スカッとする話【短編 – 傑作選】まとめ – 全5話
大人の対応
学生の頃、大学内でも有名なDQNと同じ授業で、いつもうるさくされていた。
この男、授業終了30分前に来て、持っているのはコーラのペットボトル1本。
それを持って一番前の席に座り、後ろを向いてしゃかしゃか振り、噴き出させて喜んでいた。
いい加減、無視するにも腹が立つし、先生が何も言わないので誰かが文句を言おうとした時、おもむろに先生、一言。
「僕は君が大好きだよ」
その言葉に全員「!?」となった。
DQNが「え?先生、コレっすか?」と言うと。
「そう思ってもいいよ。君は可愛いな。やることが幼稚園児と一緒だ。僕の子が小さかった時を思い出させてくれる。本当に可愛い」
その言葉にDQNは教室から逃げた。
それを見て先生。
「可愛いなぁ。意気がってお子様だ。なんのかんのと言っても、授業にちゃんと来るんだから」
確かに30分とは言え、授業には来ている。
やっていることはともかくとして。
先生はこうも言っていた。
「淋しがり屋なんだよ。構わなくても見守ってあげよう」
それ以来、その授業に出ている人たちは彼を生暖かく見守ることにした。
カツアゲに遭遇
高校2年の時のことです。
『最近カツアゲが流行ってるからよ、遅くまで学校に残らずにとっとと帰れよ~!』
と、やや的外れな注意を受けてから2,3日経った日の帰りでした。
自転車通学だし大丈夫だろ、と高をくくっていたのが良くなかったのでしょう。
友人と別れた後、少しばかり歩くと、突然声をかけられました。
もちろん、見ず知らずの人です。
髪の毛金に染めて、学ランの前全開にする人なんて友人にいません。
というか、中学以前の知人は反対方向の田舎の高校に行ってましたから。
私も声をかけてきた人も、最初は自転車に乗っていました。
わざわざ並走して『止まれよ!』などと言って肩を掴んででも止めてくるので、あぁ、最近はこういう恐喝もあるのか、と少し感心してしまいました。
普通、自転車に乗ってる人は狙わないと思うんですけどね……。
で、事故るといけないので要求通りに止まると、今度は金貸せって言うんです。
えぇ、正直に言いましたよ。
『200円しか持ってないし、例え大金持ってても貸す義理はない』
『とりあえず借用書と身分証明書を用意してから出直せ』って。
予想通りというか、胸倉つかまれました。
で、田舎独特の『殺すぞテメェ』みたいな脅し文句を言うんです。
売り言葉に買い言葉、と言うんでしょうか?
思わず『やってみろコラ』と言ってしまいました。
もちろん、距離をとるために突き飛ばすのも忘れませんでした。
で、相手さんもブチキレて殴りかかってはきたのですが。
私としても、先ほどの発言はともかくとして、大事にはしたくありません。
一応進学科に行ったりしてましたので、問題を起こすのもなぁ、という気持ちもありました。
ですから、彼が殴りかかってくる間。
私はひたすらに攻撃をすることもなく。
彼が叩きつけんとする拳と蹴りを、ずっとずっと。
彼が飽きるまで。
延々、たぶん、2分ちょっとの間。
ずっと、捌いてました。
えぇ、そのときにはもう空手2段でしたから。
同じ道場の『オレ、パンチだったらマジパネェっすよ!』の後輩よりトロい攻撃です。
もう映画ク○ーズZEROもビックリの大振りでしたから、冷静に見ればなんてことありません。
疲れ果てるまで、延々捌き続けました。
結局、相手さんは『テメェ、明日殺すからな!』と帰ってしましました。
その後私は、彼の内ポケットから飛び出していた学生証を拾い、彼の身分を確認。
キッチリ彼の学校の方に連絡を入れて、学生証は交番に届けておきました。
交番で少々詳しく話を聞かれましたので、
『自転車で走っていたところ突然肩を掴まれ、金を貸すように恫喝され、拒否の意思表示をしたところ執拗に暴行を加えようとしてきた』
という旨の内容を伝えました。
私に外傷がなかったため最初は不振がられ『どこか怪我してない?』と聞かれましたので、先々日の稽古でかわしきれなかった膝蹴りを受けた、前腕に広がる大きなあざを見せたところ、納得していただいたようで『よく頑張ったね』と称賛の言葉をいただきました。
無駄にイケメンな男に女履歴自慢を聞かされた
大学時代、忙しくて顔を出せなかったサークルの飲み会に久しぶりに顔を出した時のこと。
自分が来れなくなったのと入れ替わりでサークルに入会した、Aという男も参加していた。
初対面だったものの、無駄にイケメンなAは女を喰っては捨てを繰り返すクソ野郎であるというのは、学内では有名な話だったので、初めにあいさつだけして別のテーブルで友人たちと楽しく飲んでいた。
飲み会が中盤に差し掛かると、Aがこっちのテーブルに突撃してきた。
めんどくせーと思いながらAの女履歴自慢にはいはい相槌を打っていたら調子に乗ったのか、ふともも触ってきたり、髪を撫でてきたりしてマジで気持ち悪くなってきた。
あげくに喰って捨てた女の一人である自分の友人の容姿批判まではじめて、最後には
「こんなに大勢、生で喰ったのに俺一人も妊娠させてないんだぜ!すごくね?」
て言われたところで自分の精神が限界にきたので、
