『座敷女』など 全5話|洒落にならない怖い話【短編・オカルト】

『座敷女』など 全5話|洒落にならない怖い話【短編・オカルト】 厳選

 

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座敷女

一昨年まで、東京の三鷹に住んでた。

アパートの俺の部屋に朝4時頃になると必ず誰か来て、郵便受けにバーナーかなんかで焼いた様な10円が入れられた。

気になって、入れる瞬間を誰がやってんのか見てやろうと思って、夜中に覗き穴を覗いた。

すると急に覗き穴の視界の下から、ニュッと座敷女みたいな奴が出て来て、ゲラゲラ笑い出した。怖くて絶叫しちゃった。

警察に言ったけど、相手してくれんかったね。10円は15枚になったけど捨てたわ。

何時の間にか来なくなったけどねぇ。あの眉毛が薄く目の離れた、歯並びの悪い顔を思い出すと怖いわ。

まぁその話は他にも色々続きがあるけど、

 

最初に気付いた時は3枚。大して気にしなかった。
4枚目が来た日に、夜中に外から子守歌みたいなが聞こえてきて、
(毎日歌詞が違ったから、たぶん女の妄想歌。鳥にさらわれるとか、尋常じゃない歌)
カチャッて郵便受けから音がした。

大して気にせず寝て、次の日起きたら4枚目の焦げた10円。んで5枚目の時は、おみくじに包まれて来た。

6枚目は髪の毛4本くらい縛ってあって、そろそろ俺も不気味に思ってきたんです。

 

絶叫した後、警察に電話しようと思って電話の所行こうとしたら、郵便受けに両手の指突っ込んできて、引っ張ってるわけ。ますます怖くなった。

そして受話器を取った瞬間に、郵便受けの開いた所からまたワケわかんない歌を絶叫された。
(山が割れて、天狗が来て、みんなさらわれた…みたいなイカれた歌)

そこであまりのうるささに気付いた、仲のいい隣の人から携帯に電話が来た。「どうした?」って聞かれて、一部始終を話したら、隣の人が警察を呼んでくれる事になりました。

警察が来るって言う安心感から強気になって、「てめぇ、一体何なんだ消えれ!」つってドア蹴った。

すると号泣しだして、ドアを傘か何かでバシバシ殴って来た。いい加減に堪忍袋の緒が切れた俺は、バット持って出て行った。

ソイツは泣き笑いの顔で、血が出る程(実際出てた)顔や腕をかきむしりながら歯を食い縛って、「またいっしょだねぇ」って一言だけ呟いて逃げた。

次の日に郵便受けを見たら、切られた猫のしっぽが入れられてた。見つけてすぐ吐いてしまった。

それからは来なくなったけど、隣の人も今までそんな事無かったって言ってたし、俺もソイツに覚えが無い。一体何だったんだか。

 

母の手帳

一人っ子の私は、両親にとても愛されながら育ってきた。

特に母は私を可愛がり、私が何か失敗をしたり、ちょっとした悪さをしたりしても怒ったりせず、ニコッと笑って許してくれた。

親としては少し甘いのかもしれないが、私はそんな母が大好きだった。

ある日、学校から帰って来て、リビングでテレビを見ていると、電話が鳴った。母からだった。

「真奈美、今スーパーに買い物に来てるんだけど、冷蔵庫にニンジンがあるか、ちょっと見てくれる?」

私は「ちょっと待ってね」と言いながら、キッチンに向かった。そして冷蔵庫を開けようとした時、あるモノが目に留まった。

冷蔵庫の上に置かれた、一冊の手帳。

あれ?と思いながら、私は冷蔵庫を開け、ニンジンがあるかないか確認して母に伝えた。電話を切った後、私は、そっとその手帳を手に取った。

手帳は、母が昔から肌身離さず持ち歩いている物で、ずいぶんボロボロだった。

私は小さい頃から、この手帳の事が気になっていた。何をしても笑って許してくれた母。でも覚えている。

私が何か失敗や悪さをする度に、母がこの手帳にサラサラと何か書いていたのを。そしてそれは今も・・・

私はずっと、何を書いているのか知りたかった。好奇心に支配された私は、罪悪感など微塵も感じずに、パッと手帳を開いた。

無作為に開いた手帳、その真ん中の方のページ、そこにはこう書かれていた。

『今日の真奈美 -3点 残り168点』

走り回っている男

うちの近所に、とてもでかい2m近くある知的障害者(以下、池沼)の男がいたんです。

そいつは、いつも近所を走り回ってました。

走るときは決まって、「ヴぉわああああ~」と言いながら拍手をしながら走ります。3~5mくらい走ると立ち止まり、しばらく周りをキョロキョロ見て、別方向に向かってまた同じように走るシステム。目的ハ不明。

そいつは本当に邪魔!

