『 家を守る人形と幽霊』『手の感覚』など3話収録

『 家を守る人形と幽霊』『手の感覚』など3話収録 不思議体験

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おもちゃの消防車を探す幽霊

知っている方も多いかと思いますが、書き込みします。
これは毎日新聞の記者さんが実際に聞き、掲載したお話です。

ある日の雨の降る夜、会社から家路を急いでいたAさんが田んぼのあぜ道で何かを探している人に気付きました。

「どうしました?」

Aさんが問い掛けるとその男性は消え入りそうな声でこう言いました。

「長男に買ってきた消防車のオモチャが見つからないんです。」
「そうですか・・・一緒に探してあげましょう。」

でも、どんなに探しても全然見つかりません。
二人で泥だらけになりながら、雨の中必死で探しました。

「無いですねぇ・・・。」

と何気なく男性の横顔を見たAさんはおかしな感覚を覚えました。

「・・・あれ?、この人どっかで見た様な・・・。」

でも、そんな気にも留めませんでした。
「無いなぁ・・・困ったなぁ・・・。」そう言う男性を慰め、ほんのちょっと下を向いた時に、男性の気配が無くなりました。

「あれ?」周りをいくら見渡しても男性の姿は見えません。
「おっかしいなぁ・・・」不思議と怖さも無く、泥だらけの姿で家に帰りました。
その泥だらけの姿を見た母親から「どうしたの?」と尋ねられたAさんは、今あった事を母親に話ました。

みるみる内に母親の顔色が変わって行きます。

「どうしたん?」

そう言うAさんの前に母親は古いアルバムを持って来ました。

「その男の人って・・・この人かい?」

Aさんがアルバムを見ると、そこには幼いAさんを抱いたさっきの男性が写っていました。

「あ・・・・・。」

Aさんは言葉を失いました。
母親はAさんが小さかった頃他界した父親の話をしてくれました。
おもちゃの消防車を買って帰る途中で車にはねられる事故で他界した事も・・・。

「あんたが一緒に探してくれて良かった。」

と母親は号泣したそうです。
以上がそのお話です。

これは全てウソの話です。
毎日新聞の記者もウソだと知って掲載したそうです。
その記者はこの文章を、こうくくっています。

「これはウソの話ですが、僕はこのおもちゃの消防車を探す幽霊が大好きです。」

 

 家を守る人形と幽霊

これは私が以前に住んでいた家で起こった話です。
その家は祖父が建てた家で、1階を祖父母が使用し、2階を私や兄、姉、両親が使用していました。2階には3部屋があったのですが、私が小学3年生ぐらいの頃でしょうか。

突然、自分が使用していた真ん中の部屋の空気があまり良くないと感じ始めました。しかし他に空いている部屋も無くその部屋を使うしかなかったので、何が原因なのか調べる意味で両親と掃除しながら整理をしてみました。
すると押入れの奥から、市松人形?のような物が2体出てきました。

ですがその人形に、両親はともかく祖父母にも見覚えがありませんでした。
家は祖父が建てたものなので、以前に住んでいた誰かの忘れた物、ということはありえません。とりあえずその人形は別の部屋に置いてもらった所、部屋にあった嫌な空気も何だかすっきりした感じがしました。

それからは特に嫌な感じもなく過ごしていたのですが…しばらくすると、家族が金縛りにあい、その人形にそっくりな人が出たと言い始めました。

姉は、真夜中にトイレへ行こうとしたら綺麗な着物を着た女性が手招きしてきた、と言うのです。
詳しく聞いてみると、なんと兄も同じ着物を着た女性を目撃していました。ただ兄も姉も揃って、特に怖いとは感じなかった、逆に凄く綺麗でこの時代にはいないような品のある感じがした。ただ足がない、と言いました。足がないなんて幽霊じゃん!と思った私は、怖くて仕方ありませんでした。

人形が原因だと怪しんだ私は、両親に供養してもらおうと願い出るも

「下手にそういう事をしてしまうとこの家に帰ってくるよ。逆にこの家を守ってくれてるんだよきっと。」

と、まさかの反対をうけました。
そこで私は家族全員に、人形を見て気持ち悪いと思わないのか、人形そっくりの幽霊が出てるなんて怖くないのか、と聞くと…
みんな揃って「綺麗だし、置いておくべきだよ」と言うんです。

どうして私だけ、こんなにもその人形を見ると気持ち悪く感じるのか不安でした。
ですが私は元々、怖い話などが大の苦手なのでそう感じるだけなのかな…と思い、家族が言うように人形は家を守ってくれていると信じることにして、あまり気にしないようにしました。

