『灯油を勝手に使われた』など短編5話 – スカッとする話

スカッとする話【短編 - 傑作選】まとめ - 全5話

 

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スカッとする話【短編 – 傑作選】まとめ – 全5話

 

ママグループでカフェ

昨日あった話を吐き出させてほしい。

13時ごろ、子供の幼稚園のママグループA、Bと3人でカフェにいった。
なごやかに雑談をして、いざ帰る段になったら財布がない。
さっきカフェに入る前にバッグの中を確認したから忘れたということもない。
もしかして落とした?と思ってキョロキョロしてるとBがどうしたのかと聞いてきた。
あったはずの財布がいま見たらなくなってて……と言いかけると
私の隣に座っていたAが、
「もしかして最初からもってなかったんじゃない?」
確認して店に入ったからそれはない、と反論したけどさらにAは
「それにダンナから聞いたけど(私)さんって刑務所にいたことあるんだよね?もしかして自分の財布がないとか言って最初からタカる気だったんじゃないの?」
妙に突っかかってくる態度にピンときて、Aのバッグをひったくってテーブルの上にひっくり返した。
泥棒!プライバシー侵害!とファビョるAを尻目に荷物を物色すると、やっぱり私の財布が出てきた。
どうやらおしゃべりに夢中になっているときにバッグからこっそり抜いたらしい。
支払いを終えてからならともかく、支払いをする前に盗むという手口がどうも臭いので、嫌がるAと引き気味のBをつれてカフェを出て、Aダンナに連絡を取った。
(Aの携帯を無理やり使ったのがDQNだったと今は反省している)
状況を説明すると、みなまで聞かないうちに「申し訳ありません!」と謝ってきた。
やはり思い当たる節があるらしい。

とりあえず子供を迎えにいってAとその子供をまとめて私の家へ連れ帰り、Aダンナが
来るまで監視。
その間も「犯罪者のくせに!」「監禁だ!警察呼ぶよ!等と言って暴れようとしたが制止。子供は二階で遊んでいた。

会社を早退してきたAダンナは玄関にはいるなり土下座。
話を聞くと、Aは結婚当初から盗癖がありダンナも手を焼いていたそう。
今までは示談にしてきていたが、(私)さんのことを知っても手を出すとは、もう手に負えない。
離婚も視野にいれて話し合うと言っていた。
(刑務所うんぬんは私のダンナがAダンナに話したらしい。きっちりと〆ておいた)

Bさんには口止めしておいたけど、同じ幼稚園のママも何人か現場にいたから事情説明しないといけないかと思うと頭が痛い。
私が刑務所にいたのは本当だし、Aダンナもそれを知っていてAの盗癖抑止になればとその話をしたらしいが、Aの脳内では華麗に書き換えられていた。
多分Aは都合のいい単語しか記憶しなかったんだろう。

刑務所にいたのは私が元看守だからだ。バカめ。

 

 

灯油を勝手に使われた

玄関ドア横(外の通路)に置いておいた灯油を勝手に使われたことがある。
ドアを開けて向いに住む奥さんに。
面倒なので一気に1.8リットル容器×2つ買って置いといて、2つめを使うのは1ヶ月以上先だったりしたから、もう使っちゃったっけ?と思った事もあったが、向かいの奥さんが無断で使っていた。
(この件は、同じ買いに住むご親切なお婆さんから報告あり)

旦那に相談して、わざと水を入れた容器を置いて置いたら、それ使ってストーブ壊れたみたい。
逆ギレされた。

「え?あれ、容器が古くなったから捨てるんで、水で洗ってからと思って出しておいたんですけど。と言うか、うちの灯油勝手に使ってたんですか?信じられない。泥棒ですよね?」

と言ってやった。
だって貸してとも借りたとも言ってこないし、第一灯油の貸し借りなんて聞いた事ねぇよ。
5年以上前の話だけど、当時8歳と10歳の子供がいる40代半ばの人だったわ。

 

列車が急に止まった

5年くらい前のことだけどJRの特急に乗った時のこと。

通路の反対側に座ったオバサングループがうるさくて閉口してた。
そのうち列車が急に止まって動かなくなってしまった。
車内放送で前の列車に故障があり遅れますということだった。
オバサンたちは通りかかった車掌さんにグチグチと文句をいっていた。
こちらもうんざりしてたけど車掌さんを責めたところで仕方ない。

だんだん時間がたつとオバサンの怒りも頂点になり、
自分から車掌室に出かけて行って様子を見がてら苦情をいう。

そのうち払い戻してくれないかしらといいだす。
うるさいから「2時間以上遅れると払い戻しです」と教えてあげた。
そうしたら「あらいやだ、急がないように車掌に言って来る」

