ちょっと切ない話『カーチャンの七不思議』【短編】全5話 Vol. 11|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『カーチャンの七不思議』【短編】全5話 Vol. 11|切ない話・泣ける話まとめ

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切ない話 Vol.11

 

 

見えない常連さん

 

昔、俺がまだ神戸で雇われのバーテンダーだった頃の話。

その店は10階建てのビルの地下にあった。で、地下にはうちの店しかないんだけど、階段の途中にセンサーが付いてて、
人が階段を通るとカウンターの中のフラッシュが光ってお客さんが来たのがわかる仕組みになっていた。

でもたまに、フラッシュが光っても誰も入ってこない、外を見ても誰も居ないって事があって、
俺は寂しがりやの幽霊でも来たのかなって半分冗談みたいに、ウイスキーをワンショットカウンターの隅の席に置いて「ごゆっくりどうぞ~」と言っていたんだ。

それからはそれがおまじないというか、げんかつぎみたいになって、そうゆうことがあると、いつもそれをしてた。
そのうちお客さんも「おっ今日も来てるねー」みたいな感じになって(そうゆう日に限って店は凄く忙しくなった) 姿は見えないけど、その頃は店の常連さんみたいに思っていた。

ある冬の朝方、またフラッシュが光ったんで、こんな遅くにお客さんかぁと思って外を見ても誰も居ない。
なんかそのまま朝の空気が心地よいので、階段の上まで昇って一服してたら、突然の大地震。そう阪神大震災です。

うちのビルは地下と一階部分がぺっちゃんこ。あのまま中に居たら確実に死んでました。

あとから考えるといつもただで飲ましてあげている、あの見えない常連さんが助けてくれたのかなぁと思います。

今も違う場所で自分でお店をやってますが、その店のスイングドアが風も無いのにギギィーって揺れたりすると、今でもウイスキーをワンショットカウンターの隅に置いてます。

そして心の中で「いらっしゃい。あの時はありがとうございました。」と思うようにしています

 

 

カーチャンの七不思議

 

《カーチャンの七不思議》
夜には疲れた顔してたのに朝には早起きして弁当作っててくれる
夜遅く帰っても他の家族は寝てるのにカーチャンだけ起きてる
俺が疲れてるの何故か把握してて栄養剤出してくれる
俺が逆切れしても困ったように笑ってる
俺が自分で言ったのに忘れてた事をずっと覚えてる
いまだに俺の誕生日祝ってくれる
俺より長生きしてくれない

《カーチャンと卵焼き》
夜中に腹減ったから卵焼き作って一人で食ってたら カーチャンが起きてきて、
「お母さんにも食べさせて」言うからくれてやった。
そしたら「おいしいね、上手に作れたね」って泣きながら食ってやんの。
本当はすごい嬉しかったけど「はぁ?こんなクソマズイのに馬鹿じゃねぇの」
って捨てゼリフ吐いて部屋に戻って泣いた。

明日ハロワ行く。

 

 

ものにも心があるのだ

 

私は今日車を買い換えることを子供たちに伝えた。
主人が結婚する前に、私をくどくために買ったマーチだった。

私を射とめ結婚しそれから6年間乗ったのだから
もうそろそろ新しい車が欲しいね、と彼は言った。

わたしも別段反対することもなく、子供たちにも普通の会話のつもりで話した。
そこで話は終わるはずだった。

子供たちの反応は私たち夫婦のとは異なり、今にも泣き出さんばかりであった。

「こわれちゃったの?」「もうあえないの?」

確かに普段から、ものにも心があるのだ、だからものを粗末にしてはならないのだ、と教えてはいたが、彼らがマーチに対してこれほど思いを抱いていたとは知らなかった。

私たち夫婦は彼らの優しさに心を打たれ、それをほほえましくまた誇りにさえ思ったが、実際今度生まれる三人目の子供のことを考えると、今の車では小さすぎるのだ。

だから私たちは彼らが傷つかないように根気よく彼らを説得した。
その夜わたしはかれらがいつまでもその心を持ち続けることを願って床についた

 

