今年の二月のこと。
面倒くさがりの私は、錆付きかけてた自転車を修理に出さずに使っていた。
案の定、ある日突然、鍵が開かなくなった。
大学ももう冬休みだったため、友人・知人に頼るのも気が引けて
後輪を持ち上げながら自転車屋へ運ぼうとした。
が。予想以上に重くて
寒い中、半泣きになりながら休み休み歩いた。

200メートルほど進んだときだった。
「壊れちゃったんですか?」と、後ろから声がした。
振り返ると、マスクをした30~40歳くらいの女性が心配そうに立っていた。
「鍵が開かなくなっちゃって…」と言うと、
「手伝いますよ^^*」とにっこり笑ってくれた。
寒かったし、重いし、ありがたかったけど「大丈夫です」と、断った。
けれどその女性は「いいからいいから」と、
なんと重いほうの後輪を持ってくれた。
(私がそっちを持つ、と言っても
「ここまで運んで疲れてるでしょ?私が疲れたら代わって^^」と…)

結局、さらに300メートルほど先の自転車屋さんまで運んでくれた。
かなり重かっただろうし、寒かったのに
申し訳なくて泣きそうな私に
「私、この辺に引っ越してきたばかりなのよ。自転車屋さんここにあるのね」
と、気まで使っていただいた。

お名前や住んでいるところを伺おうと思ったけれど、
「大したことしてないから」と、ささっと帰ってしまわれた。
今思えば、もっとちゃんと聞けばきちんと御礼ができたかもしれない…。
マスクをしていたため顔も分からないし、
今となってはお礼のしようも無いけど…
あの人みたいに、人に優しくできる人間になりたいと思った出来事でした。

 

6

私は昔からどういう訳か転びやすい。普段から足元が疎かなのか、
大抵は注意して歩いてるつもりだけど、ちょっと考え事とかすると良く蹴躓く。

高校の頃、階段を上ってる時、段に足を乗せたと思ったのに乗ってなくて、
バランス崩して後ろに倒れそうになった。
「ああ、またやっちまったー」とか変に冷静に考えてたら、
「おい、伊藤ー」「あいよ」という会話が耳に飛び込んできて、次の瞬間痛くない衝撃が来た。

どうも誰かが受け止めてくれた様で、振り返ると細身の男子が私を受け止め、
その細身の男子を大柄な男子が支えてた。靴と刺繍の色から先輩の様だった。
その後、落として散乱した荷物を拾ってくれて、「気をつけなよ」とだけ言って行ってしまった。

テンパって「すいませんすいません」の連呼だったけど、あの咄嗟の状況で
それぞれの立ち位置でよく連携取れたなあと感謝しきりだった。

というのを新年早々駅のホームで躓いて思い出した。
そして差し出される手を見て、つくづく私は周りの人に助けられてるなあと実感した。

 

7

クリスマスが近づいたある日、リビングに息子(9)が書いたサンタへの手紙が置いてあった。
「サンタさんへ ベイブレードの○○のアタックタイプ下さい」と書かれていた。

その日、仕事を抜け出して早速近所のトイザへ行ってみると、なんと売り切れ。
人気商品か?焦ったオイラは、他の店を次々と探しまくったが全て売り切れだった。
やっちまった感が漂ったが藁をもつかむ気持ちで、今自分が思いつく最後の店に行った。

あったあった。しかも1個だけ。即行買って綺麗に包んでもらっている時にその二人がやってきた。
杖をついた婆ちゃん(70くらい)とその孫らしき男の子(6くらい)。
目に涙を溜め、今にも泣き出しそうな男の子が早足に店員に近づき
「ベイブレードの○○のアタックタイプありますか?」と言った。同じ物だ。
店員はオイラと一瞬目を合わせた後に、申し訳なさそうに「スミマセン売り切れました…」
と呟くように答えると、男の子の目からボロボロと涙がこぼれ落ち、声は出さないように堪えている。
その姿を見ていた婆ちゃんも涙目になり「ここにもないのかい…」と呟いた。
不自由な足で孫と一緒に探し回ったのが容易に想像できた。

もう可哀相で見ていられなくてオイラのブツを譲ってやった。
男の子は涙を拭いて笑顔で「え?いいの?いいの?ありがとう!」と現金なもの。
婆ちゃんは手を合わせてお経のように「ありがとうありがとうありがとう」と言っている。
顔は皺と涙でグチャグチャ。何故か店員まで泣いてやがる。

明日は朝一で隣町のショッピングセンターまで行って探さなきゃなと思いつつ帰宅。
息子が寝た後にこの話を妻にしたら「あら、買ってあるわよバカね」だって。
軽く殺意が湧いたが「でもいいことしたわね」って言われてビールが一本出てきた。

 