結局、列車は猛スピードで走り出し、列車のゆれも尋常じゃない。
1時間59分遅れで到着した。

車掌さんのお詫び放送で「遅れは1時間59分で払い戻しはありません」

ものすごく勝ち誇った言い方でムカついたけど
これはあのオバサン向けのメッセージだと思った。

 

 

ワインディングロード

父方の田舎の家の近くの山にワインディングロードがあるんだが、
爺ちゃんはその麓にちょっとした駐車場ぐらいの土地を持っていた。
ところが、そこがワインディングで珍走やってる「自称・走り屋」のDQN達の溜まり場になってしまった。

ロープで入り口を塞いでもダメで、騒音やらゴミやらで溜まりかねた爺ちゃん達が、俺や親父、近所の人と一緒に乗り込んでいったんだが、連中は出て行くどころか、車のエンジンを空ぶかしして威嚇してきた。
そのうち一台が物凄い音を立てて婆ちゃんに突っ込み掛けた。
ギリギリで衝突はしなかったが、婆ちゃんは腰を抜かしてへたり込んでしまった。
それを連中はバカ笑いしながら見ていた。

そこで爺ちゃんが完全にブチ切れた。
自分の軽トラに積んでいた、趣味の畑で使ってるシャベルを持ち出して、そのDQNカーのタイヤを突き刺した。
バーン!って音がしたかと思ったら、今度はボンネットに飛び乗ってフロントガラスを突き破った。
そしてDQNの目の前にシャベルを突きつけ、「とっとと車から降りろ!でなきゃ今すぐこいつで叩き斬ってやる!!」と宣言。

運転してたDQNは半べそで「ごめんなざい!殺さないで下ざい!お願いじまず!殺ざないで下さい!」と文字通り必死で命乞い。
助手席に座ってた女は狂ったみたいに泣き叫んでた(微妙にチビってたっぽい)。

その間、他のDQNは親父や俺、近所の人が睨みを効かせ…と言いたい所だが、
こっちも連中も、しばらく呆然として動けなかった。 それぐらいあの時の爺ちゃんは迫力があった。

我に返った親父が爺ちゃんにとりあえずボンネットから降りるように言っても、
「うるさい!お前は引っ込んでろ!」と全く耳を貸さず、結局近所の人の110番を受けたパトカーが到着するまで
DQNカーの上でシャベルを構えていた。

当然、DQN達と一緒に爺ちゃんも連行されてしまったが、事件が爺ちゃんの敷地内で起きたことや、
先にDQNの方が明らかに危険な運転で婆ちゃんに怪我をさせた事もあって、刑事的には厳重注意で済んだらしい。
壊したDQNカーの修理費については、「お前(俺のこと)は金の事なんか気にせんでいい」と教えてくれなかった。
一応、いくらか払うことになったんじゃないかと思うが、分からない。

ちなみに爺ちゃんは別に元軍人でも何でもない、只の商人。
戦時中に徴兵検査は受けたものの、体が弱くて合格しなかったらしい。

 

 

ギターの野外演奏をしたとき

友人が公園でギターの野外演奏をしたときの話です。
演奏を終えて、おひねり入れの紙コップの中身を財布に入れ、荷物をまとめて駅に向かって歩き出した時、公園住人(ホームレス)のおじさんが近づいてきて言いました。
「近くに女が住んでいて、会いにいきたいけど小銭がなくて。電車賃かしてくれない?」
電車賃貸して、というのはお金をせびりたいときの常套句で、もちろん返してもらえることはないのですが、友人もそれを知っているので無視するだろうと思っていたら、
「いくらいるの?」「240円?」とか会話しながら、財布からおひねりでもらった小銭を数えて渡してあげました。

それから友人がおもむろにおじさんの肩に手をおいて、「女には気をつけなさいね」
「それからね、あなたは今はそういう生活をしているけど、いつまでもそういう人生じゃないからね。日本刀を作るところ、見たことある?熱い火で焼かれて、冷たい水に入れられて、また焼かれて、繰り返しますね。でも最後に立派な刀になる。あなたも、いろいろあるだろうけど、最後にはよくなる」
そして、じゃあね、といって立ち去りました。
おじさんは、ポカーンとその場に立って見送っていましたが、やがて走り寄ってきて、
「いい話を聞きました。そんな話をはじめて聞きました。ありがとうございました。ありがとうございました・・・・」
おじさん、なみだ目でした。
ちなみに友人は外国人です。外国人から日本刀の作り方で説教されるとは、おじさんも
めずらしい体験したと思います。

 

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