「へーそうなんですか!なら病院行った方がいいですよ!そんなにやって妊娠してないんだからあんたの精子に異常があるんでしょ!精子に!そういうことは早めに検査して知っといた方がいいですよ!大事なことですし!よかったら良い病院紹介しましょうか!?医者やってる叔父に伝えときますよ!あんたの精子が異常だって!」
と参加者全員に聞こえる大声でまくしたてて、幹事に自分の分の飲み代渡して家に帰った。
家で冷静になったら、自分が大勢の前で精子精子連呼したことが恥ずかしくなり、そのままサークルへは行かなくなった。
それが半年前の出来事。
そしてつい先日、上記のやり捨てられた自分の友人からご飯を食べようと連絡が入り、フェミレスへ行くと友人とともに、知らない女の子が数人いた。
しかも会ったそうそう全員にお礼をいわれた。
何事かと思って事情を聞いたら、全員Aに喰って捨てられた女の子たちだった。
あの飲み会で自分が帰った後、Aが「…な、何言ってんの?あの女?馬鹿じゃねww」
と笑い飛ばそうとしたんだが、Aのクソ野郎っぷりを知っている周囲は、「確かにそうだよね…Aってもしかして…」な空気になり、飲み会はそのままお開きになったらしい。
Aの精子異常説は、恨んでいる人も多い為か瞬く間に大学内広まり、これをきっかけに、周囲の人たちから距離を置かれ、今までAのイケメンオーラに騙されていた女の子たちも、何となくAから遠ざかり、Aはぼっちになりかけていたのだが、
「そうか!なら俺生でもっとやりまくれんじゃん!」と開き直り、ビッチな女の子たちとやりまくってたら、別に精子に異常はなかったのか相手が妊娠してしまったらしく、結婚を迫られ相手の親にタコ殴りにされて無理やり入籍させられた後、相手方の親戚のやっている土建屋さんで働く為に大学を辞めていったらしい。
…というようにAに復讐できたのは自分のおかげであるという理由から、女の子たちにはめちゃくちゃ感謝されて、ご飯をおごってもらえた。
自分が就活で大学に行っていない間にそんなことになっていたなんて思いもしなかった。
後日、大学の別の友人に話をきいたら、自分はひどい目にあわされた女の子たちを救うために立ち上がったヒーローみたいな扱いに大学ではなっていると聞いて仰天した。
自分が男だったらこれがきっかけで、女の子の誰かとフラグでも立ったかもしれないが、残念ながら立派な喪女なのでそんなことはなかった。
悲しい。
彼氏ほしい。
DQNがくわえタバコで本屋のレジにきた
いつも行ってる本屋は扉が無くって、平積みにしてある本の間からスッと店内に入れるような造りになっている。
レジも入口の近くにあるから一冊買って帰るには結構べんりなんだけど、そこにDQNが来店、くわえ煙草のまんま週刊誌をレジに持って行った。
店員さんも「店内ですので…」と言うのも「あ、すぐ出るんで」と言って聞く耳持たず。
すると店内にいたサングラスをかけたいかつい兄さんがDQNの肩を叩いた。
あ、ヤバイ、って思って身構えたんだが、「ん」と携帯灰皿をDQNに差し出しただけだった。
いや、それでも十分に怖かったんだが、DQNもそうだったらしく、おとなしく煙草を灰皿にイン。
「だな、煙草はかっこよく吸わんとな」と言って何事も無かったかのように会計を済ませてた。
この人が買ってた本が電撃文庫じゃ無ければ武勇伝だったと思う。
妊婦バッチ
通勤電車で座っている人の前に立ち、妊婦バッチをこれ見よがしに見せ、席を譲られて、一言の礼もなく当たり前の様な顔で座る女がいる。
地方都市の下り線の始発なので、発車時間の10分くらい前に来て、並びさえすれば確実に座れるのに。
私も2回譲った事がある。
ムッとしたけど妊婦だし…と我慢してたが、その女が毎日席を譲られてるのを見てイラっとしてた。
先日、私の隣の隣位に座ったおとなしそうな大学生風の男の子の前に立ち、例によって鞄にぶら下げた妊婦バッチをつきだした。
大学生は席を立ちかけ、私はチッ、またか…とイラっとしたら、私の隣に座っていたサラリーマンが、高校生の手を掴んで座らせた。
高校生も私も、その女もビックリ。
サラリーマン「おいあんた。あんたはいつになったら子供産むんだ?少なくとも去年の夏にはもう妊娠バッチ持ってたろ?ぜんぜん腹も出てねえじゃねえか。電車乗ってる間楽したいなら早く来て並べよ。みんなそうしてんだ。詐欺師かあんたは」
気が付かなかった私も私だけど、そう言われてみれば。
女顔真っ赤にして「乗り換えの都合で早く来れないんですっ!!」と逆切れ。
サラリーマンは「そんなあんたの都合なんてこっちの知った事か。だったらおとなしく立ってろ。人の好意に付け込みやがって、ムカつくんだよ」
周りに居た人ヒソヒソ。
女子高生なんて大声で「うわっ最低!」「ムカつく!」とかw
女は口への字にして、プルプルしながら足音荒く隣の車両へ移動して行った。
サラリーマンは大学生に「なんか騒がせてごめんな」とか謝ってた。
何か奥さんが妊娠中らしく、
「ああいう非常識な女がアカンボもいないのに妊婦だ!って偉そうにしてるのが腹立って…」
と言ってた。
あちこちから称賛の声も上がって、サラリーマン照れくさそうにしてたけどw
明後日、女は同じ電車に乗ってくるのかなぁ。
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