【山にまつわる怖い話】『ご先祖様の助け』など 全5話|洒落怖名作まとめ – 山編【48】

【山にまつわる怖い話】『ご先祖様の助け』など 全5話|【48】洒落怖名作 - 短編まとめ 山系

 

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山にまつわる怖い話【48】全5話

 

 

穂高の稜線を歩いていると、下の方に重たげな雲が湧いてきた。
俺達の所まで雲は届かず、雲の上に顔を出した稜線を歩いている格好だ。

何か聞こえる。
金属音、ピーン、とかキーンとか、ジジジ・・そんな音。
足元を見る、雲は厚みと密度を増している。
間違いなく雷が来る。
落雷は下にだけ行くとは限らない。
そして、手には金属のピッケルを握り、テントのポール、
ペグ(テント固定用の金具)、食器といった金属類がザックに詰まっている。

先頭を歩いていた俺は、全員に身体から外せる限りの金属を外して
稜線に一まとめにするよう指示し、できるだけそこから離れた。
周りでも他の登山者があたふたしている。
しばらくするうち、雲を集めた気流が変わったのか、雲は薄くなり始め
俺達は再び荷物を身に着け、歩き始めた。

落雷事故もなく、これといった悲劇が起こったわけでもないがなかなか怖かった。

 

みの子

自分が中一の頃の話です。

自分はよく山の近くに住んでいる祖父母と共に登山をしていました。
その日も祖父母と共にわらびを取りに、登山をしにいきました。

自分はこの山に慣れていたので、いつも祖父母と手分けして別々の場所でわらびを取っていました。
スーパーの袋いっぱいにわらびを取った頃くらいでしょうか。
そろそろ戻ろうか・・・そう思ったときでした。
この間(三日前)来た時にはなかったのに新しく道みたいなのができている。
すげえ!この前まで無かったのに!好奇心に負けて自分は道を進んでいきました。

その道を進み始めて10分くらい経ったでしょうか。自分はあることに気づきました。
おかしい。本来なら聞こえてくるはずの小鳥のさえずりや虫の音、樹木の揺れる音すら聞こえない。
なんだか恐ろしくなってきた自分は、道を引き返そうと思いました。と、その時でした。
赤い着物を着た女性が道の先に立っている。
ヤバい!本能的にそう思った自分は走って引き返そうと後ろに振り返りました。
唖然としました。振り返ったら目の前に先ほどの女性が立っているのです。
美しく整った顔立ち、ギラギラと光った目。美しいものの、人間ではないといった印象を受けました。
その女性は自分の顎を指で軽く上げ、目を覗き込んできました。もう恐怖の絶頂です。ガクブルです。
どのくらい経ったでしょうか。その女性は残念そうな顔をして自分の頭を撫で、こう言いました。
「同胞は喰えぬ・・・」と。「喰う」という言葉にビビった自分は、ダッシュで道を戻りました。一度振り返ったみたのですが、その女性はもういませんでした。

その後もとの道に戻ってこれた自分は、祖父母に今まで起きた事を全て話しました。
祖父母は驚いて「○○(自分の名前)は主に会ったのか!?」と自分に聞いてきました。
祖父母の話よると、この山には古くから山の主が住んでいて、時折山に来た子どもをさらっては喰っていたそうです(子どもだけらしい)。
祖父母は話を全て自分に話した後、祖父がポツリと「○○はみ(何のことなのかわからなかった)の子だから助かったのかもなあ。」と言っていたのが今でも心に残っています。

ちなみにもうその道はなくなっていました。「みの子」ってなんだよじっちゃん・・・

 

ひいばあちゃんの形見

5日前、父と二人で山菜採りに行った。
目的地の近くの山中に旧炭坑街の廃墟があるのだが、中でも旧病院跡の建物は『出る』と噂されているそうだ。
父は前日から、「心霊スポットを通過しないといけない」「通るとプレッシャーを感じる」などと言っていた。

絶好の天気に恵まれた当日、どう考えても事故を起こさないような直線道路で
ベテランの父が事故を起こしそうになった。
対向車線に飛び出して、正面から来ていたダンプと衝突しそうになる。
すんでのところでハンドルを切って、ことなきを得たが親子そろって血の気が引いた。

間もなく肝心の病院前を通過したが、何も起こらず沢山の山菜がとれた。
帰宅して、知り合いの葬儀に参列してきた母に事故りそうになった話をしたら、「それ何時頃?」と訊かれた。
「十時半過ぎ」と答えると、切れた数珠を見せられた。
「丁度その頃切れたのよ」
その数珠は、父とおれを可愛がってくれていたひいばあちゃんの形見の品だった。

双眼鏡から見える景色

父から聞いた話。

私の父は、昔から山登りが好きで、
大学生の時には、サークル活動とは別に
一人でも登山していたらしいです。
ある秋の日、父はあまり高くない地元の山に
散歩程度の気持ちで、出かけたそうです。

ふもとから一時間もかからずに頂上につき、
ベンチに腰を下ろして、いつものように双眼鏡を取り出し、
ふもとの景色を眺めようとしたそうです。

しかし、双眼鏡を通して見えたものは、
自分達の住む田舎町ではなく、どう見ても西洋の町並みでした。
おかしい、と思って、双眼鏡から目を離してふもとを覗くと、
今度はいつも通りの町並みが見え、
もう一度双眼鏡を覗くとまた西洋の町が見えたそうです。
結局何度やってもそれは同じことで、
2時間後、ついに父も観念して山をおりたそうです。

今もあれがなんだったのか気になって仕方がない、と父は言っていました。

 

ご先祖様の助け

今はもう歳をとって登山を引退したおじいさんなんだが、その人が若い頃、昭和30年代に
春の北アルプスで滑落事故を起こしたんだって。

まだ雪が結構残ってる時期で、ピッケルのブレーキが利かなくて10mほど岩の頭がところ
どころ見えている雪の上を滑り落ちて、そのまま冷たい沢に落ちるかどうかってところで観念したら、何か黒い物に「どん」とぶつかって、そこで滑落が止まった。

ちょうどビリヤードの止め球みたいに、自分が止まった勢いで、その何かが身代わりのように沢に落ちていった。
それが、どう見ても人だった。 パーティの仲間達も上から見てて、どう見ても人に見えた
とのこと。

冬の間に落ちてそのまま死んだ人なんじゃないかと、助かった人が拝みながら尾根に戻って、その後捜索したけど結局、その死体は見つからずじまい。
当時は山岳警察とかの組織なんか整備されてなくて、タイミングよく入山してた山岳会の有志が合同で探したらしいんだけど。

その助かった人が帰宅したら、その人のお母さんが玄関に走りこんできて、胸倉つかんで、
「お前、ご先祖様に助けられたね。 夢にちょんまげ結った先祖と名乗る侍が出てきて、お前の息子が落ちるのを助けたって言ってたのよ。」 怒られるから事故のことを内緒にしようと思った矢先だった。

とりあえず家族全員で墓参りに行ったんだって。 それでも山をやめなかったのは大したもんだ。

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