とにかく、人間の存在そのものが見えてないのか、周りには目もくれず走り回るのです。小道からも突然飛び出して来るので、それを知ってる近所の車を運転する人ら、うちの親もそうでしたが、車2台が優に通れる大きい道路なのに、そいつが出没する道だけは徐行しながら走ってました。

車の速度で、近所の人かヨソモノかわかるくらいでした。

こんなこともありました。夜中の2時ごろでしたか、私がコンビニで買い物した帰り、30m先の暗闇の中に見覚えのある人影が!

そうなのです。こんな時間なのに、そいつが走り回ってたのです。昼間とは違い不気味な気配を感じました。襲い掛かられたらどうしよう?

少し遠回りになってしまいますが、別の道から帰ることにしました。普段通ることもない道で、表通りとは違い狭い道幅、街灯も少なく、塀の高い家が並びます。

草や木で覆われた空き地なども多々あり、表通りとは一転、寂しい道で邪悪なものを感じましが、無事家に帰り着くことが出来ました。

そんなある日、私が自動車教習所に通っていた頃のことです。

近所の公園の門の前で教習所のバスを待っていると、突如うしろから「ヴぉわああああ~」の声。

とっさに振り向くと、公園の中からそいつが猛烈な勢いで私に向かって突進してきます!

つい「ひぃやぁ!」なんて情けない悲鳴を上げてしまうと、そいつは私の前で立ち止まりました。

そばに立つと、でかいからそれだけで威圧感がある。手もでかいから、ぶん殴られたら吹っ飛ばされそう。

「なん・・・なの・・・?」

ちょっと情けないか細い声を出し、そいつを見上げてたのですが、そいつは私には目もくれずあたりをキョロキョロして、またいつものように走り出した。

そいつとちょっと距離を置いて落ち着いたのか、私の中で急に怒りのゲージが増してきて、「バカじゃなかろーか!?」と、そいつに向かって叫んだの。

するとそいつ、私のほうを振り返り、数秒のあいだ私の顔をジーっと無表情で見つめていましたが、私が言ったことを気にしてないのか理解できてないのか、走り去って行きました。

人には危害は加えないんだなと、安心していた矢先のことでした。

私は見てなかったのですが、ある日、そいつが近所の小学生の手を引っ張ってたんですって。

それを見ていたカアサンや近所のおばさん衆、小学生の手からそいつの手を振りほどき、叱ろうとすると、今度は、そのおばさん衆のうちのひとりの手を引っ張りだしたんです。

あわててカアサンがそいつの家に行き、そいつの母親を呼んだんですが、誰もいる気配がありません。

結局、あとからかけつけて来た近所のおじさん衆が引き離して、その場は収まったんですが、夜になって、その話を聞いた小学生の父親が怒って、そいつの家に怒鳴り込みに行ったんです。

戸を開け名前を呼んでも、誰も出てきません。

それどころか、家の中は真っ暗で人の気配がしないんです。それでも、ひとこと文句を言ってやらないと気が済まない小学生の父親は、家の中にあがり込み、廊下の電気を付け、ひと部屋ひと部屋探していくと、台所で暗闇の中に立っていたそいつを見つけました。

小学生の父親が文句を言おうとしたそのとき、フトそいつの足元を見ると、そいつの母親が倒れており、すでに死んでいました。原因は心臓発作だったそうです。

彼の家は母ひとり子ひとりだったので、彼は東京の親戚の家に引き取られていきました。

私がその話を聞いたのは、彼が引き取られていったあとのことでした。彼があの日、小学生さんやおばさんの手を引っ張ったこと。

それは彼なりに、母親が倒れたことを誰かに知らせたかったからではないでしょうか。多分、私だけでなく、ミンナそう思っているはずだと信じています。

テレビで東京の風景、たとえば浅草、お台場、渋谷、汐留、丸の内などが映るたびに、その東京の空の下、今日も彼が元気に走り回っている姿が目に浮かびます。

 