8

国際寮に住んでいたときの昔話。
宗教の話をしてて
「日本には何処にでも神様がいるんだよ」
「八百万って言うのは”いっぱい”って意味」
「中には貧乏の神なんてのもいるんだー」などとつたない英語で話した事がある。

相手は呆れたというか信じられないみたいな感じになった。
何しろあちらの神様(GOD)はまったき善なので、
悪や不幸といった類のものを司る神様というのがイマイチ想像出来なかったらしい。

そんで相手が「ここのトイレにも神様がいるってのかいHAHAHA」みたいな事を言ったわけ。
(日本語で神と紙と髪が同じ音だよーという話がその前に出ていた)

当時使用していたお世辞にも綺麗とはいえないトイレで。
紙は流せない(詰まる)し、余裕で汚物が溜まる。
「トイレの神様はとても徳の高い神様だ」と言ったら冗談だと思ったらしく爆笑。

「神様が集まってそれぞれが司る場所を決めた時、皆汚いからと嫌がった。
でもトイレってなくてはならないものだよね?なければ困るよね?
だからその神様は進んでその役割を引き受けたんだよ」
「トイレを綺麗にする人は、その神様がちゃんと見てて運を授けてくれるんだよ」
(元ネタ:にほん昔話)

皆しーんとして、えらい感激された。
感心というか、思っても見ないことを言われた!と。
その後も色々日本の神話とかについて聞かれる事が増えて、付け焼刃で勉強しなおした。
古事記とか一通り読んでて良かったなーと思ったよ。

それからしばらくして、うちの寮のトイレは今までと比べ物にならないくらい綺麗になった
というオチw

 

9

去年から出向で来てる新しい配車係。
見た目は高校生で通じる20代半ば。これがまたしっかりした爽やかお兄さん。

トラックの運ちゃんなんてみんな大なり小なり似たようなもので、
うちも例外なく強面で荒っぽく気も短めな人ばかり。根は良い人達なんだけど。
係のお兄さんはいつもニコニコ、敬語で丁寧、柔らかい物腰で誰が接しても好印象。
この業界でそんな対応をされ、運ちゃん達は戸惑いつつも、次第に満更でもない様子で
日に日に笑顔が増えていった。
扱いにくいおっさん連中で、出荷時間が前倒しになっても「予定の時間とちゃうやろが」とか言って
出ようとしなかったり、急な集荷ややむをえない残業も嫌がり(まぁ当然だが)、まあ青襟特有の無骨な職場だった。

しかし彼が来るようになってからは、それまで「おう」とか「なんや」とかが主な単語だったのに、
挨拶もするしお礼も言う、問題行動も起こさなくなる、欠勤や遅刻が劇的に減る等々…。
昨今の時代劇ブームの影響か、一部が「若」と呼びだしたらあっという間に広がって、
お兄さんもお兄さんで「各々方、出陣です。本日もご安全に」とか言っちゃう。

人は鑑って言葉を実体験したよ。職場の雰囲気や風紀は目に見えて改善するし、
彼の電話対応は他の事務所にも影響を与え、窓口対応の改善に一役買っている様子。
あの若さであの人柄と言うかカリスマは天性のものを感じる。

 

10

うちの地元の駅前にはデパートがあって、電車を使う時にはいつもそこの駐輪場を利用してる。
ただ、そこは閉店時間(9時)を過ぎると、2つある出入口に腰くらいの高さのチェーンが掛けられてしまうので、遅くなる日は基本的に使わないようにしていた。

しかし、早く帰るつもりだったある日に予想外のアクシデントに見舞われてしまった私はかなり遅い時間に駅に到着してしまい、半ば諦めながらも神の気まぐれか何かによる今日に限った奇跡を祈ったのだけれど、駐輪場には案の定チェーンが。
それでも自転車がなければ自宅まではかなりの距離があるので、なんとか駐輪場から出そうと必死で愛車(重いママチャリ)を持ち上げてガチャガチャと悪戦苦闘していると、眼の前にスッと人影が表れた。
あまりにも唐突だったので思わず仰け反りそうになったが、近くにあった自動販売機の明かりに照らし出されたのは、まだ少しあどけなさの残る高校生くらいの男の子の顔だった。
彼は何も言わずに私の自転車をひょいと持ち上げると、いとも簡単にそれをチェーンの外へと搬出。
僅か一瞬の出来事で、ふう、と彼が一息つくまでのその様子をただポカーンと見つめていると、私の視線に気付いたのか、彼は少し慌てながら「あ…き、気をつけて帰ってくださいね」と、ぎこちなくも爽やかにハニカミながら言って、小走りでどこかに行ってしまった。

紳士の夜明けと言うのか、初々しさの中にも優しげな強さがあって、キュンとしてしまった。
可愛らしい小動物が一瞬だけすごく逞しくなったような、そんな感覚。
神様、こういう気まぐれ、大歓迎です。

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