そんな状態で半年ぐらい経った頃でしょうか。
私がいつものように部屋で過ごしていると、突然気分が悪くなってきました。風邪でもひいたかなと思っていたのですが、安静にしていたら金縛りにあいました。そして夢?をみました。

その内容は今でもはっきり覚えています。
まるで戦国時代に迷い込んだような情景で、周りは火で包まれ人々が逃げ回っていました。建物は燃え、悲鳴のような人の声が飛び交っていました。するとそこに、あの人形そっくりの女性が現れました。その女性は本当に美しく、火が燃え盛っているのにその人だけ別格に見えるのです。しかし女性の近くで子を連れた女性が転んでしまい、それを必死に助けようとしたところ、建物が崩れ落ちて下敷きになってしまいました。

そこで急に夢が覚めたというか、現実に戻され、横を見ると顔は見えないのですが着物を着た女性のような人が座っていました。
そして私に

「私は守りたかっただけ。だからそっとしておいて。」

と言い、金縛りが解けました。
不思議にも怖い感覚はありませんでした。
そして家族が人形と幽霊を怖がっていなかった理由がわかった、そんな気がしました。結局、あの女性と人形との関係や、どうして家に居たのかなどは分かりません。ですがきっと、彼女は守れなかったからこそ、次は絶対に何かを守ろうとしてくれたのではと思っています。

今はもう引越して違う家に住んでいますが、あの人形がどうなったのか私にはわかりません。
きっとあの家を、今でも守ってくれているのかもしれません。

 

手の感覚

これはおおよそ20年程昔の話になるでしょうか。

大学2年の時。私は他大学の、テニスサークルという名目の飲みサークルへ所属していました。夏合宿ということで、名前が知れているとある海岸近くの民宿にみんなで行ったのです。それぞれにお目当ての人もいたりなんかして、青春の楽しい時間を過ごすのが目的でした。泊った民宿から海岸まで、徒歩で行ける距離にあります。2日目か3日目か忘れましたが、女子だけが海で遊んでいた時に事件は起こりました。

浮き輪を中心にキャッキャッしていたのですが…本当は遊んではいけない区域だったようで気づいた時には流されており、160cm以上ある私の身長ですらどう頑張っても海底に足がつかない沖まで来ていました。浮き輪につかまっていた女子は5人いたと思います。

「どうする、どうする」
「やばいんじゃない…」

焦りながら陸を確認すると、サークルの人が見ていたようでしたが、流されているとは思っていない感じです。仕方なく少し泳ぎに覚えがある私が声をかけて浮き輪を脇に抱え

「みんな、しがみつかないで。自然に体は浮くから。」

と声を掛け、離岸流だと思われる流れから外れるべく、横に泳ぎ出します。
丁度その時、足に何かが触りました。感覚的には人間の手でした。

それから腰に手が上がってきて、両手で強くひっぱられているような、しがみつかれているような感じがしました。私の隣には泳げない子がいたので、流され始めた直後に大騒ぎをしていました。
心が曲がっていた私は「こんな時も可愛い自分アピールか」と思い腹が立っていた件があったので、その彼女がしがみついていると思い

「私にしがみつかないで。しがみつくと一緒に沈んじゃうんだからね。」

と言い放ちました。
その後、必死に横へ移動させていると次第にその感覚はなくなり、無事流れから抜けだすことが出来、陸を目指しました。

やっとのことで無事陸へ到着してから、ふと思いました。あの状況で、誰かの手が私の足や腰に触れるわけがないのではないか。私が怒鳴りつけ気味に声をかけた隣の子だけでなく、全員が必死になって浮き輪にしがみついていた状況です。

冷静に思い返して、ゾッと鳥肌が立ちました。
あれは何だったんだろう。もしかして前日のお酒が残っていて、何かの刺激をそんな錯覚に感じたのでしょうか。確かに人の手の感覚は残っていて、筋肉痛とは違う痛みが掴まれた部分に残っていました。

それからしばらくして、私たちが流された海岸で小学生と親御さんの死亡事故がありました。

「私たちが流された所だよね」
「危ない所だったんだね」

と話の種になりましたが、ニュースや新聞によると以前から同様の事故が何度かあり、遊泳禁止の看板があるけれど皆守らないことなどが紹介されていました。

「看板があるって言っても、横から海を見ながら斜めにくる人もいるんだから、私達みたいに気が付かない人もいるよ」

と思わず毒づいた記憶があります。
何はともあれ、私たちは無事に生きています。
サークル仲間からはとても感謝されましたが、とても不思議な経験でした。

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