武君様
武君様俺の住む集落には、『武君(たけぎみ)様』という神様が祀られている。
何でも、この集落を野武士などから守り命を落とした青年が神と成り、今もこの集落を守っているらしい。
この『武君様』を祀っている祠のようなものが、村の山奥にある。
夏と冬の年に二度ある祭りの時にしか、子供は入ってはいけない。
しかし俺は小学生の時、同級生の友達(違う町内の子)と無断で入ったことがある。
そこで、俺は凄いものを見た…。
祠には木で出来た小さくて古い社のようなものがあり、その中に何があるかは村の極一部の人しか知らない。
俺の父や祖父さんも知らなかった。
その話を友達にすると「見てみたい!」と言い出した。
俺は村の大人に怒られるから止めた方が良いと思ったが、自分も一度見てみたかったので同意した。
社には錠がしてあったが、古く錆びていたので簡単に外せた。
扉が開くと同時に中から異臭が漂い、茶色に変色した布に包まれた物が出て来た。
俺と友達は異臭で気分が悪くなり、その場でゲエゲエと吐いた。
そして、異臭を放っている茶色の塊の変色した布を剥がした。
中からは黒茶色の小さなミイラが出て来た…。
次の日、祠を管理していた集落の長が逮捕された。
どうやら、高校生の娘に子供が出来てしまったらしい。
堕ろさせるはずだったのだが既に遅く、産ませてしまったらしい。
そして、この不名誉を村人から隠すためにこの子を殺し、遺体を社の中に隠したそうだ。
この一件以来、友達は扉を開けるのが怖くなったそうだ。
俺もたまに、あのミイラの夢を見る。
補足
社の中には『武君様』を模して作った仏像があったらしいのだが、長はそれを捨ててしまったらしい。
そのせいか、これを「武君様の祟り」と呼ぶ人も少なくなかった。
長の高校生の娘は、父に子を奪われたショックで発狂してしまい、長は家の娘の部屋に監禁していた。
娘はその後、施設で治療し順調に回復。
長の奥さん共々、今何処に居るかは誰も知らない。
長は今も刑務所に居るらしいが、定かではない。
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