『生まれた時の記憶』|◆txdQ6Z2C6oシリーズ【3】洒落怖名作まとめ

『生まれた時の記憶』|洒落怖名作まとめ【ホラーテラーシリーズ】 ◆txdQ6Z2C6oシリーズ

原作:◆txdQ6Z2C6o

 

スポンサーリンク

生まれた時の記憶|◆txdQ6Z2C6oシリーズ

 

昔テレビ番組で胎内記憶や生まれた時の記憶がある子どもを見て、
俺はこれらのことは科学的にも認められていることなんだと思っていた。
しかし、この前俺みたいな記憶がある人がいるか調べてみたら、
胎内記憶や生まれた時の記憶というものは科学的には認められていないオカルト的な分野であることを知った。
だからちょっとこのことも書こうと思う。

俺は生まれた時の記憶がある。ずーっとある。今でも思い出せる。
それがおかしいってわかったのは俺が小五の時のことだ。
担任になった三十代前半の男の先生は専門分野が数学のくせに、
俺達生徒の文章力をつけるためだとかいってほぼ毎日日記を書かせた。
たぶん文章力をつけるためだけではなく、生徒の友人関係や家庭環境を探るための手段でもあったのだと今では思う。
たまに先生の方から日記のテーマを決めることがあった。
その時は『みんなの生まれたときのこと』。
お母さんや、家族の様子はどうだったか、名前はどうやってつけられたかというものだ。

その頃、母は正社員になっていて、日曜は休みだったけど、平日は忙しそうだった。
母にとって俺は超難産で、陣痛が始まって生まれてくるまで三日かかったということは知っていた。
母にとっては辛い記憶らしく、それ以上の詳しいことは話してくれていなかった。
だからこの時、母親にはすごく聞きにくかった。
父親も三ヶ月に一度顔をあわせるかあわせないかぐらいだったので、父親に訊くのも無理だった。
叔父も俺が生まれた当時は高校生くらいだったので学校行って立ち会ったりなどもしてないだろう。
誰かに聞くのは諦めた。
日記に取りかかる。
俺の名づけについては知っていたので書いた。
生まれるのに三日かかったことについても書いた。
でもそれだけじゃあ、一ページは埋まらなかった。
だから俺は自分が持っている『生まれた時の記憶』で日記を埋めることにした。

 

日記を提出した翌日先生に呼び出された。
職員室とか教室とか人がいるところじゃなくて、グラウンドのベンチで話すことになった。
俺は先生に「お前、生まれた時のことを覚えているのか?」と興味津々で尋ねられた。
そこで俺はやっちまったなと思った。
俺はその頃にはもう自分が本当に信頼してる人にしか不可思議な目に遭った経験を話していなかった。
だから先生の言い方とか態度が『普通のことじゃない』って言っているのはすぐにわかった。
俺は母親にだけはこのこと言わないでくれー!と思いながら、先生に素直に「そうです」と答えた。
先生は専門分野が数学の理系人間のくせに、先生には小さい子どもが三人いたからか、俺の言葉を信じたようだった。
おかしいとか、俺を嫌がる様子はなくて、ただ「お前すごいなー」と感心していた。
で、先生には俺が母親と話していなかったのはバレていて、その宿題のやり直しを言い渡された。

俺は母親に話を聞く前に一度書いたその日記のページを破り捨ててゴミ箱に捨てた。
小学校に入る前は母親に変な目にあった体験を話したりしていたので、
母親は家庭環境が複雑なこともあって俺の頭はおかしいと思っていたらしく、随分と母親を悩ませた。
小学校に入ってからは俺は変なことは母親に極力話さなくなっていたし、
母親が頭がおかしいと思っていた俺はずっと成績もいい方で、
母親が不安だった三者面談では先生に褒められたり、
成績や通知表、素行などで母親を心配させることはなかった。
だから俺は自分が『生まれた時の記憶』を持っていないふりをして、
母親に俺が生まれた時のことを尋ねた。

何分『生まれた時の記憶』は俺の感覚なので上手く書けないし、
伝わらないかもしれないけど、先に俺が生まれた時の記憶を一つを除いて書いておく。

俺がそこにいると、急に周りが動き出した。
でも力は弱くて、俺もまだそこにいたかったので、そこにいる気だった。
周りはうるさくて、俺の上らへんをドンドンされていた。
押し出す力のようなものは弱くて、俺も出て行けなかった(?)ので、
まだ出ないというか、出られないような。
時々ドンドンされたりなんかして、くたびれていた。
それで長いことかかってやっと出た。(難産だったけど自然分娩。でも産道を通った時のことは覚えてない。)
明るかった。
周りはうるさくてバタバタしていた。
でも俺を抱く腕は静かでどっしりとしていてじっとしていた。

これが最後を除いた俺の記憶。

母親の話では、母親は陣痛が来ても、陣痛が弱かったらしい。
それで分娩室に入ったりしても俺はなかなか生まれてこなかった。
全く生まれてくる様子がないので、病室に戻って、ずっと陣痛に耐えていたらしい。
なかなか俺が出てこないので祖父母は家に帰ってしまっていたそうだ。
母親は俺が出てこないので、「帝王切開になるのか」と初産だったこともあり、随分不安だったみたい。
でもこの時母親担当の医者は評判の名医で「君は自然分娩でいけるよ」と言い、
全然俺は出てこないのに自然分娩でいくことになった。
それでも俺はなかなか出てこず、看護婦さんが数人がかりで母親の腹をぎゅうぎゅうと押したりしたそうだ。
三日かかってやっと俺は出てきた。
でも俺が出てきて、母親はあることで一瞬不安で心臓が止まりそうになったらしい。

俺はたまらずに「俺、産声上げなかったんでしょ?」と母親に言った。
母親は勿論俺に話したことなんかなかったから、俺の言葉に驚き、目を丸くして、でも頷いた。
ドラマとかで産声上がるシーンがあるけど、俺はあれをずっと不思議に思って見てた。
最後に一つ書かなかったことは『俺は生まれた時泣かなかった。泣かずに大きく息吸って吐いた。
周りはそんなにうるさくなくなった』ってこと。
俺が産声を上げなかったので、母親は「私の赤ちゃん産声上げてない!」と叫んだ。
すると俺を抱く先生は、
「この子ちゃんと今あくびしましたよー。息してますよー。
生まれた時泣かない子いっぱいいますから大丈夫です」と笑ったらしい。

 

俺の生まれた時の記憶と母の話は以上です。
この話を書くにあたり、出産のことをちょっと調べてみましたけど、絶対産声を上げさせる病院もあるらしいですね。
もしかすると俺は生まれた時本当は息してなくて、「大丈夫ですよ」といった先生の言葉は母親を落ち着けるための嘘で
実はこっそり俺のことを叩いたり、酸素吸引とかしてたかもしれないですけど、その辺の記憶はありません。
こんな話を書いといてと思いますが、自分もこの記憶の真偽については疑ってます。
生まれた時の記憶って大人になるまで覚えてられるものなのでしょうか?
科学的に不可能ならば是非証明してほしいです。もしかしてすでに証明済み?
ちなみに胎内記憶はありません。

 

◆txdQ6Z2C6o シリーズ

1 夢を共有

2 侍屋敷のおばさん

3 生まれた時の記憶

4 前世の妹

5 事故予告

6 まとめサイト

7 幽霊トンネル

8 おばけ屋敷

9 真下家

コメント

タイトルとURLをコピーしました