『傷跡』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

『傷跡』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】洒落怖・怖い話・都市伝説 祟られ屋シリーズ
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『傷跡』

1947 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:35:33 ID:cFFR5zTA0

1 / 4 話:黒猫』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

2/ 4 話:『呪いの井戸』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

3/ 4 話:『日系朝鮮人』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

4/ 4 話:『傷跡』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

木島氏の元から戻った俺はしばらく悩んでいた。
悩みの原因は、マサさんの『叔母』、一木燿子の霊視だった。
燿子の言うところの『定められた日』……俺の死期はそう遠いものではないらしい。
そのこと自体は、少し前の俺にとっては大した問題ではなかった。
そう、アリサを失ってからの俺にとっては、どうでも良いことだったのだ。
失って惜しいモノは何もないと、イサムと出かけたロングツーリングを利用して、失踪しようとまで考えていた。
だが、今はそうもいかない。
俺には、どうしても片付けなければならない問題があったのだ。
俺は、実家に電話を入れると、イサムを誘ってバイクで実家に戻った。

実家に戻ると、両親と妹、下宿して定時制高校に通う真実(マミ)が俺たちを迎えた。
「この馬鹿息子!マミちゃんを預かる条件として約束したわよね?
どんなに忙しくても、月に一度は帰ってきなさいって!
片道3時間の所に住んでいるくせに、何ヶ月帰ってこなかったの?約束が違うでしょ!」
「ごめんなさい……」マミが母に謝った。
「何で?マミちゃんが謝る必要はないでしょう?
あなたはウチの娘なんだから、嫌だと言っても、お嫁に行くまで家に居てもらうわよ」
「悪かったよ。理由はコイツに聞いてくれよ」
俺は、家族にイサムを紹介し、イサムは俺とロングツーリングに出かけていたことを話した。

「先輩の妹さんって、美人ですよね。スタイルも良いし」
「そうか?でも、アイツは止めておいた方が良いぞ」
「なんで?」
「……性格が無茶苦茶キツイからな。軽い口喧嘩でも、情け容赦なしに人の心を折りに来るぞ?
それに、腐り切って三次元の男に興味がない上に、ガチ百合だ。結婚とかするタマじゃねえ。
お陰で、完全に、パーフェクトな嫁き遅れだ。あんなの貰ったら人生の不良債権化間違えなしだ」
「……そこまで言います?」
「ああ。お前も今頃、受けだの攻めだのって、くだらない妄想のダシにされているかもな」
「……」
「それより、マミちゃんはどうよ?あんな腐った年増の不良債権女より、お前にはピッタリな子だと思うけどな」
「ああ、確かに可愛い子ですよね。ただ、影があるというか……訳ありっぽいな、と」
「やっぱり、判るか……」
「ええ。……姉さんと、似た雰囲気があるから。何となくね」
「でも、すごく良い子なんだ。仲良くしてやってくれ」

そんなことを話していると、妹が夕食の準備が出来たと呼びに来た。
「黙って聞いていれば人のことを悪し様に言いたい放題。私は腐女子でもレズでも何でもないって言うの!
私だってね、炊事洗濯、家事一般が完璧でいつも家にいてくれる可愛い子が居れば、いつでも結婚してやるよ?
別に稼いでこなくても、しっかり喰わせてやるし。忙しくて出会いがないだけだって!」
「お前なぁ、そう言うのを世間一般では『嫁』って言うんだ。……こんなオヤジ化した年増女じゃ誰も相手にしないよ」
「イサム君、こんなクソ兄貴を相手にすると馬鹿が移るよ?せっかくイケてるのに、もったいない」
「お兄ちゃん、晩御飯食べたらお父さんの部屋に来てね。話があるそうだから」

マミは、俺と妹の久子が両親に頼み込んで実家で預かって貰っていた。
今でこそ、家事一般を積極的にこなし、定時制ではあるが高校に通うなど外出もできるようになったが、ここまで道のりは平坦ではなかった。
俺たちの実家に来た頃のマミは心身ともにボロボロに傷付いて、自殺の可能性すらあったのだ。
マミを実の娘……或いは、抱く事の叶わなかった孫のように可愛がってくれた俺の両親と、主治医としての久子のケアのお陰だろう。
俺とマミの出会いは、奈津子と出会った事件の後、マサさんが静養中だった頃に遡る。

俺は、中学時代の友人の葬儀に出席していた。
ヒロコは3年生のときのクラスメイト、リョウタは水泳部で一緒だった。
中学時代のヒロコは、かなりぽっちゃりしていたが明るい性格で、友人的な意味で男子からも女子からも人気のある子だった。
リョウタは少々お調子者だったが、イケメンでスポーツ万能なヤツだったので、密かに思いを寄せていた女子は多かった。
同学年や後輩の女子にリョウタのことを相談されたことは2度や3度では無かったので間違いない。
ヒロコもそんな中の一人だった。
ヒロコがリョウタの事を好きだったのは公然の秘密だった。
だが、多くの女子に思いを寄せられていたリョウタは、1学年上の先輩一筋だった。
全く相手にされていなかったのだが、リョウタは周りに自分の思いを公言していた。
基本的にアホだったリョウタが、先輩の進学した学区で2番目の高校に猛勉強して進学したのは恋のパワー成せる業だったのだろう。
高校進学後、先輩に告白してフラれた話は、度々本人がネタにしていたので、仲間内では笑い話になっていた。
そんなリョウタとヒロコが大学生の頃に学生結婚したのには驚かされたものだ。
俺は、結婚式には身内の不幸があったので参加できなかったが、祝電を送ったのを覚えている。

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