K市で起こった連続通り魔事件

幼なじみ(女性)から遊びの誘いの電話がかかってきました。

彼女の結婚を境に疎遠になっていたのですが、他の友達とも疎遠になってしまったらしく、

『地元には友達と呼べる人がいなくて寂しい』と嘆いていました。

専業主婦で家にこもりきりのため、人との出会いが無いのが寂しさに拍車をかけていたようです。

久しぶりに会い、彼女の運転でドライブに出かけました。昔からそうなんですが、車中では私が愚痴をこぼすばかりで、彼女は微笑んで聞き役に徹していました。

ただ気になったのは、今日会ってから一言も旦那さんのことを口にしていないことでした。

周りに友達がいない彼女にとって、旦那さんは唯一の心のより所だったはずで、旦那さんと何かがあったから、こうして急に誘ってきたのかな?と思いました。

方々を遊びまわって夜も更けたころ、私が「今日はお疲れ!」とねぎらって、そろそろ帰ろうという雰囲気を出すと、彼女は『わかった』という顔をして車の方向を変えました。

しかし、私の家(実家)とは逆の方向へ走り出しました。まだ遊び足りないのかな?と思い、しかたない、付き合ってやるかと諦めました。

車はあるトンネルの信号の前で止まりました。トンネル内部はやたらと明るく照らされて、パトランプも回っており、奇妙な感じがしました。

「事件でもあったのかな?」と私が言うと、彼女は「最近このへんで通り魔があったの」と、何でもないことのように言いました。

私が驚いて、

「そういえばそんなのあったね!若い女の子ばっかり。犯人まだ捕まってないんじゃなかったっけ?あんたも夜道は気をつけなよ!」
と言うと、彼女は言いました。

「もう捕まったよ」
地元で起こった事件だったので、ニュースを追いかけていたものの、事件が解決済みであったことを私は忘れかけていました。

確かまだ容疑者は犯行を否認していて、だからいまだに現場付近は警戒中なんだ、と思いました。自分の記憶力のいい加減さに呆れて、「なんだよかった。一応解決したん…」と言いかけて、

ふと彼女の今の苗字が頭に浮かび、ハッとしました。

「犯人、あたしの旦那だったの」

古本の書き込み

数年前の古本屋での話

本を売りたいという友人に付き合って大きな古本屋に行った。神保町とかにある古書店ではなく、漫画から写真集からとにかく沢山置いているチェーン店。

友人は山盛りの漫画本を持ち込んでいて、会計までしばらくかかるとのことだった。古本屋は利用したことがなかったから物珍しくて広い店内を一人であちこち見て回っていた。

オカルトの面白い本がないかなと思って超常現象と分類されている棚を眺めていたとき、背表紙が棚の奥向きになっていて題名のわからない本を見つけ手に取ってみた。

落語を楽しもう、というようなタイトルだったと思う。文字が大きくてイラストが多かったから小学生向けだったんだろうと思う。

載っているのは【じゅげむ】や【饅頭こわい】などの有名どころばかりだったが、添えられている挿絵が面白かったのでペラペラめくっていた。

【地獄のそうべえ】のところで、余白に「こわい」と走り書きがあった。

地獄のそうべえというのは主人公そうべえが同じく地獄行きになった歯医者・医者・山伏とで、鬼に食べられそうになったら歯をひっこぬいたりと生前の職を活かして切り抜ける話だ。

コメディだが、子供心に地獄の業火や鬼達のイラストがとても怖かったのを覚えている。走り書きを見たときも、前の持ち主だった子供がそういう思いをしたんだろうと思って微笑ましくなった。

次のページの余白にまた文字が書いてあった。

「困っています。よろしくお願いします」赤いペンで書かれていて文中の「じごく」に丸がしてあった。

その下に掠れた黒い文字で「リョウカイ」、すぐ下に「オワリ」、その下に赤ペンで「有難うございます」。

なんだこれ?と思いながらページをめくる。

するとまた「お願いします」。文中に丸。
そしてその下には「リョウカイ」「オワリ」、赤文字で「感謝致しますお世話になりました」。

やりとりはいくつもあった。
赤い文字は薄かったり蛍光だったり達筆だったりミミズだったり様々だったが、リョウカイ・オワリの文字だけはいつも黒文字で掠れていて、カクカクしていた。

「頼みます」「リョウカイ」「オワリ」「有難うございます」
「どうか宜しくお願いします」「リョウカイ」「オワリ」「どうも有難うございました」

いくつかそんな書き込みを見た後、物語が終わる辺りに紙が一枚挟まっているのを見つけた。

拡大したのか、黄みが強い荒い画質で、学ランを着てぎこちなさそうな表情をした少年が写っていた。

その下に少年の名前だろうと思われる写植。
本の余白には走り書き。「お願いします」。文中の「じごく」に丸。

その下には何も書かれていなかった。

友人から会計が終わったとケータイへ電話が入った。
本は元のところへ戻しておいた。

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