納車される前の日に、上の子が手紙を持って私の前に座った。
別れゆくマーチのために手紙を書いたのだった。

「マーチへ。
いままで いろんなところに つれてってくれて ありがとう。これからも げんきでね。」

文字の書けない下の子はマーチの絵を
上の子の手紙の挿絵として書き加えていた。
マーチは自動車販売店に下取りされることが決まっていた。

そこのお店の人の迷惑になるかもしれないと思いつつ、息子たちの手紙をマーチに忍ばせ、わたしたちはマーチを見送った。
それから新しい車が来て、私たち家族は久しぶりに少し遠くまで出かけた。

それから9ヶ月がたったころ、マーチから息子たちへ手紙が届いた。
「あつし ゆうき へ げんきにしてるかな? ぼくは げんきです。
あつし と ゆうき と わかれたあと、ぼくは あたらしいかぞくに であいました。
おとうさん と おかあさん と けんたくん の さんにんかぞくです。
けんたくんは まだまだ ちいさくて あまえんぼうさん です。
おおきく なったら けんたくんも あつし や ゆうき の ようにやさしいこに なってほしいな。
いつまでも げんきでね。
マーチ」

かわりに読んでいたわたしは、途中で主人に代わってくれといい、
彼もあと少しで涙するところだった。

上の子は、まだたくさん泣いていい年頃なのに泣くのを必死にこらえている。

「悲しくないのにね、何で泣いちゃうんだろうね。」

一生懸命笑おうとしておかしな顔になっている息子を見て、
わたしたちも泣きながら笑った。

 

 

いつもくる小さな子

 

俺はセイコーマートで働いて三年目になる。いつもくる小さな子の話を一つ。
その子は生まれつき目が見えないらしく白い杖をつき
母親と一緒に週に二、三度うちの店を訪れる客だった。
ある日、その子が一人で入口の前に立っている。
入口のドアが引くタイプだったので俺はドアを開けてあげようとした。
その瞬間!同年代らしき糞ガキ二人が「お前さぁ、目見えねぇんだろ?
素直に親帰ってくるまで家でおとなしく留守番でもしてろよ。バカだなぁ」といった。
さすがに俺も障害をもった人間に冷たくする人間は許せなかったので
入口に向かったその時!
ガキの片方が「ほら、先に入れよ。ドア開けといてやるからよ。」と言った。
そしてその子の手をつなぎ、「何買いに来たんだ?」と二人組の片方が言うと、その子は
「お母さんがすごい熱が出てるの。だから水枕に入れる氷買いにきたの。」と言った。
そして俺がレジで「398円です。」と言うと、二人組が「いいよ。俺が出しといてやるよ!
そのかわりお前のお母ちゃんがよくなったら俺たちと遊べよな!」といい会計をすました。
そしてきっとその子の家までだろう。
片方が氷をもち、片方はその子の手を繋いで帰っていった。
小さな子ども達の友情に感動!

 

 

こんな人生で、すごく悔しいよ

 

この前初めて合コンってものに行ってみたよ。
結果は案の定。一緒に行った男の二人に散々ネタとしてつかわれ
女からは馬鹿にされてさ、「あんたと寝るくらいなら死ぬかもw」とか
笑いながら言われた。
帰った後、少し泣いたよ。つくずく自分の気持ち悪さが嫌になった。
まぁまぁイケメンの同僚に「来週の合コン、お前も来てみるか?」とか言われて
合コンに誘われたのなんて初めてだったからさ。
金もないのに、雑誌見て高い服買い揃えてみて、話題が続くように”トーク用の
ネタノート”なんか書いてみたり・・

前の晩は正直よく眠れなかった。
あんなの小学校の遠足以来だったかなw

馬鹿だよな、気持ち悪いよな、俺。

どうしてこうなんだろう。一人でキモ男がはしゃいじゃったりして
なるべく誰とも(特に女とは)関わらないで生きていこうって
前に誓ったはずなのに、またこんなんだよ。

死にたいなんて言葉じゃ足りない。悔しいよ、俺こんな人間で
こんな人生で、すごく悔しいよ・・・・

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切ない話
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