ちょっと切ない話『こんなのお弁当じゃない!』【短編】全5話 Vol. 25|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『こんなのお弁当じゃない!』【短編】全5話 Vol. 25|切ない話・泣ける話まとめ
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切ない話 Vol.25

 

 

こんなのお弁当じゃない!

 

うちの両親は昔すごく仲が悪かった。

母はとても気が強くいつも一方的に怒鳴り散らして父は下を向いて黙ったまま。
そんな光景を何度も見ながら育った。私は父のことがとてもかわいそうに思えて父の味方だった。幼心に”パパとママが離婚したらパパといっしょにくらす!”ってずっと思っていた。

私が通っていた幼稚園ではお昼に給食が出ていたんだけど1ヶ月に一度お弁当を持っていく日があってその時は母がいつも腕を振るってかわいいお弁当を作ってくれていたのでとても楽しみにしていた。
しかしお弁当を持っていく前日、ケンカをした後、母が家を飛び出してしまった。
明日はお弁当なのにどうしよう。と思っていたがそのことを父に言い出せず、そのまま眠りについてしまった。

次の日、目を覚ましたが母はまだ帰っていなかったが父が台所に立っていた。私が起きてきたことに気付いた父が「パパがお弁当作ったから」と言って得意気に私にお弁当箱を見せた。
しかし、中身はパンのサンドイッチがひとつ入ってるだけ。それに妙に腹が立った私は「こんなのお弁当じゃない!ママが作ってくれるのと全然ちがうもんっ!!」って言って泣き出してしまった。

父は始めビックリした顔をしたがみるみる寂しそうな顔になり「ママみたいに上手に作れなくてごめんな」って言って涙をこぼした。

幼稚園に行ってお昼の時間になり、お弁当箱を開けるとパンにイギリスの国旗の旗が刺さっていた。
父なりに工夫をして見た目を良くしてくれたんだと思う。それを見た私は母がいない寂しさや、父が心をこめて作ってくれたお弁当のことなど色んなことが頭に浮かんできて泣きじゃくりながらサントイッチを食べた。

中身はマーガリンに砂糖がかかっている甘いものだったけど涙のしょっぱい味が今でもすごく印象的です。

 

 

生活保護

 

目の不自由な祖父、祖母と、
生活保護をもらいながら住んでいる女子中学生がいて、
二人の面倒を全部見てたが、ある日生活保護のお金を引ったくりされた。
これが地方ニュースになって、カンパが集まった。

役所は、そのカンパが臨時収入だからと言って、生活保護を打ち切った。
カンパの何十万円かなんてすぐになくなって、その子は役所に相談に来たけれど、
役所は臨時収入があったから再開できないと伝えた。

何度か役所に姿を見せたのは確かだが、その度に追い返したようであった。
生活保護を再開してもらえなかったことは、祖父母に言えなかった。
心配をかけたくなかったのか、どんな心境かは今となってはわからない。

目の見えない祖父母にはちゃんとオカズを作って食べさせながら、
その子はずっと、自分は塩とご飯だけ食べていたらしい。

ある時、祖父母がそれに気が付いて、
どうして自分だけそんな食事をしてるのか問いただした。
その子は笑ってごまかした、その夜、首を吊った。

 

 

結婚記念日

 

入社4年目で初めての結婚記念日の日。社内でトラブルが発生した。
下手したら全員会社に泊まりになるかも知れないという修羅場なのに、結婚記念日なので帰らしてくださいとは絶対に言えなかった。
5時を回った頃、T課長が俺を呼びつけ、封筒を渡して、
T課長
「これをK物産に届けろ」
と言う。K物産は、隣の県にある得意先で、今から車で出ても8時までに着けるかどうかすら分からない。
T課長
「届けたら直帰していいから」
と言うが、直帰も何も、K物産に届けて家まで帰ったら、きっと11時は過ぎるだろう。文句を言いたかったが、

「わかりました」
と言って封筒を預かった。中身を見ようとすると
T課長
「中身は車の中で見ろ。さっさと行け!」
とつれないT課長。
不満たらたらの声で

「行ってきます」
というと、課内の同情の目に送られて駐車場へ向かった。
車に乗り込み、封筒を開けると、一枚の紙切れが。

「結婚記念日おめでとう。今日はこのまま帰りなさい」

と書かれていた。
会社に入って初めて泣いた。

 

 

サンタさんへ

 

6歳の娘がクリスマスの数日前から欲しいものを手紙に書いて窓際に置いておいたから、早速何が欲しいのかなぁと夫とキティちゃんの便箋を破らないようにして手紙を覗いてみたら、こう書いてあった。
「サンタさんへ おとうさんのガンがなおるくすりをください! おねがいします」
夫と顔を見合わせて苦笑いしたけれど、私だんだん悲しくなって少しメソメソしてしちゃったよw
昨日の夜、娘が眠ったあと、夫は娘が好きなプリキュアのキャラクター人形と
「ガンがなおるおくすり」
と普通の粉薬の袋に書いたものを置いておいた。
朝、娘が起きるとプリキュアの人形もだけれど、それ以上に薬を喜んで
「ギャーっ!」って嬉しい叫びを上げてた。

早速朝食を食べる夫の元にどたばたと行って
「ねえ! サンタさんからお父さんのガンが治る薬貰ったの! 早く飲んでみて!」
っていって、夫に薬を飲ませた。

夫が「お! 体の調子が、だんだんと良くなってきたみたいだ」
と言うと娘が、
「ああ! 良かった~。これでお父さんとまた、山にハイキングに行ったり、動物園に行ったり、運動会に参加したりできるね~」……っていうと、夫がだんだんと顔を悲しく歪めて、それから声を押し殺すようにして
「ぐっ、ぐうっ」って泣き始めた。

私も貰い泣きしそうになったけれどなんとか泣かないように鍋の味噌汁をオタマで掬って無理やり飲み込んで態勢を整えた。
夫は娘には「薬の効き目で涙が出てるんだ」と言い訳をしてた。
その後、娘が近所の子に家にプリキュアの人形を持って遊びに行った後、夫が
「来年はお前がサンタさんだな……。しっかり頼むぞ」
と言ったので、つい私の涙腺が緩んで、わあわあ泣き続けた。
お椀の味噌汁に涙がいくつも混ざった。

 

 

成人式のスーツ

 

成人式の為に買ってもらったスーツを着てかっこいいと言われ、何枚も写真を取られ、車で会場まで送ってもらい
「友達と飲むだろうけど、イッキなんてしたらいかんよ? 遅くなるだろうから気をつけて帰ってらっしゃい」

そう言われた後一人で会場を一周し、中に入ることが出来ず、友達と飲みに行くことになっている手前、そのまま帰ることも出来ず
夜まで時間つぶすためにその足でスロット店へ行き、親からもらったお年玉を使い切るのに2時間も持たず銀行から下ろした8万も消え、どうしようもなくなって、夕方頃に家に帰り、人が多すぎて友達と会えなかったと言う俺に母さんは、
「じゃあ夕飯ちゃんとしたもの作らなきゃね」と言い
俺は震えて声も出せないほど泣いた。

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